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仕事がない。ここ一年順調に減り続けてきた仕事は、営業の甲斐なく今月に入ってついにゼロになった。このままでは事務所の高額な賃料も払えず、賃金を支給することもできない。どうしたらいい。会計士の洋さんに相談したら「お金あげりゅ! あげりゅよ!」と言ってくれたが、事務所の所長としてこれ以上迷惑をかけるわけにもいかない。

僕がこんなに胃を痛めているというのに、からさんは相変わらずロリドルシコシコ、山本くんなんかはデスクに足を投げ出して雑誌を読んでいる。ヤンキーかな、あれ。

「山本くん、行儀悪いからそれやめて」

「あ、すんません。てか今日も暇っすねー」

「暇だからって事務所で趣味の雑誌読むなよ。なにそれ、カメラ雑誌?」

「趣味じゃないですよ。俺、写真か映画で一発当てるんで」

あのね山本くん、芸術で一発当てられる人間なんてほんの一握りなんだよ。……まじめに言ってもきっと聞いてくれないんだろうから、何も言わずコーヒーを淹れた。

「あっそうだ山岡さん、話変わるんですけど」

山本くんは雑誌を置き、肘をついて僕を見た。

「なに?」

「治験って興味あります?」

治験。医薬品を世に送り出すための臨床実験だ。

「僕の知り合いに薬品研究してるやつがいるんですけど、そいつがちょうどモニターを募集してるんですよ。病院に一泊して、薬飲んで寝て、そのあとレポート書くだけで、ギャラが百万」

「……怪しくないか? 謝礼が高すぎる」

「大丈夫っすよ。ただの眠剤です。てか俺もやったんで。ちょっと悪夢見るくらい? てかその金で眼レフ買ったんですけど見ます?」

「別に見たくないからいいよ……」

普通、治験の謝礼なんて十万かそこらではないのか。いやな予感がする。しかし百万。一晩で百万が手に入るのか。……背に腹は代えられない。僕は金のためなら、なんでもする。

後日、山本くんの知り合いがいるという病院に連れて行かれ、血液の状態や心拍数を測られた。健康と判断された僕は清潔な病室に移され、そこで半減期と、出やすい副作用について説明を受けた。最後に契約書にサインをする。付き添ってくれた山本くんが「ここで寝るだけで百万っすよ。ちょろいでしょ」と笑い、ひらひら手を振って出て行った。与えられた薬を水で飲み、ベッドに横になる。すると、すんなり眠気がやってきた。

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