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#文芸アクション
大正
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コメント
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うわあ、ついにバレたか…! 婚姻届まだ出してなかったんですね。潤の「ダメすぎる!!!!」に全力で同意しちゃいますよ。「結婚してない=何の盾もない」って指摘、まさにその通りで。翠子に持ち出されたのも絶妙なタイミングすぎてヒヤヒヤしました。先生の様子がおかしかった理由がそれなら納得。このもどかしさ、めちゃくちゃ気になる展開です!
フジノに到着し、慣れたミーティングルームで会議を行った。
即席のパワーポイント資料を見せ、補足説明は自らプレゼンという形で行った。細波さんも水島も、僕のアイディアを真剣に聞いてくれた。そして、ぜひその案を進めたい、と。
よし! 勝ち確定!!
次はマルヨーだな。さあ、行こう。
にこやかに笑顔で締め、退席したところだった。追いかけてきた水島に呼び止められた。
「なにか?」
「今朝、佑里香さんを見かけたけれど、落ち込んでいましたよ。なにかあったのですか?」
なんでコイツが先生のこと知ってるの?
「うちの奥さんを見かけたって…あなた、ストーカーですか?」
「違いますよ。寮から出社するのに折り紙が通り道なんです。嫌でも目につくでしょう? それに、特別に弁当をひとつ余分に作ってもらっていまして。スーパーに卸している佑里香さん特製のだしまき弁当」
なにそれ聞いてない…!!
水島のやつ、毎日先生の手作り弁当食べてるのか羨ましいぃぃぃっ!!!!
目を見開いていると、彼の方は余裕のある顔でふっと笑った。くそっ…なんだよこいつは!!
「余裕の欠片もないですね、天川社長は」
言い返せないが、ここは大人になったつもりで笑顔対応。
「さっきから難癖つけてきますが、僕と佑里香さんは大変仲がいいので大丈夫です。水島さんには関係ないお話ですし、勝手に妻の店で弁当買うのやめてもらえます?」
「こちらがどこで弁当を買おうが、社長には関係ないことですよね」
いちいち言い方トゲトゲしい~ッ!!
頬を引きつらせていると、水島は僕を睨むようにして去っていった。
もぉぉなんなのアイツ!
仕事はバリバリできるからそこだけは尊敬できるところではあるけれど、後はだめ! 合わない!! 先生に近づくかもしれないと思うと、ストレスハンパない! 無駄にイケメンだし! さっさと海外戻れ!!!!
僕も彼の後姿を思い切り睨みつけ、フジノを後にした。
「どした?」
一旦TENGAに戻って仕事をこなし、迎えに来てくれた潤が僕の鬼みたいな形相を見て聞いてきた。
「どうもこうもないよ! 毎回水島に絡まれるんだ。いちいち腹立つ!」
「お子様だね~」
「なんでっ。潤は腹立たない?」
「別に。雑魚は相手にしない。勝手に難癖つけてくるだけだろ? 今は睦月が奥さんの夫なんだから、離婚しない限り有利なのはお前だろ」
「…」
この男を改めてカッコいいと思った。僕もこうなりたい。
だったらあのこと、言ってもいいかな…。
「いや実はさ…ちゃんと有利じゃないんだよね…」
「なんだ問題発生か?」
「うーん…これ言ったら、潤、多分、僕のことすごくバカにすると思うんだ」
「今さらだろ。睦月がヘタレだってのは、もうわかってる」
「じゃ、驚かないで聞いてくれる?」
「どうぞ」
「実は…先生との婚姻届、まだ役所に提出してないんだよね」
「は!!!!!!?????」
潤が急ブレーキを踏んだので、がくん、と体が前のめりになってシートベルトが食い込んだ。
「潤、運転荒――」
「なんつった今ぁ!!??」
潤が慌てて道路わきに車を停め、唾を飛ばす勢いで僕に聞いてきた。
「え、あ…その…婚姻届まだ出してないって…」
「なんでッ!!??」
あまりの剣幕に、僕はなにかとてつもなくマズイことをした子供のように、しどろもどろになって事の顛末を話した。
「え、あ、その…もしも先生が…僕のこと嫌だなって思ったら…申しわけないなって思って…ちゃんと頑張って、僕を好きになってもらってから、一緒に婚姻届け出しに行こうかなって思っていて…それで…まだ出してなくて…」
はああああ――――、と今世紀最大級のため息が車の中に広がった。
「…マジで、どこからツッこんでいいか、わからん」
「え、なに、ダメだった?」
「ダメすぎる!!!!」
潤の圧がえぐい。
一喝されると、ゴッ、と風が吹き抜けた。
「結婚してない? それ、なんの誓約も盾もないんだぞ。水島(ライバル)にかっさらわれるぞ。今すぐ役所に出してこいこのアホ!」
「や、でも、先生の気持ちが…」
「いいからッ!! 俺が許可する!!!!」
潤がキレた。怖いっ。
「その婚姻届、どこにあるんだっ」
「自宅だけど…」
「すぐ取りに行くぞ!!」
というわけで、ぴゅーんと自宅に戻ってきた。
「さっさと取ってこい!!」
車を追い出されたので、自宅に戻って寝室へ向かう。
この考えのなにがダメだったのか…。潤があれだけ怒るってことは、きっとよくなかったんだろうな。
「あれ?」
寝室に戻って宝物入れを探した。先生に借りっぱなしになって僕が持っているハンカチとボールペン、そこに大切にしまっておいた婚姻届けの封筒がなくなっている。
「なんでっ」
焦ってあちこちを探した。しかし、どこにも婚姻届はなかった。
やられた――!!
きっと翠子だ。だから僕の寝室に入りたいなんて言ったんだ。怪我なんか嘘っぱちで、婚姻届を探し出すのが目的だったんだ。翠子は中学の時から僕のことは知っている。僕がサイドテーブルに大切にしまっている宝箱があることを知る人間のうちのひとりだ。きっと簡単に見つけたことだろう。
もしかして先生の様子がおかしかったのって、それを、見せた?
さっと青ざめた。潤が激怒した意味が、ようやくわかった。
僕と先生の結婚は何の効力もない偽物だということがいかに危険であることを、まったく理解していなかった。
でも、僕の勝手で先生の一生を縛り付けたくなかったんだ。
好きだから。大切だから。好きすぎて、愛しすぎて、どうしようもなくて、うまくできなくて…。そんな言い訳ばかりして、ウジウジしていた。
僕はバカだ!
怖がっていたらなにも始まらないのに!!