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#ギャップ
ひより
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鷹槻れん@コノカレコミカライズ

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百はな🍑
544
48
「誰か、大神官を呼んで!」
私はフローラの手を握りしめた。冷たいけれど、かすかに脈はある。
「フローラ……お願い、目を開けて……」
その時だった。
『バイオレッタ。聞こえる?』
頭の奥に、声が響いた。耳から聞こえたのではない。意識の中へ、直接流れ込んでくるような、不思議な声だった。
「……誰?」
『僕は精霊のペタル』
フローラの髪のそばで、小さな緑の光が揺れる。今にも消えてしまいそうな、儚い光だった。
「フローラの使い魔の……?」
『本当は、精霊界の掟でフローラ以外の人間とは話しちゃいけないんだ。でも、今は緊急だからね』
『フローラは死んでないよ』
「本当に……?」
『うん。でも、魔力を使い切ったから、今は意識だけが精霊界の水辺を彷徨っている』
「精霊界の、水辺……?」
『そこで、少しずつ魔力を集めるんだよ。自然に魔力が戻るまで、フローラは目を覚まさない』
「他に方法はないの?」
『待つしかない』
「待つって、どのくらい……?」
『早くても数週間。長ければ、数か月かかるかもしれない』
「そんな……!」
ペタルの光が、さらに薄くなる。
『もう行かなきゃ。掟を破ったことが、精霊界に知られる』
「待って、ペタル!」
『バイオレッタ』
淡い光が、ふわりと揺れた。
『フローラを、よろしくね』
その言葉を最後に、光は空気に溶けるように消えた。
「ペタル……!」
呼びかけても、もう返事はなかった。
やがて、大神官が駆け込んできた。
「バイオレッタ様!」
「大神官、フローラが……! 精霊が、魔力を使い切ったと言っていたの……!」
大神官はすぐにフローラのそばへ膝をつき、彼女の額と胸元に手をかざした。淡い白い光が、フローラの身体を包み込む。
短い沈黙のあと、大神官は深く息を吐いた。
「……命に別状はありません」
けれど、大神官の表情は晴れない。
「ですが、魔力の流れが極端に弱い。魔力が、ほとんど空ですな」
「他に方法は……?」
「自然回復を待つしかありません」
「魔力を分けることはできないの? 魔力交換とか……」
大神官は、苦しげに目を伏せた。
「人間同士であれば可能です。ですが、フローラ様は違いますな」
「違う……?」
「この方の魔力には、エルフの痕跡がありますぞ」
フローラの父、エミリア子爵は人間。けれど母親は、精霊界出身のエルフだ。
フローラが人間とエルフの血を引くことは、社交界でも知られていた。
「人間の魔力を無理に流し込めば、魔力の気が乱れます。最悪、意識が戻らなくなる危険もありますぞ」
「……つまり、何もできないってこと?」
大神官は、静かに首を振った。
「今は、眠らせておくのが最善ですな」
私は何もできない。
魔法も使えない。
それなのに、どこかで頼りすぎていたのだ。
特別な治癒魔法を持っているから。フローラならきっと、大丈夫なんだろうと。
――違う。
私が、彼女を限界まで頑張らせてしまった。
「……ごめんね」
声が、かすれた。
「ごめんね、フローラ。気づいてあげられなくて」
何度謝っても、フローラのまぶたは動かない。
「ねえ、必ず、目を覚まして。約束よ?」
私は彼女の手を、両手で包み込んだ。その時だった。神殿の片隅で丸くなっていたルピが、ふらりと立ち上がった。
「きゅ……」
いつもの元気な声ではない。か細く、弱々しい鳴き声だった。
「ルピ……?」
ふらふらと、何かに引き寄せられるように歩き出す。
「ちょっと待って! どこに行くの?」
向かった先は、神殿の中庭。聖水の湧き出る、噴水だった。
コメント
1件
みぅ🤍🥀です。 ペタルが出てきたシーン、すごくよかったです。精霊界の掟とか、儚い光の描写が切なくて……「フローラをよろしくね」で一気に涙腺来ました。大神官の「眠らせておくのが最善」も重くて。魔力が空になった感覚、読んでるこっちも息が詰まりました。ルピの異変も気になるし……次話、待ちきれないです🌙