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夜。部屋の電気はつけず、ベッドの中に潜り込んでいた。
さっき出水先輩が買ってきてくれたご飯。
全部は食べきれなかったけど、それでも久しぶりにちゃんと口にした気がする。
(……バカみたい)
自分でも、思う。
素直になればよかった。
叩いたり、怒鳴ったり、泣き喚いたり……
あんなふうにしかできない自分が、情けない。
なのに来てくれた。
怒った様子も見せずに、ご飯を買って。
キャラメルまで――私の好きなやつ。
(……ずるいよ)
胸が、ちくりと痛む。
優しくされると、期待してしまう。
“もしかして、私だけに”って。
でも――
(きっと、あの人の優しさは平等なんだ)
あんなの、私じゃなくたって、誰にでも同じことしてる。
そういう人なんだって、知ってる。
だからこそ苦しい。
(……好きなのに、言えない)
言ったら、壊れてしまいそうで。
笑われるのが怖くて。
(出水先輩が、あの子たちに見せる笑顔。
私にも向けてくれた、あの優しさ。
全部、“私だけのものじゃない”って思い知らされるたびに……)
心が、どんどん小さくなっていく。
誰にも見せられないくらい、ちいさく、ちいさく。
(……あんなふうに、もう笑えない)
いつもの、元気なふり。
いつもの、明るい私。
今は、思い出そうとしても、どこにもいない。
枕に顔を押しつけて、深く息を吐く。
(せめて夢の中では、もう少し素直になれたらいいのに)
キャラメルの甘い香りが、枕元に残っていた。
それだけが、少しだけ優しかった。