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マーヤが女王の座に君臨してからおよそ一年。マーヤの王国にオスが訪れました。マーヤより一回りほど大きく、毛の模様もしっかり出ています。年は三歳ほど。マーヤよりも歳上です。

今は恋の季節。オスはパートナーを探してあちこちを歩き回ります。今やってきたオスは、シウヴァ。マーヤはシウヴァと結婚しました。実は、一昨日ぐらいからマーヤは母から受け継いだ王国の木々に、マーキングを残していました。ここは自分の王国だというアピールと、自分はここにいるよ!というオスへのアピールでもあるのです。それを嗅ぎつけてやってきたのが、シウヴァでした。シウヴァは妊娠に必要なことを済ませるとすぐに王国を離れました。自分の子孫を増やすためです。

マーヤが妊娠して約4ヶ月。マーヤが草が一層高く生い茂った場所で子どもを産み落としました。その数二匹。オスとメスです。オスは、アルファ、メスはウィーンと名付けられました。アルファもウィーンもとてもかわいい子でした。マーヤの初めての子育て。ついこの前までは母を失った幼子でしたが、今は立派なお母さんです。なれない子育てを懸命に頑張っています。

アルファとウィーンは歩けるようになりました。よち、よちとおぼつかず、ころんと転びますが立ち上がります。それがなんとも健気でした。歩けるようになった日でも、子どもたちを養うためには狩りに出かけなければいけません。子どもを安全なひとまとめにして、狩りに出かけます。子どもを草のゆりかごがふんわり包み、その中で二匹は遊びます。しばらく経ち、子どもたちは母が出かけたことにやっと気付いたようです。そわそわして母を探そうとします。ぽとぽと歩き始めます。母の匂いをたどって、いつの間にか草のゆりかごから抜け出していました。それでも二匹は歩きます。

そのころ、マーヤは草かげでじっとしていました。見つめつ先には草を喰むシカの群れ。マーヤの存在に気づいていないようです。マーヤが飛び出しました。中学一年生一人は余裕で飛び越える高さで。シカは逃げ出しました。マーヤはぐんぐん距離を縮めます。しかし、あともうちょっとというところで邪魔が入りました。ハヌマンラングールの女ボス、アイーザがいきなりマーヤの前を横切ったのです。驚いて立ち止まったときには狙いをつけたシカはぐんぐん離れていきました。蹴散らした土と足跡だけを残して。

マーヤはとぼとぼ帰ることにしました。幸い、昨日は大物を仕留めたのでまだ獲物で焦る必要はありません。しかし、浮かない気持ちでマーヤは子どものところへ戻ったのです。マーヤは草のゆりかごの中へ入りました。 しかし、子どもたちはいません。どこにもいません。マーヤは慌てて子どもたちを呼びます。

呼んでも呼んでも、探しても、姿も返事もきません。ただ、マーヤの切ない声が森に、王国にこだまするだけでした。風はひゅうっと音もなく吹き、草はさらさら揺れ、鳥はパタタタと羽ばたくだけでした。それがマーヤに全てを物語っていました。

ベンガルトラ 女王マーヤの物語

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