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柘榴とAI

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#没入感フィクション
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柘榴とAI

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「あの……えぇと。黒沢君、ここは?」
色々と歩き回って、あっちにこっちにと気の向くままに遊び歩いた後。
彼に連れて来られたのは……私の見間違いというか、勘違いでなければ“射撃場”。
え、あれ? ここって日本だよね?
などと思いつつ、手続きは全て彼が済ませてくれて。
私達が辿り着いたのは、どう見ても射撃レンジ。
もはや6keyの訓練で見慣れたとも言って良い様な、そんな雰囲気の場所。
そんな所へやって来てから、ポカンとしていると。
黒沢君は色んな道具と、一丁のハンドガンを持ったまま此方にやって来てから。
「これまでガンショップに行く事はあっても、実際に撃った事は無かったでしょ? だから、試しにどうかなぁって思って。スティールチャレンジって、知ってる?」
「え、えと、スティール……?」
はて?
思わず首を傾げた私に対して、彼はマガジンを抜いた状態のハンドガンを此方に渡して来た。
あっコレ、私がお兄ちゃんから貰った新しい銃だ。
見慣れた物を渡して貰い、ちょっとだけ嬉しくなって弄り回している私に対し。
「まぁあんまり難しく考えずに、目の前にいくつかの的があるでしょ? アレに順番に当てる~程度に考えてもらって。一応ルール説明するね?」
その後彼からルールを教えられ、とにかく早撃ち競技って言うか……目の前に設置された五枚の的を撃ち抜けば良いみたいだ。
セーフティを掛けた状態で合図と共に始まり、ホルスターから引き抜いて安全装置を解除してから撃ち始める。
簡単に言うと、それだけ。
とにかく今回は実際にコレを撃ってみましょう~って事が目的らしく、あんまりタイムとか正確なルールとかは気にしなくて良いって言われた。
それなら、普通に的当てとかの方が良いのでは? とは思ってしまう面もあったが。
とにかく彼に促されるまま腰にホルスターを付けて、銃の状態を確認してから弾の入ったマガジンを渡された。
レンタル品だと言われると、妙に気を使いそうになってしまうけど。
とにかく、私もリアルで持っているモデルガン。
家でも弄り回しているので、かなり手に馴染んでいると言っても良いと思うが……弾が装填されてる状態って、初めてだ。
流石に実銃と違い、金色の9mm弾は装填されていないけど。
白いプラスチックの小さな弾が入っており、ガス? も注入されて実際と同じ動作をすれば発射する状態なんだとか。
わ、わぁ……撃てちゃうんだ、銃。
玩具って分かっているし、実際にサバイバルゲームとやらで使用する物らしいから、発射機構があるのは知っていたけど。
家で使っている時は、こういうの全然入れた事なかったので。
というか、弾とかガスとかはお兄ちゃんからも渡されなかったし。
「そ、それじゃ……えっと、やってみますね? 本当にコレ、危なくないんですよね?」
「大丈夫大丈夫、ゴーグルもちゃんと付けてるし。銃口管理だけ気を付けてもらえば、跳弾しても平気だよ?」
と言う事らしく、射撃レンジに立たされた私。
そして、ブザーの音と共にホルスターから銃を引き抜き――
「うひゃぁ!? い、意外と反動が……」
「あはは、ビックリした?」
一発撃った所で、驚いた声を上げながらマジマジと銃を覗き込んでしまった。
正直に言うと、“玩具”って言葉を信じ切っていた。
だと言うのに発射した瞬間、スライドが下がった反動がガツンと手に残る。
ゲーム内の反動とはまたちょっと違った感じだったけど、それでも「本当に玩具?」と言いたくなる程良く動くというか……。
「ホラホラ、白川さん。残りの的も撃たないと」
「そ、そうでした!」
呆然としていた私に対して、黒沢君が声を掛けてくれたので。
慌てて銃を構え直し、残る的を狙ってみるのだが。
ヤバイ、コレちょっと楽しい。
撃った瞬間に掌と腕に残る反動、そして発射したプラスチックの弾がターゲットにヒットすればキンッ! と高い金属音がする。
競技……なんだろうけど、“遊び”としても十二分に面白い気がする。
なんて事を思いつつ、もう一回もう一回! などと何度もチャレンジさせて頂いたのだが。
「どうせこの後彼氏がやって、すげぇだろって見せつけるパターンだな」
「慣れてない子を連れて来て、中途半端な実力でも俺スゲェが出来るんだから良いよなぁ。あ~ぁ、こういう所デートスポットにすんなって感じ」
少し離れた位置で此方を見ていたらしい人達が、そんな事を言っているのが聞えて来た。
もしかして待たせる!? 退いた方が良い!?
とか何とか、最初は慌てそうになったが。
どうにも、そういう訳では無いらしく。
チラッと覗いてみれば、彼等の視線は黒沢君に向いていた。
そして当然の様に、彼等の声が聞こえているらしい黒沢君に関しては。
少々困り顔を浮かべつつ、ポリポリと頬を掻いた後。
「白川さん、気にしないで? 別に順番待ちって訳でもないし、あぁいう人もたまに居るから。こういうジャンルに限らず、ではあるんだけど。女の子があんまり興味を持ってくれなそうな場所だと、特に……ね?」
そんな事を言ってくれる訳だが、未だに離れた位置では随分と好き勝手言っている様で。
黒沢君自身も大した腕じゃない癖に、とか。
俺が教えた方が絶対上手くなる、みたいな言葉がチラホラと聞えて来る。
何となくだけど……ちょっと、気に入らないって思ってしまった。
今までだったら、私一人だったら。
それこそペコペコ頭を下げながらも、そそくさとこの場を離れていた事だろう。
けど今彼等の悪意というか、“そういう感情”は全て彼に向かっている気がしたので。
「黒沢君、ちょっとだけ……変な事、しても良いですか?」
「変な事?」
「他の人も見ている中で、ちょっとはしたないかもしれませんけど。一回、“本気”でやってみたいなって。もう一回だけ、良いですか?」
そういってニコッと微笑んでみれば、黒沢君はちょっと混乱しながらも頷いてくれた。
普段だったら絶対やらないけど、今だけは……やってみよう。
リアルの私は情けないから、出来なくて当然だから。
多分その認識は今でも変わらないけど、けど昔よりか多少“身体は”動く様になった。
お兄ちゃんからこのハンドガンだって貰って慣れているし、動きに関しては今でも4cardが指導してくれている。
“完全に”とは言わなくても、前よりかは出来る筈だ。
これまで試した事など無いけど、VRからリアルへの……“感覚の逆輸入”とでも言うべきか。
6keyの感覚は、リアルの私でも覚えている。
だからこそアレを引っ張って来て、リアルの私が出来る限り再現するという試み。
ハッキリ言って無謀も良いところだけど……ちょっとだけ、カチンって来たので。
と言う事で大きく息を吸い込み、瞼を閉じる。
大丈夫、出来る筈だ。
的はそんなに距離が遠い訳じゃないし、使っているのも同系統のハンドガン。
もっと言うのなら、オモチャならゲームよりずっと“軽い”。
反動だって大した事無いから、今はコンペンセイターだって必要無い。
そして何より……このまま言いたい放題させておくのは、何か嫌だ。
私の事ならまだしも、黒沢君を馬鹿にするような発言をされたのが。
正直、“癪に障る”。
「それじゃ、始めるよ?」
彼の声に頷き、しばらく待った後。
競技開始のブザーが鳴り響いた。
その瞬間銃を抜き、姿勢を落とす。
スカートを履いているのに脚を開いて、しっかりと銃を構えて。
フッと小さく息を吐いてから……連続で引き金を引き絞った。
“この程度”なら、6keyにとっては“私の戦闘範囲”だから。
結果。
「……お見事」
ホルスターに銃を収めた瞬間、黒沢君から拍手が響いた。
チラッとさっきの人達を確認してみれば、二人共ポカンと口を開けたまま此方を眺めていたが。
「やりました」
「だ、だね? 凄く速かった……」
ニヘラッといつも通り情けない笑みを浮かべた瞬間、身体からは緊張感と共に“シックス”の感覚が抜けて行き。
急に全力行動を取った影響で、ちょっとフラッと来たけど。
それでも、これ以上何かを言われる心配はなさそうだ。
普段だったら、絶対やらない事だけど。
けど今だけは、どうだとばかりに胸を張りたい気分だった。
とはいえリアルの私ではそんなに堂々と出来る筈もなく、ペコペコと頭を下げながら場所を空ける様に退場していくのであった。
でも……楽しかった、コレ。
コメント
1件
あーこれ、めっちゃいい話だわ。 「シックスの感覚をリアルに逆輸入」って発想、めちゃくちゃ痺れた。 VRじゃなくて“オモチャ”って舐めてた反動にビビるとこからの、黒沢君ディスられてカチンときて本気出す流れ、熱すぎる。 普段ペコペコしてる主人公がここで一発決めるの、最高の逆パターンだよ。 くろぬかさんのバトル描写、やっぱ解像度高いわ。🔥