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第3話

 次の週は王城も暗い空気で葬儀が執り行われた。

 アニカ姫と王は涙をながしている。その周りの騎士たちは必死にこらえている。

 なんせ、ジョルジャ王妃には皆、優しくしてもらった記憶しか残っていない。

 予期せぬ死だったけど、別れは突然やってくるのは騎士で最年少にしてロルフが一番分かっていた。

 ロルフは両親もそうだし、友達だって、崖から滑り落ちてしまった。

 それに、記憶とは厄介な物だ。それは今でもロルフを苦しめる時がある。

 俺は一人の息子のようにロルフの背中を揺すってやった。


 ✡


 儀式が終わって僕は訓練場へ向かった。

「お、ロルフ。いいところにきたな」

 そう騎士団長が目を輝かせている。

 何だか嫌な予感……

「前のほら、組手を志望してきたやつがいるだろ?」

 誰だっけ? 確かにそんな人いたようないなかったような……

「そいつがよ、ドラゴンを倒したんだ。今日の夜その打ち明けに来ないか?」

 いや、僕が家に帰らない時があるわけないです。それに、ドラゴン……あの腕前なら、ちょっとしたやつは倒せそうだったけど……

 でも、もっと強いやつとなるとギリギリで倒さないといけない……まぁ、どちらにしろ行かないから考え無くていいや。

「いえ、大丈夫ですよ」

「ロルフは硬いなぁ」

 そう苦笑して騎士団長は去っていった。

 僕はいつも通り、訓練を終えて月明かりに照らされた帰路を一人で歩いた。


 ✡


「アニカ姫」

 私の名前はアニカ・フォン・ホルム

 そう私の名前を呼ぶロルフさんの声が耳から離れない。

 あの時、始めて名前で呼んでくれた。

 お母様が急死して傷ついた私を気遣うように……

 それまでは素っ気ない人だと思ってた。微笑んでも微笑み返す事は無く軽く頭を下げるだけだし、黙って歩いていても話さないし無口というか、無反応だった。

 だけど、微笑んでくれたのが嬉しかった。

 それに、私の事を気遣ってくれていたのが何より嬉しかった。他の人は言葉だけかけただけだったけど彼だけが動いてくれた。

 彼は家も普通で、先祖には聖騎士になった人も神官になった人もいないけど、剣術の才能が開花して今、私の護衛をしている。本人はそう言ってたけど何かが引っかかる。

 魔力は普通の人と種類だし、何か変な力があるわけでも無い。量はとてつもなく少ないけど稀にいるだろう。

 何だろう……?

「アニカ姫。ホルム王がお呼びです」

 お父様……

 私は王の間まで足を運んだ。


「……アニカ。私に何かあったらお前が跡を継ぐんだ。だからこのリストを見なさい」

 そう言ってお父様は二、三枚の紙の束を私に渡した。中には隣国の第四王子や北の方の領主の息子、沢山の貴族の男の子の名前が書いてあった。

 私はペラペラとめくってパタンを怒りを込めて閉じた。

 一人娘だからって……勝手に人のパートナーを決めないで欲しい……

 そんな言わなくても見つけます。男の一人くらい。

 気品があって気が合いそうな人、この世の中に溢れる程いるもん……

「一人娘だからといって子供を無理矢理産ませるんですか? 私は嫌です!」

 私はこのままだと無理矢理子供を産ませられると危機を感じて城を飛び出した。


 少し走って逃げたらもう城が見えない所まで来ていた。

 よし、ここまで逃げれば……

 そう思って私は宿屋を探した。

 でも長い時間歩いても中々見つからず、満月の月も真上まで来た。

 すると、ゴブリンが三匹、私の周りを囲んだ。アイアンゴブリンだ。

 私はやっと使えるようになった魔法でなんとかしようと思ったけど、練習のように上手くいかない。

 全然当たらないし、なんなら攻撃が私にスレスレだ。

 腕に攻撃が当たってそのまま足をくじかせて動けなくなった時、もう駄目だと思った。このままだとお父様が一人になってしまう……

 私は両目をぎゅっと硬く瞑った。

 でも私が怪我をする事無く何かが倒れるような物音がした。

 恐る恐る目を開くと彼――ロルフさんがいた。

 彼は直ぐに魔物を蹴散らして何事も無かったかのように剣を戻した。

 彼の戦い方は無駄がない。切ったと思ったら他のやつを不意打ち……私にはできそうに無い。

「ありがとうございます」

 頭を下げると慌てて彼は私の腕を指さしてから勇気を振り絞るように「……その腕、大丈夫ですか?」と恐る恐る声をだした。

 あ、そうだ。色々とあって忘れてたけど私、こう見えても怪我人か……

「大丈夫ですよ」

 そう言って立ち上がったけど右足首がズキズキと痛む。

 こんなの治癒魔法を使えればとおってこともないのに……

「本当に大丈夫ですか?」

「少し痛むけどとおってこともないですよ」

 そう痩せ我慢した。

 彼は心配そうに私の事を見つめて少し考えてから口を開いた。

 「……家、来ます?」

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