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莉愛
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ーなくなる前提で一緒にいるの、つまんなくない?
前を向いたはずが、
勇斗の言葉が、妙に残っている。
つまんない、で済ませられるなら、
こんなふうに考えたりしない。
一人でいつもそんなこと考えてたら、
おそらくあいつだって辛くなる。
そんな簡単なことはわかりきっている。
でも同じ、つまんない、
で、この先の終わりがやってくるのを、
どこか確信して思考は深く暗い場所へ落ちていく。
「……じんと?」
甘い甘い夜時間。
ピロートークで睦み合うはずが、
黙ったまま動かない俺に、少しだけ覗き込むように声が落ちる。
「なあに」
そう返すけど、たぶん顔に出た思考。
「無理させた?」
汗ばんだ髪をかき分けて、キスを落としてくる勇斗を、やはり泣きそうなほど好きなのだと、胸が傷む。
勇斗は少しだけ考えるみたいに目を細めて、
それから、いつもよりゆっくり腕をほどいた。
「ずっと、なにに引っかかってるの……」
ぽつりと、独り言みたいに続ける。
「なくなると思ってるの?」
思わず全身に力が入る。
「……なんでそうなる」
「なんとなく」
曖昧に笑って、でも視線は外さない。
「仁人、そういうとこ気にするから」
図星というか、本心をいい当てられて、言い返せなくなる。
沈黙が落ちる。
薄暗い部屋に、時計の音がやけに大きく聞こえる。
「俺はさ」
勇斗が、少しだけ言葉を選ぶように間を置く。
「終わりとか、あんま考えてない」
「……知ってるよ」
だから、余計に不思議で心細いんだ。
お前が先を見据えないの変でしょ。
「うん。でも、知らないって思ってた?」
軽く首をかしげる仕草が、なぜか怖く思えた。
「終わることあるのは、普通にわかってる」
あっさりした口調で、紡ぐ。
「でも」
ふいと、体を起こして、座り込む。
「今があるなら、というか、ほんと仁人とは終わるとかそんなのじゃなくてさ」
うまく言い表せないけどって自分の手元に目線を落とす。
「なんていうかな、仁人は、今というか、俺なんだよね。もうおんなじ感じ。分けて考えるもんじゃないと言うか。それでいいって思ってた」
“思ってた”に、ほんの少しだけ違和感が混ざる。
「……思ってた?」
過去形に引っかかって聞いた瞬間、
しまったと思う。
勇斗は一瞬だけ目を伏せて、
それからいつもの顔に戻った。
「なんかね、ちょっと考えた」
軽く言う。
「仁人が、そんな顔するから」
胸の奥が、じわっと重くなる。
「終わりを考えるようになるの、やだなって思ったけど」
苦笑して、少しだけ肩をすくめる。
「でも、無理だね」
「……無理って」
「うつる」
なぜかとっておきの秘密を打ち明ける子供みたいに見えた。
「仁人が考えてると、俺も考えちゃう」
でも、無邪気とは少し違って。
「わかってないフリしたいけど、仁人が別物だって、いつか離れることだってあるって、現実はしんどい」
視線がぶつかる。
「なるべく、考えないでよ」
わがままみたいでに、でも必死で。
「俺、あんまりそういうの強くないから」
その言い方に、少しだけ驚く。
勇斗が、こういう弱さを見せるのは珍しい。
「……強いと思ってた」
「強いのは仁人の方だよ」
苦笑して、額を軽くぶつけてくる。
でも今度は、すぐに離れない。
「ねえ」
小さく呼ばれて、目を合わせる。
「終わる話、しないでよ」
静かで、でもはっきりした声。
「今の話だけ、しよ」
そのまま、軽くキスをされる。
離れたあと、何も言わずに笑った。
いつもの顔に戻ってるのに、
どこか戻りきってない気がする。
勇斗が弱さから今に溺れるのなんて、
そんなのっておかしいじゃないか。
「もっかいしよ」
先ほどの軽いキスじゃなく、明らかに熱を孕んだ長いキスを受け入れて、身体は誰よりも深くつながり合えるのに、さっきより少しだけ、
終わりの気配を知ってしまった気がした。