テラーノベル
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ステージの両袖から、二人の天才が、ゆっくりと姿を現した。
西の久条亜里沙。東の美崎沙羅。
二人が、中央で向き合った時、会場の空気が、まるで一つの意志を持ったかのように静まり返った。
先に口を開いたのは、美崎沙羅だった。
彼女は、太陽のような笑みで、静かに言った。
「亜里沙さんとは決勝戦で会うことになると思っていました。少し早くなってしまいましたね」
久条は、女王の笑みを返す。
「私たちはどうせ勝ち上がる。いずれ対戦するのは避けられなかったわ。これは観測済みの未来ですわ」
その静かな火花が散る中、司会者の声が、ホールに響き渡った。
「それでは、準々決勝、第四試合のテーマを発表します!」
ステージ後方の、巨大なスクリーンにノイズが走る。
そしてそこに荘厳なゴシック体で、この戦いのあまりにも残酷な「問い」が映し出された。
『特権階級は社会の安定に必要悪である』
そのテーマが映し出された瞬間。
俺は観客席で、静かに笑みを浮かべた。
(来たな。俺が盗んだ未来だ。ビンゴだ)
選手席の美崎沙羅の表情が、初めて僅かに揺らいだのを俺は見逃さなかった。
(このテーマは?)
彼女のそのほんの一瞬の動揺。
だがその隣で久条亜里沙は、微動だにしない。
テーマが発表されてもなお、その瞳には、全てを見通しているかのような冷たい光が宿っている。
司会者が、声を張り上げる。
「それでは両者の立場をくじ引きで決定します!」
スタッフが二つのタブレットを二人の前に差し出す。
そこに表示されるのは、「肯定」か「否定」か。
二人が同時に画面に触れる。
そしてその結果が、巨大スクリーンに叩きつけられた。
【肯定側:東京 / 美崎 沙羅】特権階級は必要
【否定側:京都 / 久条 亜里沙】特権階級は不要
会場がどよめいた。
「マジかよ」
「これは、面白くなってきた」
斎藤が呻くように、呟いた。
「なるほどな。美崎は、自らの信条を否定するという、最悪のハンデを背負わされたわけか。面白い。これで亜里沙がどう彼女を料理するか、見ものだな」
ミラー:「双方にとって逆の立場面白い。神が最高の脚本を用意してくれたな」
奏:「ああ。そして女王は俺が授けた武器で、その神の脚本をさらに面白くしてくれるはずだ」
ステージの上。
美崎は一瞬だけ唇を噛み締めた。
だがすぐにあの太陽のような笑みを取り戻す。
「なるほど。面白い試練ですね」
「正々堂々と戦いましょう」
久条は、ただ静かに微笑んでいる。
その笑みには、もはや恐れはない。
全てが自分の脚本通りに進んでいるという、絶対的な「確信」だった。
美崎は、静かに、そしてどこか哀れむような目で、目の前の女王に告げた。
「あなたに、この問いの本当の重さが分かりますか?」
司会者の、非情な声が響き渡る。
「それでは両者、準備時間は三分!試合を開始します!」
ゴングが鳴った。
女王と俺のタッグ、本当の最終戦争が今、始まった。
コメント
1件
第90話、めっちゃ鳥肌立ちました……。「特権階級は必要悪」っていうテーマもさることながら、美崎沙羅が自分の信条と真逆の「肯定側」を引いちゃう皮肉、本当にゾクゾクします😌 女王・久条亜里沙の余裕の笑みと、一瞬揺らいだ沙羅の表情——この対比がもう……。奏が「盗んだ未来」って言うのも気になるし、これからどう転ぶか本当に楽しみです。静かに読み続けますね🤍🥀