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「ん…」
朝か。
どうやら昨日はそのまま寝てしまったようだ。腕の中にはふわふわ頭のこいつがいる。まだ寝ているみたいだ。俺の腕を抱いて寝ている。なんというか…
「猫みたいだな…」
「誰が猫だよ」
「うおっ、起きてたのかよ」
「はよ」
腕の中からするりと抜けて俺の顔を見る。まだちょっと眠そうで、まぁ俺も眠いんだけど。寝たのが遅かったから正直まだ寝ていたいところだ。
「今何時?」
「もう8時になるけど」
「チェックアウトは?」
「9時」
「あんま時間ないな」
もぞもぞと布団から出て、眠い目をこすりながら着替えをしている。どうやら帰りの電車も寝て帰りそうだな。帰ったら写真の編集と…洗濯と…やることが多いな。そう思いながら俺も帰る準備をする。
「えおえお」
俺に背中を向けながら、呟くように名前を呼ばれた。
「どうした?」
「今日、なにか用事ある?」
「帰ってから?ねぇよ」
「そう…それならさ…」
俯き加減でこちらを振り返る。どうしたんだろう、少し顔が赤い気がするけど…
「今夜、泊まっていい?」
「えっ…」
「なんていうか…まだ一緒にいたいし…」
初めて聞く台詞に驚きを隠せなくて、思わずその顔を凝視してしまった。
(うわー…顔真っ赤…)
「そんな素直な言葉、皆が聞いたらどんな反応するんだろうな」
「うるせぇ、お前にしか言わねぇよ」
「じゃないと困る」
「てことで、行くから、お前んち」
照れ隠しなのだろう、俺の返事も待たずに勝手に決めてしまった。マイペースだな、ほんとに。そんなところもやっぱり好きなんだけど。俺も期待していたことだったから、あろまから誘われるなんて願ったり叶ったりだ。
「あー、良い旅行だったな」
窓からの景色を眺めながら、あろまが伸びをする。
あ、今いい画になりそう。
「あろま」
「ん?」
「そこ、手ついて外見ててくれる?」
「いいけど、なに?」
「待ってて」
俺はバッグからカメラを取り出し、海を背景にそのシルエットを何枚か撮った。スタイルがいいから、やっぱり写真を撮ると映えるんだよな。
「うん、ありがと」
「見せてみ?」
さっき撮った写真をみせるべく、カメラを渡した。すると、満足そうな顔をして俺の顔を見る。
「ほんと、俺のこと好きな」
「う…まぁ…はい」
好きな人のプライベートが今、俺の手の中にある。今までにない満足感だ。
「行こうぜ」
まだ窓の外の景色を眺めているあろまの手を引く。
「また来ればいいよ」
「ん」
窓からの潮風がふわっと香る。来たときと同じ、大きな荷物を持って、その部屋をあとにした。
To Be Continued…