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「私はイザベラへの恋心は物語の強制力だと考えております。私の考えるこの世界の物語は、レオ王国が舞台です。ルイス王太子殿下がヒロインの相手役で、イザベラがヒロインです。王太子殿下が卒業パーティーでフローラ様をイザベラを虐めたと言って断罪してイザベラと結ばれるのではないかと思っています。この物語の遂行はルイス王太子にイザベラへの恋心という強制力をかければ成立します。そして乱暴な口調しか王太子殿下が発せないのは、作者がそういったアウトローな男が好きだからと予想します。王太子殿下は乱暴な口調により次期国王の資質を問われてますね。私たちの間では普通に会話して良いですが、この1年だけは外では無言で身分の高い人が下の人に指図する手信号のようなものを使ってください。乱暴な言葉を使うことにより理不尽な悪評がたつのを防ぎましょう。お喋りであるより、言葉が少ない方が威厳が保たれたりするので私を信じて実践してみてください」
周りの人間はたとえ物語の世界でも人として自由な生活ができているのに、ルイス王太子だけが強制力により苦しんでいる。
でも、物語が私の思う通りのものなら、その苦しみは後1年ほどだ。
「手信号って?」
私も上手い表現が見つからなく、手信号と言ってしまって案の定兄ルイスは理解できなかったようだ。
「兄上、僕は珠子様の意図を理解しました。あとで優雅に手で指示するような作法を確認しましょう」
すかさず兄ルイスをフォローするルイ王子の頼もしさをみて、私はますます恋心を募らせてしまう。
「現時点で考えられる物語はあくまで予想です。アカデミーに入学して不自然な人間に遭遇したら、逐一報告致しましょう。出会って間もない私の能力を信じられる材料としてこちらをお見せします。私は15分程レナード・アーデン侯爵とお話ししました。その時のイマジネーションで60万字の小説『カリスマホストレナード異世界で恋心をお金に変えます。』を書き上げました。ちなみにこれは貴族令嬢と仲良くなる時の小道具として使うものです。タイトルに異世界が入っていますが、仮タイトルです。私はここにいるメンバー以外には異世界の情報は伏せます。女の世界は一度、頭がおかしいと思われたらおしまいです。私は膨大なおひとりさま時間を過ごしてきたことにより、脳内で世界を創造できるようになりました。なので、一度私の考えた物語を信じてみてください」
アカデミーにいる貴族令嬢は12歳から15歳、つまり女子中学生相当だ。
出会ったことのない年上のイケメンスターに憧れる者がいる。
この小説はレナード・アーデン侯爵のファン向けに書いたものだ。
内容は仮タイトルとは異なり、なぜか女性が金にしか見えない病に苦しむレナードが、ある日、金にならないような女の子と出会い真実の愛に辿りつくものだ。
実際の彼は女を金づるにするサイコパスだが、ファンが求めているのは苦しむイケメンなのだ。
私は女子中学生時代憧れたのは、『美少女戦士の恋人は大学生のタキシード。』というアニメの大学生だ。
もはや2次元で出会うことすら叶わないから、幻滅することなく憧れを募らせることができた。
「レナード・アーデン侯爵といえば天界の王子様ですよね。レオ国は帝国に遠いので、国王陛下も帝国には行ったことがありません。彼に憧れる人は多いので、彼の話をしたら確かに令嬢達と仲良くなりやすくなるかもしれませんね」
ルイ王子は私の意図を理解してくれたようだ。
国王陛下も会ったことのない方と私は15分も話したということだ。
かなり、希少価値のある経験をした気はしていた。
明らかに周りが彼と話すなら相応の金を払うよう圧をかけるような視線を注いでくるという、大金を払わなければ話せない男だ。
国王陛下なら身分的に金を払わず話せるだろうが、馬車に乗りっぱなしで2カ月の距離が遠すぎだ。
「全ての貴族令嬢が恋をするというレナード・アーデン侯爵だろ。そんな凄かったのか? 」
私は兄ルイスの言葉に深く頷いた。
どうやら内気な兄ルイスまで知っている有名人だったらしい。
「私は彼は帝国最強の騎士だと伺っていたので、騎士として憧れておりました」
カルロスの言葉に流石にそれはないだろうと思った。
なんだか距離が遠すぎて会ったことがないせいか、世界的大富豪のイケメンは剣術まで最強ということになっている。