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「この小説は製本はしなくて良いのですか? 」
ルイ王子が小説の製本を申し出てきた。
そのようなことをしたら、いかにも金持ちのやることだと思われ寮に住む子と馴染めなくなる。
「この小説は仲の良い友達で回し読みするという手作り感を大事にしています。しかし、挿絵は必要です。とにかく男性を魅力的に描ける画家を紹介してください、風景や女性はどうでも良いです」
ヒロインは自己投影対象なのでどうでも良い、とにかく絵を見ただけでときめく様な男を描いてもらうことが重要だ。
小説を読むのは面倒だと感じても噂を聞いて挿絵だけ見たくて声をかけてくる子がいるはずだからだ。
「分かりました画家を探して紹介しますね。他にお手伝いできることはありますか?」
流石、最強サポータールイ王子だ。
どうしてこのような素敵な人と39年間会えなかったのだろう。
しかし異世界で他人に転生するという特殊環境で、彼に出会えたのだから私は幸せなのかもしれない。
「私は今イザベラがヒロインだと思っています。今から私がする行動は、男を放っておいて女を次々に落としていくというヒロインらしからぬ行動です。私がヒロインだとしたら、私の行動に強制力がかかってくる可能性があります。もし、私がルイス王太子殿下を好きだと言ったりしたらそれは強制力によるものです。私は39年間高望みと分かっていても、正統派王子様を求めてきました。ルイ王子は私の好みのドストライクであり性格は私が今まであった誰よりも優しく、あなたを知れば知るほど私の理想だと恋心を募らせています。あなた以外を好きな私は強制力によって操作されているものだと思ってください。私に強制力が働いていると感じたら必ず私にその旨を伝えてくれればと思います」
私は自分が外で品位を持ってしっかりした姿をみせることを意識しているせいか、アウトローなのがカッコ良いと思っている男が苦手だ。
実際のルイス王太子殿下は内気な子だとわかっているが、私がルイ王子という完璧な理想の男を差し置いて好きになることはありえない。
「そのように言って頂き光栄です。ありがとうございます」
ルイ王子が少し照れたように、顔を赤くした。
これはどういう反応だろうか見当もつかない。
39歳にロックオンされて恥ずかしく思った反応なのか、褒められて照れたのか全くわからない。
「本当に、イザベラを好きだと言う気持ちは強制力によるものなのか? 」
兄ルイスが苦しそうに、また私に尋ねてきた。
そういえば、突然私の部屋にきて抱きしめてきたことがあった。
自分をいつも支えてくれる弟を裏切る程の、激しい恋心の強制力がかかっているのだろう。
必死に耐えても衝動的に抑えられないほどの恋心を彼は強制力によって植え付けられているのだ。
「はい、王太子殿下が苦しんでいる今の気持ちはあなたの本当の気持ちではありません。私は本来の真面目な殿下なら、婚約者であり真面目に次期王妃としての役割をこなすフローラ様とお似合いだと思っています。物語のあらすじ通りに進めようとする強制力により本来好きになるはずのない相手に無理やり恋心を抱いているのです。苦しいとは思いますが、あと1年で本当の自分に戻れると信じてください」
私の言葉に兄ルイスの翡翠色の瞳は影を落とした。
兄ルイスは、この世界の誰にも理解できない苦しみの中にいるのだろう。
私の予想が当たっているとは限らない。
常に不自然さに注意しながら、作戦を軌道修正しなければならないだろう。