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「ずっと見ているだけじゃ、涼ちゃんもしんどいかもしれない…」
そう思った𓏸𓏸は、自分の心も整えながら少しだけ工夫をした。
涼ちゃんの枕元に、冷たい水の入ったコップをそっと置く。
食べやすいように、おかゆやゼリーも小さなカップに移して並べる。
部屋には、静かでやさしい音楽を流した。
「…好きなときに、飲んだり食べたりしていいからね」
そう言い残して、𓏸𓏸はいったん部屋をそっと離れた。
しばらくして戻ると、机の上のおかゆがほんの少しだけ減っていることに気づいた。
ゼリーも、スプーンにひとすくい分くらい減っている。
隣の水も、ほんの少しだけ減っていた。
それを見た𓏸𓏸は、胸の奥がふわっと温かくなる。
「……食べてくれたんだ…」
ノートに丁寧に記録する――
*11:15 おかゆ スプーン1杯分
*11:16 ゼリー 小さじ1
*11:17 水 10mlくらい
たったそれだけの変化でも、𓏸𓏸には眩しいほどの希望だった。
その日から𓏸𓏸は、時折そっと部屋に入り、食べ物や飲み物の減りを見ては静かに記録していった。
質問や話しかけは最小限にして、無理に詰め寄ることもやめた。
「食べてくれて、ありがとう」
心の中でだけ、何度も何度もそう呟いた。
たとえほんの一歩ずつでも、
涼ちゃんの内側に、静かに小さな命の火が残っているような気がして――
𓏸𓏸の瞳にも、前よりほんの少しだけ光が戻っていた。