それから一か月ほどは平和な日常が続いた。義母からの呼び出しは相変わらずだったが、今まで以上に気を張り、買い物はうまく工夫したり作り置きをアレンジすることで品数については問題なくなった。お腹の子も順調に育っている。
両親を事故で亡くし、天涯孤独だった美晴は、ようやく自分と血が繋がった子ができることを心から楽しみに実子と対面ができるその日を待ち望んでいた。
――今日は飲み会に参加することになった 遅くなる
夕飯の支度をしていた時、久々に幹雄から帰宅が遅くなる連絡が入った。今日は腹が張って苦しかったため、夫の帰宅が遅くなることに安堵した。座っているのも辛い状態だったので、お酌や幹雄の相手をしなくて済むことがありがたかった。しかしそんなことはぜったいに言えないので、気を付けて帰るようにとメッセージを入れて早めに眠りに就いた。
眠っていると、腹を圧迫される感覚が訪れ、息苦しくて目を覚ました。目を開けると、帰宅した夫が自分にのしかかっているところだった。彼と目が合う。
「幹雄さんっ!?」
「美晴。主人が帰って来たのに寝ているとはいい身分だな」
酒臭い息が頬に当たるとぞわりと肌が粟立った。無遠慮にパジャマの中に差し込まれた手は美晴の胸を掴んで離さない。
「ほら、奉仕しろ。動け」
いやらしい目つきで美晴の肌を見つめ、着衣を脱ぎ捨てて覆いかぶさって来た。
「幹雄さんっ、今、妊娠中ですから、性行為は控えるようにとお医者様が…」
「ちょっとくらい大丈夫だって。お前も僕に相手されなくて寂しいだろ?」
一気にパジャマをはぎ取られ、準備もできていない下腹部へ性急に欲望をねじ込まれた。
「ひっ…!」
「ホラ、ホラホラ動け動け~。僕を気持ちよくさせろ~」
乱暴に突き上げられるが美晴は悲鳴を堪えた。否定の言葉を伝えて夫を怒らせてしまっては後々面倒だ。美晴は夫を受け入れるふりをし、涙を流しながら窓の外の空を見上げた。月明かりさえも見えない暗い夜のことだった。