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柘榴とAI

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#没入感フィクション
柘榴とAI

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柘榴とAI

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「あれ? 夢月。今週ってもうテスト始まってるんだっけ?」
「あ、うん。明日で終わりかな」
翌週、ごく普通の生活を送っていたら。
夕飯時に兄からそんなお声を頂いてしまった。
なんかもうずっと忙しそうに働いているのに、学校関係の事も覚えてるんだから凄いなぁって思ってしまうけど。
「ありゃりゃ、勉強の方は大丈夫そうか? 普段から点数良かったから、あんまり心配して無かったけど。分かんない所あったら聞いて良いんだぞ?」
「ありがと、お兄ちゃん。でも今のところ学校の勉強なら問題無いかな? むしろ未だに銃の事の方がわかんないくらいだよ……あ、でも。ちゃんと学校の勉強はやってるからね? テスト前だって、友達と一緒に勉強会したし」
ごく普通に答えてみると、兄の動きがピタッと止まった。
そして。
「お友達と一緒にってのは、お兄ちゃんとしても凄く微笑ましいし、お前も成長したなって思って嬉しい。嬉しいんだけど……その、女の子……かな? 一緒に勉強したの」
「う、ううん。前にお兄ちゃんも会った事あるけど、黒沢君。そこから始まって、ガンサバ一緒にやってる友達とも一緒に……だけど。駄目だった?」
そう言った瞬間、ガクッと兄がテーブルに突っ伏しそうになってしまったではないか。
何が起きたのかと慌ててしまいそうになったけど、その後兄はプルプルしながら元の態勢に戻り。
「放課後……誰かの家に、お邪魔したりとか……そういう事は……」
「それは無いです、リモートです」
「すぅぅ……なら、まだ……許容範囲……かな? うん、まぁうん。高校生だもんな、皆で勉強くらいはするよな」
とか何とか言いつつも、未だに表情はピクピクしていらっしゃいますが。
前にも言っていたけど、やっぱりお兄ちゃんは私が男子と一緒に何かするっていう事に、非常に警戒心を抱くようだ。
そんなに心配しなくても、私の見た目じゃおかしなトラブルに巻き込まれる様な心配だって無い気がするんだけども……。
「と、とにかく。勉強を頑張っているのは良い事だ、でもあんまり異性に気軽に絡むと、男子というのはすぐに勘違いするモノです。気を付ける様に」
「はぁ……そういう、ものなの?」
よく分からないけど、とりあえず頷いておいた。
とはいえ、私と深く関わっているのってやっぱり黒沢君だけなんだよね。
他のメンバー二人に関しては、どちらかというと“ナナさん”にそういう目を向けているというか。
すご~くたまに、彼女ともご一緒するのだけれども。
そういう時だけは、グレーさんも出っ歯さんもテンションが高い気がするのは分かる。
単純にあの人と一緒だと楽しいっていうのもあるのだろうけど、グイグイ喋りかけるのは決まって彼女に対してだ。
私に対しては、物凄く普通の距離感というか。
あんまり男女を意識させない感じでお喋りしてくれるので、こちらとしても有難い。
特に出っ歯さんは昔以上に気を使わなくなったと言うか、あのテンションのまま私も巻き込んで盛り上げてくれるし。
感謝。
「そっちの話ばっかりでウザがられたら泣きそうになるので、友人間の話にはなるべく口を挟まない様にするとして……ちょっとだけ仕事の話しても良いか?」
「あ、はいどうぞ。また何か賞金首イベント?」
だとすれば、学生という意味ではタイミングが良い。
テストも終わるところだし、そっちに集中出来ると言うもの。
個人的な話としては……それこそ、黒沢君との“悪い所を見せよう”というデートの件があるので。
そっちの意味では、更に頭がこんがらがってしまいそうな気もするけど。
などと思っている内に兄はバッグから書類を取り出し、テーブルの端に。
まぁ、ご飯中だからね。
後で読めって事なのだろうけど。
「賞金首が忙しくなるイベントではないんだけどな? どっちかというと、許可が欲しい。みたいな」
「許可……? え、なんの? お仕事としてやれって言われたら、大体は言う通りにするけど」
はて? と首を傾げてしまう状況ではあったのだが。
チラッと企画書の一枚目を覗いてみると……うん? これは、私達に関係ある事なのか?
だってデカデカと、『高難易度NPCの開発』って書いてあるけど。
「簡単に言うとな、賞金首の動きを学習させたNPCの設置。つまり、お前達の劣化版を配置してみたら面白いんじゃないかって事だ」
「ほ、ほぉ? えぇと、AIとかそっち系って事……なのかな? 私、そっちには全然詳しくないから……よく分かんないけど」
なんかよく知らないけど、最近のAIは凄いらしい。
何でも出来ちゃう~みたいな、そういう雰囲気すらあるのだから。
そういうのが実装されるって事は……もしかして、私達賞金首がリストラされるのは時間の問題なんじゃ……。
思わずプルプルしてしまったけど、兄は軽く笑ってから。
「今言った通り、結局は“劣化版”だよ。どうしたってそういうモノは最適解を求めようとする、それは戦場においてかなりの脅威になる……のは確かだけど。ガンサバイブオンラインにおいては、決定的な弱点に変わる」
「え、えぇと?」
「夢月にとって、高レベルに設定された敵NPCとプレイヤー。どっちの方が脅威に感じる?」
「プレイヤー」
これだけは、思わず即答。
NPC相手なら、結構相手の動きが“読みやすい”。
けどプレイヤーは、本当に何をしでかすか分からないという恐怖があるのだ。
ノンプレイヤーなら、どうしたって敵の中に絶対的なルールがあり、それに従って行動してくれる。
それらを理解し、コレを逆手に取る事で、いくら相手が強かろうと勝ててしまう“抜け道”が存在するのだ。
対してプレイヤーは、絶対的なルールが存在しない。
慌てて引き金を引けば、銃弾は全く意味の無い方向へと飛んでいくが……もしもコレがフルオートだったりしてみろ。
相手だって狙ってもいない乱射は、本当にどこに当たるか分からないのだ。
その一発でキルを取られてしまえば、結局は此方の負け。
跳弾やら暴発まで考え始めたら、それこそキリがないというもの。
まぁこれらの行動を、意図的に発生させてくる理解不能なプレイヤーも居るけど……出っ歯さんとか。
「だろ? だから運営側としてはNPCステージのレベルアップ兼、プレイヤーに賞金首対策の機会を与えてみようって訳だ。ぶっちゃけ言うと、お前等の動きをいくら学習させようがNPCの方が強くなる事態なんて心配してない。それ等の完成品を本人に当てた所で、10戦やれば5割以上は賞金首が勝つだろうしな。後半なんて特に。そこは人間の“ズル賢さ”ってヤツだ」
そういう事らしく、今度は私達が直接働かず“賞金首モドキ”を作るのが目的みたいだ。
でも、そういうのが相手だったら一般プレイヤーからしたら嬉しいのかも。
どうしたって普段登場しない賞金首というキャラクターは、イベントくらいじゃないと直接戦えないもんね。
そうなって来ると、対策も“慣れ”も追い付かないのは分かる。
こういったモノの練習台として、誰でも気軽に“私達に似た存在”に挑めるというのは、アリなのかもしれない。
「分かった、私は平気だよ?」
「サンキュ、だけど書類には目を通しておくように。見た目はもちろん変える予定だが、風評被害だって出かねないから。あぁでも、学校のテスト終わってからで良いぞ? 急ぎって訳でも無いから、後で読んでみてくれ」
という事で、次のイベントは私も平和に過ごせそうだ。
もしかしたら、皆と一緒に参加出来たりするのかな。
◆
「フハハハハッ! 今の俺は解き放たれた獣! 止められるなら、止めてみるが良い――」
テストが終わったその日、皆でガンサバにログインしたのだが。
突っ込んだ出っ歯さんが、早速やられた。
「とっとと戻って来ーい。シロさんスマン、囮役が死んだわ。集中砲火食らう前に下がって~」
「は、はいっ!」
いつもだったら怒鳴っているグレーさんも、本日は非常に機嫌が良そうで。
機関銃をバラ撒きながら、ズンズンと前線を押し上げて行く。
指示された通り、46leatherのダッシュを使いながら下がってみると。
「ほいほい、選手交代~っと! クロさん援護よろしくねぇ~」
本日は御一緒してくれているナナさんが、ハンドガン片手に前方へ向かって飛び込んでいく。
とはいえ、素早く物陰に隠れながらだけど。
コレに対し、彼女に向かいそうな敵を端から狙撃手が撃ち抜いて行くという。
やっぱりパーティって凄いよね、これだけ安定するんだから。
なんて言っても、テストが終わった事により皆テンション高いみたいだというのは分かる。
クロさんは軽快にバンバン連続でキルを取るし、グレーさんも何だかいつもより足取り軽くズンズン進んでいく。
更に言うのなら。
「俺、復活! とうっ!」
しばらくして戻って来た出っ歯さんも、スピードに特化し始めたステータスを使って派手に戦場へと復帰していた。
やっぱり、サブキャラをやっている時は賑やかで楽しい。
思わずニヤけそうになってしまうけども、此方も隠れてばかりという訳にもいかず。
出っ歯さんが戻って来た事により、私も前線をかき乱す為に走り回る。
この行動を続けていると、割と高難易度ステージでも何とかなってしまうという。
という事で、NPCを皆やっつけてから。
お疲れ~なんて声を上げつつ皆で集合し始めたその時。
ステージクリアの表記が出たその後、誰もが気を抜いた所で。
パンッ! と銃声が響き渡った。
この一発は……私の肩を貫き、状況を理解出来ぬままその場に尻餅をついてしまったが。
「プレイヤーからの強襲だ! カバー!」
「シロちゃん平気!? こっち!」
私の防弾ベストを引っ張りつつ、ナナさんが物陰へと引っ張ってくれる。
銃弾が飛んで来たらしい方向へ向かって、グレーさんが機関銃を乱射。
そして私達の盾になる様にして立ちふさがり。
「卑怯な……男なら正々堂々真っ向から試合を挑め! 腰抜けどもめ!」
出っ歯さんが二丁拳銃をクロスしながら胸の前に構えつつ、勢いよく特攻していく背中が見えた。
あ、なるほど……。
これが、ガンサバにおいての“強襲”なのか。
こういうのも警戒しつつ、普段のプレイをしないといけなかったんだった。
これまで運が良かっただけか、それとも私達の装備を見て“挑む価値が無い”と判断されていたのかは分からないけど。
私にとっては、初めての“普通の強襲”。
最初期、6keyの初ログインの時に強襲された事はあったけど。
あの時は、お兄ちゃんが事前に教えてくれたんだっけ。
そんな事を思いつつ、ナナさんからの治療を受けていると。
『グレー、前進して。出っ歯が頑張ってくれてるけど、このままだと押し負ける』
無線から、やけに静かなクロさんの声が聞えて来た。
「シロさんとナナさんは!? ここに残して平気か!?」
『前衛がやられない限り、多分平気。恐らく狙いは、“俺達”だ。賞金首のファンから反感を買ったのか、それともその時のドロップを狙ってるのかは知らないけど。出っ歯を殲滅する事に対して躍起になってる』
「っしゃぁ! なら突っ込む! シロさんとナナさん、聞いた通りだから暫くソコで治療に専念して!」
叫ぶと同時に出陣するグレーさん。
無線からも、クロさんの移動している音が聞こえてくるが。
『殺す。絶対に、殺す』
最後の一人だけは、やけに殺気立った様な声が聞えて来るのであった。
怒っているクロさんの声、初めて聴いた……。
コメント
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いや~、今回のエピソードは日常の和やかさと戦場の緊張感の緩急がすごく良かったです!冒頭でお兄ちゃんが夢月ちゃんの交友関係に過敏に反応してるところ、ほっこりしましたね。「リモートなら許容範囲」って必死な感じが可愛いw 後半、ガンサバでの強襲シーンは一気に空気が変わってハラハラ。特にクロさんの「♡♡♡」の一言は背筋が冷えました。いつも冷静な人が怒ると怖いってのが伝わってきて、タイトルの「逆鱗」に合ってるなと。テスト終わりで浮かれてた流れからの急転直下、次が気になります!