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前回のコメント欄にも書きましたが、改めて報告させていただきます。
※現在は修正済みです。
訂正:
ゲームマスターの名前
× 天ヶ瀬 音黒【あまがせ ねくろ】
○ 依神 炉命【よりがみ ろいの】
黒暮 乃亜、20歳。無名の芸術家。だらしなく伸ばされた黒髪、痣を隠すために付けているアーガイル柄のマフラーが特徴の男。季節外れの黒いニットセーターも着ているが、汗一つかいていない。
「はいはい、乃亜くんね!次は黒髪繋がりでそこの君!」
炉命は大げさなほどにうんうんと頷くと、先ほど女性と話していた男性を指した。彼は天ヶ瀬 音黒【あまがせ ねくろ】と名乗り、職業は探偵だと言った。こんな状況下では探偵も警察と同義と捉えられているのか、彼はほとんどの人から期待に満ちた目で見られていた。そんな視線を察したのか、彼は短く息を吸い、こう言った。
「俺は、小説の中の探偵のように推理をして皆さんを導くことはできません。それだけは、知っておいてください。」
小説の中の探偵というと、何の変哲もない現場から華麗に犯人を推理する…そんな夢のような人物のことを指しているんだろう。期待していないと言えば嘘になるが、僕の正体がバレることだけは勘弁してほしい。無論、気をつけるつもりだが。
「探偵くんに期待だね!それじゃあ、次は君どうぞ!」
次に彼女は高貴な雰囲気を感じた男性を指した。彼は紅麗 参【こうらい みつ】と名乗り、とあるアイドルのマネージャーをしていると言って頭を下げた。会社の社長でもしていると思ってたが、アイドルのマネージャーだったらしい。アイドルの名前は覚えていないのかと音黒が聞いていたが、全く覚えていないの一点張りだった。
「頭の中にぽっかり穴が開いたように思い出せないんです。ですから、炉命さんが言っていたことは本当かと。」
「え~?疑ってたの~?ひっどーい!」
こんな状況下であれば、誰もが彼女のことを疑うと思うが当の本人はそのことに気付いていないのか、はたまた気付いていながら参のことをいじっているのか彼女は、子供のようにぷくっと頬を膨らませながらいじけていた。
「あなた、アイドルのマネージャーなのねっ!実は、私アイドルなの。」
先ほどの茶髪の女性が、参に微笑んだ。運命的な再会?に数人ほどが彼女らを交互に見つめ、場は少しの間沈黙と化した。気まずかったのか、それとも自分が自己紹介をした方がいいと思ったのか彼女はこほんと咳払いをした後、葉白 あられ【はしろ あられ】と名乗った。確かに、よく見てみればアイドルかモデルか…何かしらの人前に立つ仕事をしていそうな体型や話し方だった。
「すっごいね~!運命だ!それとも偶然かな?…それじゃあ次はそこの君どうぞ!」
彼女が指したのは音黒が話していた「沙桃さん」という女性だった。彼女は少し緊張したように肩をすくめた後、名前は沙桃 叶【さとう かの】、本業は大学生で、隙間時間でアルバイトをしていると言った。何個掛け持ちしているのかとあられが聞くと、彼女は、力こぶを作り自信満々に言った。
「何個掛け持ちしていたかは覚えていないんですが、体力には自信があります!」
よく見ると、ここに連れてこられる前にコンシーラーで隠したのか目の下にクマがあることに気がついた。彼女の体調が結構心配だ。彼女もそれに気付いたのか叶の手をぎゅっと握り、真剣そうに言った。
「かっ体壊さないようにね!!何かあったら言うのよ!!!」
「倒れられたら僕も困るからちゃんと寝るんだよ~」
「?…はい!ありがとうございます!」
突然みんなに心配されてびっくりしたのか怪訝そうな顔をしながらも、彼女はへにゃっと微笑んだ。もしかしなくても天然というやつだったのだろうか。そんなことをぼんやりと思い出していると今思い出したかのように、あ!と間抜けで大きな男性の声が教室中に響いた。声がした方へ顔を向けると、予想通りだったが、自分を指指した自己紹介をしていない男性がいた。横には同じくまだ自己紹介していない人が迷惑そうに耳を塞いでいる。「人」という曖昧な表現を使った理由は、その人が付けている顔を隠せるぐらいの狐のお面が原因である。
「そーいやオレまだ自己紹介してへんかったな!他の人の話聞いててすっかり忘れとったわ!カフェのマスターしとる夜依 誉【よより ほまれ】や。よろしゅうな!」
誉は、アッシュグレーに染めたマッシュヘアに黒縁の丸メガネ、黒いパーカーにリネンパンツを履いている。見た目で偏見を言うのはよくないが、真面目そうな外見の男性だと思っていた。数秒前までは。
「…あまり僕の近くで大声を出さないでください。非常に五月蠅いです。猿ですか?あ、すみません。猿でしたね。」
「えげつないな…オレら初対面やろ。いや、初対面やない…のか?もしかして記憶を失う前に会うたことあるとか…」
「さぁ?知りません。…と、失礼。音 千歳【おと ちとせ】と申します。神社で神主をしています。」
千歳は、白い紐で前で三つ編みをした黒髪を結い、体型が分からないぐらいゆったりと大きい着物を着ている。見た目もそうだが、声も中性的で性別が分からない。
全員の自己紹介が終わり、炉命はこの時を待ち望んだように、満足げな笑みを浮かべた。
「これで自己紹介は終わったね!さっき説明した通り、コインを10枚集めたら僕のところに持ってきて!学校内ならどこを探索してもいいからね!…期待しているよ。」
彼女は確かにみんなを見て言ったはずだ。しかし、最後の一言を彼女が言ったとき、彼女は僕の方を見ていたような気がした。だから何だという話だが、僕は正直言って彼女が怖い。見た目も精神年齢も僕よりずいぶんと幼い彼女のことが、僕は幽霊や連続殺人鬼よりも怖い。内通者としてもそうだが、1人の人間としても。まあそんなこと誰にも言えないことだけは確かだ。
僕は改めて彼らと教室を見渡す。計7名。数年の時を経て、この教室に集った。自分以外は誰も覚えていないんだろうが、僕はあの日を一時も忘れたことはない。化け物を見るかのようにこちらを見た少女の目、清々しいくらい青かった広い空、そして、あの青い春の日の罪。
…………今、また『あの日』が始まろうとしている。