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[木林side]
「でてけ」
先ほどの光景は異常だった。
部屋に漂う死の匂い 。ずっとそうだった 。生きているように感じなかった 。離したく 、離れたく 、なかった 。
今も 、顔が汗と涙でぐしゃぐしゃ の彼は 、ついさっき 自身が泣いてることに気づいたようだ 。誰がどう見ても 、正気じゃないことは確かだった 。
「…その前に 」
私から発せられた言葉に 、中堂さんの耳がぴくりと動いた。
「話してください 。全部」
たとえ嫌われようとも 、この人を救い出すことができるなら 何でも良かった。
なんで
「なんで貴方がこんな目に合わなきゃならないんですか」
ずっと、戦い続けてきたじゃないですか。苦しんできたじゃないですか。この世界の誰よりも、ひとを想える優しい人じゃないですか、貴方は。
「私は 、貴方が幸せじゃないなんて許せません。」
「勇敢な貴方が、救われる世界じゃないなんて、おかしいじゃないですか。」
つい、
つい言ってしまった。こんなこと言ったら、この猫は逃げ出すのではないか…?反応が怖いが、音が一切しない中堂さんの方を恐る恐る確認してみる。
すると、彼はぽかーんとした顔で静止していた。いつもならくすりと笑って、私を揶揄っているところだが、取り乱し具合に驚いたのか 、ピクリとも動かない。
しばらくして 、彼が口だけを小さく動かして呟いた。
「…あの 、ボール 。覚えてるか ?」