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ろのみ🩵🫧
43
#愛され
おうか
252
「今日で2人で来るのは最後です。後は各々フォローさせて頂きます」
吉良君がそう挨拶をしたのはクリスマスイブの事だった。
「おー、それ、指名できんの? 」
「……できませんよ」
「残念」
そう言って笑った。
「2人揃ってるとなかなかの美男美女だから……それも楽しめたのになぁ」
「見劣りします、彼と並んだら」
彼女の言葉に、ああ、そういう事かと悟る。
「まさか。お似合いだよ。……妬けるくらいね」
俺の言葉に彼女は俯いた。
「これから、2人は? イヴデート? 」
「オフィス事務処理デートです」
吉良君がサラリとかわす。
「2人がオフィスも何かエロいよね。どっちも顔がエロいし」
誰もいないのをいいことにからかう。
「ちょ、顔がエロいは止めて下さい」
「何だろうなー……妙にエロい」
「清水さん! 」
中条さんがいつものクールさを取っ払って赤くなる。可愛いねぇ。この感じ。
「他にもいますよ、会社。2人きりじゃない」
吉良君は淡々と話す。あえて、だろう。
「おー、長らく行ってないなぁ、そっち。……佳子ちゃん元気? 」
『佳子ちゃん』は向こうの事務の女性だ。感じよく話し好きの好感の持てる人だ。
「あー、元気ですよ」
「へー……そろそろ結婚してるんじゃないの? 」
「……まだ、です」
「……彼女も、可愛いからね」
彼女“も”ね。
──そこで彼らと別れたが、後ろから二人を追いかけるように、ビルを出た。
「あれ、何かありました? 」
「眠気覚まし、コーヒー買いに行くわ。缶コーヒー苦手で」
「ああ、なるほど」
「うーん……スカートもいいね」
珍しいと彼女に話しかける。彼と出かけるからだろうか?
「あ、セクハラか。《《アラフォー》》が若い子に言ったら駄目だね」
この前の、会話の延長
「もう、それ止めて下さい」
彼女は、俺の目を見た。でも、5秒経つ前に逸らす。
「それも……止めて欲しいけどなぁ」
彼女が笑う。随分、表情が出てきたもんだ。
逆に、こっちは……表情には出さない。うーん……可愛い。
可愛いんだよな、吉良君も。
同じ会社だ。
いくらでも機会はあるだろう。それなのに……環境が整ってるっていうのに、駄目なのか。
問題は彼の方、か。むしろ、それだけか。せっかくのイヴなのにね。
……俺も……か。
二人の事は放っといて自分の事を考えたらいいのに。
癖だな。損な性分だな。二人の妙に距離の開いた後ろ姿を見ながらそんな事を思った。
「お、君の方か」
年明け、今月から彼か、彼女かどちらかが来る。
「すみません。新年1発目が僕で。明けましておめでとうございます。今年も、宜しくお願い致します」
丁寧に頭を下げる彼に、挨拶を返す。
「……今日ってさ……どうやって決めたの?」
わざと聞いた。うちに来るのが、彼か、それとも彼女か。
「私情は挟んでませんよ。兼ね合いというか……」
「ふっ、だろうね」
「もう、色々バレてるだろうから言ってしまいますけど……僕に権限はありませんよ。公私ともに」
さすが、勘がいい事で。
「|指輪《それは》? 何で? 」
彼の左手の薬指からは、いつもあった物が消えていた。
「色々理由ありますけど、前向きな理由を挙げると。治そうと思って」
前向き……つまり……彼女のことか。
「君みたいな、綺麗な男が復帰するとなると……|男《こっち》は脅威だし、|女《あっち》は……色めき立つよね」
「何言ってんですか……社内一のモテ男が」
「えー、うちの社にもモテてんでしょ? 君」
「|清水部長《そっち》が相手しないから|社外《こっち》に流れてくるんですよ」
「相手、して欲しいの? なら、部屋あそこ取ろうか? 」
そう言って笑って親指で指した方向には、それなりのランクのホテルがある。
「あー、僕そっちはハジメテなんでお手柔らかに」
「はっ! マジで!? 意外だなぁ。新年早々こんな美人がOKしてくれるとはね」
そこも乗ってくれるんだな。まぁ、男でもよろめく程の美人だ。
「何ですか? 新年早々その多様性ジョーク」
「ちょっとくらいゲイみがある方が、独身の言い訳が立つだろ。しかも相手は美少年」
「ゲイみて何若ぶってんですか、微妙に古いです」
若ぶるって、そんな歳上でもないんだが。
「美少年の自覚はあるんだ? 」
「もう、少年の歳じゃないですけど……美しいのは否定せずにいます」
そう言って生意気そうな顔で笑った。うーん……笑うと少年でもいけそうだけどね。
しかし、可愛いな。
広げなくていい幅が広がりそうだ、俺。
夕方、思い付きで中条さんに電話した。
「ああ、まだ会社? 」
『ええ』
「プライベートなんだ。ちょーっと、|人気《ひとけ》のないとこで話せる?」
『すぐ、折り返します』
そう言って、すぐに折り返してきた。
『明けましておめでとうございます。清水さん。ご挨拶が遅くなって……』
こういう所、吉良君も中条さんもしっかりしてる。プライベートとの線引きが。
「いや、はは。おめでとうございます。こちらこそ……。そっちからは|吉良君《イケメン》が代表で来てくれたからね。ちょっと、久しぶりだね」
『本当、ご無沙汰してます。でも、もう1度2人で行かせて頂く事になって……』
「うん、悪いね、無理言って。覚えの悪い奴ばっかで……」
『清水さんも、お忙しいでしょう?』
「結構……ね。でも、もう落ち着くよ。……忘れてない?」
『……はい?』
「はは、俺の顔」
『覚えてます。忘れるなんて……』
「そっち、イケメンばっかだからなぁ……」
『……清水さんだって……』
「じゃあ、見に来ない? 今から」
『……今?』
「まだ、終わらない? それとも、予定が? 」
『……伺います。どちらへ? 』
すぐに会うことになった。
コメント
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読了しました。第2話-5、10話目ですね。 清水さんの、吉良君と中条さんに対する“可愛い”の連発と、それを冷静に見つめつつもどこか寂しげな視線がとても印象的でした。特に「妬けるくらいね」からの、新年早々の「美少年」ジョークの応酬は、距離感の妙が光っていて。最後に中条さんを「見に来ない?」と誘う清水さんの、軽やかでいてちょっと切ない本音が滲む感じ、すごく好きです。続きが気になりますね…!