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『対決の日が きた』
世間はバレンタインデー。
ありがたくも個人仕事も充実してる俺達だから、バレンタイン当日に収録があるとは思わなかった。
鞄に忍ばせてきたチョコレート。ベタかもしれないけど、もちろん手作り。
舘様にレクチャーを受けたので安心な代物。多分。
ラッピングはシンプルな薄い桜色の包み紙に黒とピンクのリボン。そう、お察しの通り俺と蓮のメンバーカラー。
今日はこれを渡して、俺の想いを蓮に伝えられたらいいな。
そんな想いとは裏腹に、収録はトラブル続きでバタバタ。
休憩も返上しながらプロ根性で乗り切る。
終わった頃にはみんなぐったりで、チョコがどうのなんてそんなこと言い出せる雰囲気じゃなかった。
それぞれ疲れた身体を引きずりながら帰路につく。
相変わらず、最後に残ってるのは俺と蓮だけ。これって、もしかして今が渡すチャンスなのか…?
そう思ったのに、肝心の蓮の姿が見当たらない。鞄はまだ楽屋にあるから絶対どこかにいるはずなのに。
少し辺りを探してみようと廊下に出て歩いてく。非常階段の前を通りかかった時、微かな声が聞こえた。
少し開いたままの扉の向こうには蓮の姿。その肩越しにギリギリ見えるのは、最近入ったスタッフの女性…?
これって、まさか。
「目黒さん、好きです! 付き合ってもらえませんか」
「……ありがとうございます。お気持ちは嬉しいです」
蓮に差し出された、どう見ても手作りと分かる可愛らしいラッピングの箱。
確か、他のスタッフの方が「すごく可愛い子が入った」って騒いでた人だ。みんな、こういう人に告白してもらいたいよな…。
メンバーで、男で、5歳も歳上なんて。どう考えても対象外だろ。
バレンタインだなんて、浮かれてる場合じゃない。
そもそも、振り向いてもらえるわけないじゃん。
目の前の光景に現実を突きつけられたような気がして、急いでその場を走り去った。
その時扉に少しぶつかったような気がしたけど、そんなこと気にする余裕もなくて。
一目散に楽屋に戻って、急いで帰り支度をする。
今、蓮の顔なんて見られない。戻ってくる前に帰らないと。
鞄を手に取った時に、黒とピンクのリボンが見えた。
これどうしよう…捨てる? でも、舘が一生懸命教えてくれたのに。
「そうだ…食べちゃお」
それがいい。もったいないし。食べて、蓮への想いも忘れてしまえばいいんだ。
そう思ってリボンに手を掛けたその時。
「やっぱり、佐久間くんだった…!」
走って来たのか、少し息が切れた蓮が戻ってきた。
チョコのことなんていいから、さっさと帰れば良かった。
「佐久間くん、さっきの見てたよね…?」
「見てた、けど、俺には関係ないじゃん…? あ、別に言いふらそうなんて思ってないから安心していいぞ」
「何か誤解してない? 俺は…」
そう言いながら側まで歩いてきた蓮が俺の手元をじっと見つめる。
何かあったっけ? そう思って自分の手元を見ると、黒とピンクで彩られたラッピング。
しまった。 ピンクだけならともかく、黒が入ったラッピングなんて俺が持ってるの明らかに不自然じゃん!
今更だけど隠そうかどうしようか焦ってると、蓮が俺の手ごとその箱を掴んだ。
「え、ちょ、蓮?」
「これ、何? 何で俺と佐久間くんのメンバーカラーなの?」
「いや、これは」
「どう見ても手作りだよね? もらったの? 誰から??」
矢継ぎ早に出てくる質問に困惑する。
俺が誰からチョコをもらおうが、お前は興味ないだろ?
ましてや、これが俺の手作りだったところでさ。
蓮に、気持ちが届くわけじゃないんだ。
「ねえ、佐久間くん。教えてくれないの?」
少し首を傾げて、上目遣いで蓮は俺の顔を覗き込む。
そのワンコみたいな表情に弱いって知ってて、卑怯だろ…!
「ち、違う。これは、その、俺が作ったやつ、で…」
「…佐久間くんが?」
「そ、そう。でも、別に誰かにあげようとかそんなんじゃなくて! 今自分で食べようと思っただけで…!!」
「…ラッピングがこの色なのは何で?」
「べ、別にたまたまこの色のリボンがあっただけで! 意味なんてないからな!!」
「……そっか」
何でそんな顔するんだよ。何でそんな、悲しそうなんだよ。
勘違いしちゃうだろ、バカ蓮。
少し俯いてた蓮がぱっと顔を上げる。
「だったら、俺にちょうだい」
「…は?」
「誰にもあげる予定ないんでしょ? だったら俺が欲しい。俺にちょうだい」
そう言う蓮の顔が何だかすごく真剣で、咄嗟に言葉が出てこなかった。
いや、だからって意味分からないだろ! 蓮に渡せなくて食べちゃおうとしたチョコレートを蓮が欲しがるとか。
こんなの、渡せるわけないだろ…!?
「こ、こんなチョコ欲しがらなくたって、お前はいっぱいもらってるだろ?!」
「今日は誰からももらってないよ。このチョコが初めて。だから欲しい!」
「嘘つくなよ! さっき新しく入ったスタッフさんからもらってたろ!?」
「それなら断ったよ」
「え」
「付き合うことは出来ないし、チョコも誰からももらわないって正直に言って断った。仕事仲間としてよろしくお願いしますって言ったら分かってくれた」
『そう、なんだ…」
蓮が告白を断ったって、チョコも受け取ってないって聞いて安堵してる自分がいる。
だってやっぱり好きなんだ。
誰のものにもならないでって願うくらいには。
でも、だからって。
「だったらなおさら、俺のチョコ欲しがるなんておかしいと思わないのかよ?!」
「思わないよ! 佐久間くんからのチョコなんて欲しいに決まってるだろ?!」
「いや何でだよ!」
「佐久間くんが好きだからだよ!!」
蓮の言葉に、身体も思考も動きを止める。
今、何て? 俺の聞き間違い、だよな…?
そうは思ってみても、目の前の蓮は真剣な顔。じっと目を逸らさず、俺の方を見てる。
俺はといえば、指先の力も抜けてしまって蓮の手にチョコが渡ってしまったことにも気付かなかった。
「佐久間くんが好きなんだよ…気付いてなかっただろうけど」
「だって、そんなの…」
「いいんだ。佐久間くんが振り向いてくれるわけないって分かってる。だからせめてさ、このチョコは俺にちょうだい。じゃないと、もう一生佐久間くんからのチョコなんてもらえないでしょ…」
チョコレートの箱を大事そうに抱えた蓮が、悲しそうに少しだけ笑った。
同じ、だったんだ。
振り向いてもらえるわけないって、好きになってもらうなんて無理だって。
そう決めつけて、諦めようとしたのも全部。
俺達、同じなんだ。
「…蓮の、だよ」
「え…?」
「自分が食べるためじゃないし、他の誰かにあげるために作ったんじゃない。そのチョコは…最初から蓮のだよ…」
「…俺?」
「だから、俺と蓮のメンバーカラーなんてリボンにしたんだろ…っ」
蓮の反応が怖くて、両手を強く握り締めながら伝える。
俺の顔とチョコの箱を交互に見つめてた蓮は、やがて嬉しそうに笑った。
その両腕が伸びてきたと思ったら、強く抱きしめられる。
「…嬉しい。俺、ずっと片想いだと思ってたから」
「俺だって…」
「俺のこと想って作ってくれたの?」
「うん、作った。蓮に気持ちが伝わればいいなって思って」
「それを食べちゃおうとしてたの? 間に合って良かった…」
心底ほっとしたように言う蓮に、思わず笑いが込み上げる。
俺のチョコ、そんなに欲しいって思ってくれたんだ。
「ありがとう、佐久間くん。大好きだよ」
「うん、俺も好き。大好き」
俺の顔を覗き込んだ蓮がちゅっと唇にキスを落とした。
チョコより先に俺の唇が頂かれました。
まあ、家に帰ってから唇以外も頂かれたんだけどね?
それはまた別の機会に…。
FIN
まだ寝てないので今日はバレンタインです。と言い張るw
みなさまハッピーバレンタイン!
コメント
2件
はぁ…やっぱり🖤🩷は最高ですね(*´Д`) わんこなめめ好き💕 熱は上がりそうですが(笑)元気出ました!! ありがとう:*(〃∇〃人)*: