20XX年、ユーラシア大陸東部で発生した新型ウィルスによる厄災は、瞬く間に世界を席巻し、人々を恐怖で包み込んだ。
世界各地で採掘・採集された材料を、人件費の安い外国人労働者を使役して加工・販売することで成り立っている現代のグローバル経済では、物流も人流も完全に止めることが出来ず、各国政府は中途半端な水際対策しか執れないでいた。
感染は広がっていく……
やがてネット上に、人々の不安と恐怖を煽るような悪質なデマが飛び交うようになる。曰く「死亡した患者の遺体を解剖したら、肺がガラス繊維のようになっていた」「内臓疾患を持つ患者の遺体は、解剖すると内臓がボロボロになっていた」「サプライチューンが崩壊し、もう直、トイレットペーパーやアルコール消毒液が買えなくなる」
死者に対する哀悼の念や、闘病中の患者に対する労りの気持ちを、(自分も同じ目に合いたくない)という生存本能が上回り、人々をより残酷な行為へと駆り立てた。
家族の中で感染者が出たという家庭は、他の家族がPCR検査をパスしたにも関わらず隣近所から白い目で見られた。ウィルス感染から奇跡的に回復した者が職場復帰しようとしたところ、経営者から不当な解雇宣告を受けた件もある。
ウィルスの蔓延で不自由な生活を強いられ、行き場のない苛立ちの矛先が、よりによって、ウィルスの脅威から皆を守っている医療従事者たちに向かい、心無い言葉や理由のないバッシングが雪崩のように医療スタッフたちに襲いかかってきた。あまりの理不尽さに耐えきれず、医療の現場を去る者たちも少なくなかった。
ウィルス発生の起源がアジアであることから、欧米ではアジア系住民に対する謂われの無いヘイトスピーチや暴力事件が増加していった。
今や、新型ウィルスの毒は、人の肉体だけでなく心までも蝕んでいた。
黙示録の騎士たちも、さぞや鼻が高かったろう……
コメント
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コンテストふぁいとです!!🫶🏻🔥