テラーノベル
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渡辺との対峙後、目黒は現実のベッドに跳びはねるように目覚めた。
🖤「……はっ」
荒い呼吸を繰り返しながら、目黒は額に浮かんだ汗を手の甲で拭う。
🖤「ふぅ……」
深く長い息を吐き、ゆっくりと隣へ視線を向けた。
そこには、愛しくてたまらない存在がいた。
🖤「……涼太くん」
宮舘は穏やかな寝息を立てていた。
規則正しく上下する胸元。
無防備に伏せられた睫毛。
少しだけ開いた唇。
その寝顔を見つめているだけで目黒の胸は、どうしようもない幸福感が満ちていく。
そっと手を伸ばし、宮舘の頬に触れる。
温かい。
確かな体温がそこにはあった。
――今の宮舘は、昔とは違う。
かつて、この世界の宮舘もそうだった。
触れることを許さない。
何を考えているのか分からない。
身体を重ねても、そこに感情はない。
まるで意思を持たない人形と触れ合っているような、冷え切った関係。
それが二人の【普通】だった。
けれど、今は違う。
宮舘は目黒を求めてくれる。
自分から甘えて、自分から触れてくれる。
そして何よりも、
――目黒が与えた愛を返してくれるのだ。
🖤「……幸せだな」
目黒は小さく呟いた。
この幸福は、偶然手に入れたものではない。
全ての始まりはある夜のことだった。
***
眠りに落ちた目黒が目を開けると、そこには白い空間が広がった。
ただ、果てのない白だけが存在する世界。
その中心に、一人の男が立っていた。
🖤「……舘さん?」
目黒がそう呼んだ瞬間、男はゆっくりと振り返った。
そこにいたのは紛れもなく宮舘涼太だった。
🔴「……蓮」
宮舘が自分を名前で呼ぶのを聞いて目黒は、直感的に理解した。
自分の知っている宮舘ではない、と。
🔴「……俺の話、聞いてくれる?」
.
.
.
目の前にいる宮舘は、あまりにも異質な存在だった。
この宮舘は、他の世界の人間で【メンバー全員】と恋人になり、あらゆる世界線を見てきたという。
――数え切れないほど存在する【宮舘涼太】の中心に存在する、宮舘涼太。
宮舘は何の前触れもなく目黒へ歩み寄り、細い腕を目黒の首へ回した。
耳元へ顔を寄せると、吐息が触れるほどの距離で囁いた。
🔴『……俺は蓮が好き。蓮だけがほしい』
自分の恋人である宮舘からは聞けない、酷く甘い声に目黒の身体が僅かに強張った。
🔴『だから俺の事象を変えるために、他の世界のメンバーの夢に介入して』
耳元で、宮舘の甘い声が続く。
🔴『俺がメンバーと恋人っていう事実を、全部消してほしいの』
目黒は、この宮舘に何を言われているのか理解出来なかった。
別の世界、事象、世界線。
自分の知らない宮舘涼太。
そんなものが本当に存在するのかと、普通なら夢の中の戯言だと思っただろう。
――けれど、
目黒は、目の前にいる宮舘の言葉を信じた。
――なぜなら、
目黒は、宮舘涼太を狂おしいほど愛しているからだ。
そして、その話を聞いた瞬間、胸の奥から湧き上がった感情があった。
嫉妬、嫌悪、憤怒。
別の世界の話で別の宮舘だとしても自分以外と恋人になっている。
自分以外の誰かと愛し合い、身体を重ねているなんて――その事実が反吐が出るほど腹立たしかった。
🖤「……そんなこと、俺に出来るの…?」
思わず漏れた声に、目の前の宮舘は静かに微笑んだ。
🔴『……大丈夫。蓮なら出来るよ』
🖤「本当…?」
🔴「うん。……だから俺を信じて、ね?」
🖤「わかったよ、舘さん」
宮舘の願いは目黒にとっても、あまりにも都合がよかった。
――ならば
全部、消してしまえばいい。
宮舘も、自分も望んでいる。
それなら、迷う理由などなかった。
.
.
.
だから、目黒は動いた。
宮舘の言葉通りに、別の世界の【メンバー】達の夢へ侵入しようとした。
目黒に宮舘のようなことは不可能だった。
――しかし夢を生成することに成功した。
そして、目黒は一つの場所を作り出す。
それが、後の【夢の相談室】だった。
そこへ宮舘との関係が上手くいっていない【別世界のメンバー】達を招いてしまえばいい、と考えた。
結果、目黒の思惑は上手くいった。
やはり、どの世界線でもメンバーは宮舘との関係が上手くいっていなかった。
触れることを拒まれる。
身体を重ねても、心が繋がらない。
だから目黒は、親身になって話を聞き、相手の苦しみに寄り添う相談相手を演じた。
🖤「それなら、こうしてみたら?」
もっともらしいことを優しく助言する。
メンバー達は、その助言を聞き入れ目黒に感謝していた。
――しかし、全ては間違いだった。
関係は修復されることはなく、少しずつ二人の距離が開いていくように仕向けた。
決して気付かれないように逃げ道を塞ぎ、最後には別れへ辿り着くようにした。
そして、次々と別世界のメンバー達を宮舘から引き離していった。
全く、良心は痛まなかった。
🖤「(舘さん。……いや。涼太くんは俺の恋人なんだ……!)」
メンバーを一人、また一人と引き離す度に、目黒の世界の宮舘は徐々に恋人らしいことを受け入れるようになった。
幸福で胸がいっぱいだった。
ラウール、向井康二、佐久間大介。
岩本 照、深澤辰哉、阿部亮平。
――残るのは、渡辺翔太だけだった。
🖤「……なのに」
目黒は、先程まで見ていた夢を思い出す。
渡辺は拒絶し、夢の中に現れた目黒の言葉を受け入れなかった。
そして、目黒が今まで築き上げてきた牙城を――【夢の相談室】を、壊した。
現実の彼との絆を強めることで、渡辺の世界での宮舘の事象を、自分自身の力で突破してしまった。
🖤「……ははっ、まじかよ……」
想定外の出来事だった。
今までなら自分のテリトリーに招き入れれば必ず干渉できた。
――途中までは良かったのだ。
夢に招くタイミングは、どの世界でも同じで、その時々でメンバーと宮舘に何が起きているか当てることが出来た。
けれど、今回の渡辺は何故か夢に招けず、タイミングがズレてしまった。
挙句の果てには、目黒の夢の世界を拒絶し、破壊してしまったのだ。
また夢の空間を再構築し、同じことをしようとしても――きっと壊されてしまう。
🖤「……参ったな」
目黒はベッドへ身体を預け、眠り続ける宮舘を見る。
こんなにも自分が愛し、自分を愛してくれている存在は他にいない。
🖤「……相談しないと」
全ての世界を見てきた宮舘に、この計画を、どうすれば修正できるのか。
今の幸せを全ての世界の【目黒 蓮】にも等しく与えるには、どうすればいいのか相談しなくてはならない。
目黒はゆっくりと宮舘へ身体を寄せた。
腕を伸ばし、その身体を強く抱きしめる。
🖤「……待っててね、涼太くん」
眠っている宮舘の耳元で、囁く。
🖤「全部の世界の俺達が、涼太くんを独占出来るようにしてあげるから……」
静かな寝室には、宮舘の穏やかな寝息だけが聞こえる。
目黒は微笑み、宮舘の額へ優しく口付ける。
🖤「愛してるよ」
今度は、頬へ優しく口付けた。
🖤「……涼太くん」
目黒は目を閉じると意識が、ゆっくりと沈んでいく。
宮舘のいる、あの白い空間へ再び辿り着くために。
全ての世界で愛する宮舘涼太を、自分だけのものにするために。
目黒は、深い夢の底へと身を沈めていった。
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にゅうひん☆
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マロン
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コメント
3件
そろそろ理解が追いつかなくなってきたぞぉ…🌀 おいらのちっぽけな頭じゃ足りない… 壮大な物語だなぁ…✨
あおいです🌷 第5話、読ませていただきました…! 今までの優しい空気が一転、目黒さんの“歪んだ愛”の正体が明らかになって、すごく衝撃的でした。「夢の相談室」が実は別世界のメンバーを引き離すための仕掛けだったなんて…優しく助言する姿と裏の意図のギャップが、読んでいて背筋が冷たくなりました。それでも「涼太くんを愛してる」と囁く目黒さんの執着が、切なくも怖くて、目が離せません。 渡辺くんだけは跳ね返した強さが、今後のカギになりそうですね。次の展開が気になります…!