ー職人はクオリティのためなら犠牲を問わないー
糸師凛:
「おい、これ……まだ発売してないやつだよな?」
夢主:
「そ、それはそうなんだけど……。」
(焦りながら説明を始める)
「お試し版というか、発売前のゲームをテストプレイしてもらって、バグを見つける用のものだから……。」
「決してまだ発売できるものでは……っ。」
糸師凛:
「俺がやる。」
夢主:
「えっ?」
(目を見開いて凛を見る)
「いやいや、それ、多分バグだらけだし、プレイできる状態じゃないよ?」
「それに……バグチェックが目的だから、私と修正作業をしてもらわなきゃいけないし……。」
「糸師くんも困るよね?こんなゲロ女と関わるの嫌でしょ?ね?」
夢主(心の声):
「こんな無理難題押し付けてくる大怪獣と作業なんて絶対ムリムリムリ!!」
「絶対に胃が死ぬ……。いや、もうちょっとで物理的に捻り切れる……!!」
「……断固として阻止せねばっっ!!」
凛:
「俺がやる。」
(少し間を置いてから、低い声で)
「……お前、俺に借りがある状態だよな?」
「意見できる立場か?」
夢主:
「……いいえ……申し訳ございません……。」
(しおしおと縮こまる夢主)
糸師凛:
「じゃあ、これは俺が持っていく。」
(ソフトを持って立ち去ろうとする凛)
夢主:
「あっ、ちょっと待ってぇぇぇ!!」
(慌てて凛を引き止める)
「連絡先っ!連絡先教えて!」
「……嫌かもしれないけど、テストプレイしてもらうなら絶対必要だから……!」
糸師凛:
(ちらりと夢主を見て)
「……ああ。」
「ケータイ貸せ。」
(夢主、震える手でスマホを差し出す)
糸師凛:
(無言でスマホを受け取り、QRコードをスキャン)
(そして、夢主にスマホを軽く投げ返す)
夢主:
「わわっ……っと。」
(スマホをキャッチし、凛を見上げる)
「……あ、ありがとう。」
(少し呆然とする夢主)
夢主(心の声):
「意外とすんなり教えてくれたな……。」
「大怪獣様、基本嫌なやつだけど、私のゲームだけは本当に好きなんだな……。」
「……いやいや、そんなことに感心してる場合じゃない!これから始まる地獄の修正作業に震えるべき……!」
(凛が立ち去る背中をぼんやりと見送る)
夢主:
(ぽつりと)
「……はぁ……胃が痛い……。」
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