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砂を孕んだ風が、頬をかすめる。
真っ青で、不安になる程の広い空が私を見下ろす。
ー旗が降りるー
私は先にある砂場を睨み、やがて声援の音が曇り始める。
胸がヒリヒリするほどの熱い興奮を隠した肌に、汗を冷ます澄んだ空気がなぞる。
17歩だ。
17歩の助走と、跳びが、私を証明する。
たったこの一瞬に、一生を賭ける勢いで。
息を止める。
ー踏み出す。
不安を、緊張を置き去りにして、冷たい風と刺し違える。
足の爪先が弾いた衝撃が音となり、乾いた
タータンに吸収される。地を蹴るたび筋肉が揺れ動き、鼓動がうねる。
そして、その身を宙へと投げる。
肌、皮、肉、骨に染み込んだ情熱の咆哮が体内を包み、一滴の油が水に弾かれるように。
世界に背を向けられても、私は叫ぶ。
この若さと、心と、青春をもって、世界の骨を断つ。
ー225番、5m20cmー
高校2年生、七瀬。
ーーーこれから、全天才に告ぐーーー