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ルツルです。ルが病んでる。良い方は↓
チャイムが鳴り、下校の時間を知らせた。いつもは騒々しい下駄箱前を通り、夕日の差す空の下へ出る。いつも通り校門へ歩みを進めていた。その時だった。どうしてか上が気になって、先程出てきた校舎の屋上を見上げる。そこにあったのは紫色だった。ただいるのならまだしも、安全用のフェンスの外側へ出て、いまにも飛び降りそうに見えた。嫌な予感がして、即座に校舎内に戻り、階段を駆け上がっていく。
ガシャン、と息絶え絶えになりながらも乱暴に屋上の開閉扉を押し開けた。そこにはまだ紫色がいた。最悪なことに、思った通りの相手だった。
「類…?」
「おや、司くん。そんなに急いでどうしたんだい?」
危ない状況にさらされているとは思わないほど、いつも通りの声色だった。
「ど、どうしたって…お前が、類が危険な場所にいるのが見えたから……」
早く戻ってこい、と彼に声をかけてみる。でも、一切こちらを振り向かず、微動だにしなかった。
「…そうかい。危険な場所…ねぇ、僕にとっては救済の場所、だけれど?」
口を開けば、なんてことを。
「なあ、類。まだ戻ってこれるだろう、だから、早く」
「……君は何も分かってない…!」
突然、キン…と耳に声が響いた。なんだ、と顔をあげれば怒りに肩を震わせた彼がいた。
「君には僕のこと何も分かってない、わかって欲しくない!こんな…汚くて水ぼらしい感情。君には見せられないよ、君は綺麗なままが1番だから」
「違う、違うんだ。類、オレはお前を知りたくて」
「知らなくていいって言ってるだろう!!」
ガシャン、と音を立てて彼は勢いよく立ち上がる。そのはずみに彼が落ちそうになって息を飲んだ。
何故そんなに拒絶されるのか分からない、なにかしたのか?と、思考を回しながら頭を抱える。そんなとき鼻で笑うような音が聞こえた。
「……?」
「…哀れだ。もういいじゃないか。僕はもう降りる、と決めた。それだけは覆らないんだよ司くん。もう諦めたらどうだい?」
深いため息をつき、片足立ちで彼はフェンスに寄りかかる。
「…君の前で逝けたならいいか。」
ぶつぶつと彼は呟いた。その瞬間とてつもない絶望感に駆られて、自分自身もフェンスの外側へ歩みを進める。怖い、嫌だ、そんな感情は不思議と感じなかった。ただ1つ。コイツを1人にしてはいけない。そんな使命感があった
「類」
「……司くん、最期まで見てくれるんだ。ありがとう」
目の前の彼はにっこりと笑う。まるでプレゼントを渡されたかのような無邪気で幸せに満ちた顔だった。
「…オレも連れて行ってくれ。」
そんな事を言えば、彼は目を見開く。
「どうして…?君は、君はいいんだ。ね、寧々達と夢を目指せば」
「お前が居なきゃ意味なんか無い」
「…いない方が君たちは前に進める。それが僕にはわかっているから、司くん。やめて」
「お前とじゃなきゃ夢は目指せない、お前が居なきゃ。…夢は達成できない」
「できる、できるから。信じて、今まで上手くいってたじゃないか」
確かに、それはそうだった。今まで類の助言で何度助かったことか。でも、今は違かった。
「オレの夢は!えむと、寧々と、お前と!スターを目指すことだ、笑顔を届けることだ!!お前が居なきゃそれは出来ないだろう!」
「…僕よりずっと凄い演出家だっている。それは僕じゃなくてもいいだろう?」
「だから……オレはお前の演出でショーをしたいんだ!!!!わからないか?!わかってくれ、類。……戻ろう、2人を心配させているだろうから」
ここは寒いだろう、と最後に零せば彼はぐ、と唇を噛む。
もう止められなくても良かった。お前が休みたいのなら休ませてやる。でも、決して1人では逝かせやしない。これだけは譲りたくない。そんな己の独占欲に苦笑が漏れる。この感情は伝えない方がいいのだろうな。知っていた。
「…君はいつも僕の邪魔をするね。」
あぁ、それがオレらしさだからな
「いつもうざったくて、そこだけが嫌いだった」
嫌われていたのは気付かなかった。心外だ、親切心なのに。
「…でも、僕はそれに救われてた。」
「……よかった、お前を救うことが出来ていたんだな。とても嬉しいぞ!流石オレ!!…だろ?」
頷いてくれ、お願いだ。まだお前に沢山のことを伝えられていないだろう。感謝も、謝罪も。
「…全く、君ってやつは。仕方ないな、今はやめといてあげるよ」
本当か!と声を出し、類の手を握る。その手が思っていたよりも暖かくてにっこりと笑を零した。
「じゃあ……次は、オレの夢を叶えてから、だな!」
「ふふ…我儘な司くん。………次の機会まで暇だから付き合ってあげるよ」
にこっと目の前の彼は笑い、首をかしげる。そんな類の手を引いてフェンスの内側へ引っ張り急いで階段を駆け下りていく。
次、までは遠い道のりだ。それにソコに着いてから悲劇があるのも分かっている。だが、そこまで全力で走り抜けるのがオレ達だ。足は停めず、前を向いて歩く。この歩みはまだ第一歩。これからが夢の始まりだから。