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🟦と🏺
「つぼーらぁ?」
「違う!オレは何もしてないぜ!!」
壁に背をつけ座り込むつぼ浦の顔の横には青井の足。
いわゆる足ドンの状態だ。
事の発端は何だったか。
「無闇矢鱈と爆発物を放っちゃ行けないのは分かるよね?」
「オレの前を通っちまった運の悪さを呪うんだなぁ!」
「悪いことの自覚はあるんじゃん。」
「ッぐ……。」
キャップとつぼ浦のじゃれ合いにたまたま通りがかった青井。
運悪くつぼ浦の放ったロケランに巻き込まれてしまったのだ。
キャップの方は先に正座させ叱りつけた。
その隙に逃げ出したつぼ浦を追いかけ見事にテーザーが命中、今に至る。
「はぁ…、ほんでここどこなんだよ…。」
「それはマジでオレも知らねぇっす。」
追加情報として、青井の足ドンの際に2人は見知らぬ廃墟のようなところに飛ばされた。
青井は足を下ろし、ため息をつく。
連勤徹夜のストレスが目に見えるようだ。
「…アオセン、これ市長のいたずらっすかね。」
「さあね。でもT(遠くに)P(ぽーん)したのは間違いなさそ。」
青井の差し出す手を取り立ち上がる。
流石に警察官、切り替えは早かった。
「無事に帰ったら説教の続きするからね。」
「死亡フラグっすかそれ。」
廃墟の探索、と言っても動けるのは1部屋しかなさそうだ。
一歩踏み出すごとに何年分か分からない埃が舞う。
「汚ぇ……。アンタはヘルメットがあっていいよな、……っくしょん!」
「いや、ヘルメットはマスクにはならない……っはくしょーーーん!!!」「www」
部屋中に響き渡る豪快なくしゃみ。
少し前まではエコーがかかっていたのだが…はて、何の話だ?
「こっちのドアはダメそう、錆びてら。そっちはどう?」
「こっちもダメだ、ドアノブ捻ったら取れたぜ。」
「嘘でしょww」
イカつい見た目の男がもげたドアノブを掲げているのは中々にシュールである。
廃墟は至る所が錆や腐食に塗れていた。
「……最悪ぶっ壊すか?」
「…ガチのマジで最終手段にしよう。ここじゃ巻き込まれるし、救急隊が来れる場所とも限らない。」
「そうすね。」
ロケランを取り出すつぼ浦をすかさず宥める。
後に控える説教の時間を長引かせるのは青井としても避けたかった。
「つぼ浦今日バット持ってないの?」
「チクショウ、キャップに没収されました。」
「あーね、蹴破るとか出来ない?」
「この街ジムないんで無理です。」
「……なんか頭痛いな。」
一瞬目の前が近未来化した気がするが…まあいい。
狭い部屋をぐるぐるうろうろ、しかし出る方法は浮かばない。
「…ん?」
「どしたー」
「や、これって……。」
それは空っぽの棚と壁との間に立てかけてあった。
蜘蛛の巣が絡み、あまり触れたくはないような見た目をした…
「「刀?」」
「何でこんなとこに……?」
「……抜いてみます?」
「つぼ浦、任せた」
「……チクショウ。」
青井がハンズアップの姿勢で拒否すれば、渋々刀の持ち方を変える。
鞘も柄も普段から素手のつぼ浦には少し気の毒なくらい汚れている。
「……ぐっ……!…ふんッ!……ぐぎぎぎ…………あ゛ぁ!抜けねぇ!」
ずるりとつぼ浦の手が柄を滑り、装飾の糸が少しほつれる。
赤くなってしまった手のひらをふーふーと冷ましながら小さく舌打ちした。
「貸してつぼ浦。」
刀を受け取り、同じように左手で鞘を、右手で柄を掴む。
ぐっと力を込めれば刀はキシキシ軋んだ音を立てる。
「ふん゛…………っぅおりゃぁぁ!!」
「あ゛ぁぁ!!?」
バキッ。
バツン。
ヘルメットの下に汗が滲んだ瞬間、鞘が粉々に弾け飛んだ。中で刃が折れたらしい。
自由の身になった刀身は空を切り裂き、その軌道は光って弧を描く。
スローモーションを見ているようだ。
嫌に冷静な頭がつぼ浦にそう告げた。
写真の明るさを調節したように光は膨張し、2人を包み込んだ。
「…………あ゛?」
微睡みから覚めるように目を開けば、そこは本署屋上。
嫌な夢を見ていた気がする。
痛むこめかみを押さえて周りを見回すと、ヘリポートに見慣れた青鬼が倒れている。
「アオセンッ!!」
ヘルメットのせいで呼吸してるかどうか分かんねえじゃねーか。
控えめに悪態をつきながら肩を前後に揺さぶり声をかける。
「アオセン?あおせーん!」
「……ぅん……?」
くぐもった小さな声が聞こえ、ほっと胸を撫で下ろす。
「どーやら帰れたみたいっすよ。」
「…ほんとだ。」
階下からは署員の笑い声や怒鳴り声が聞こえる。
サイレンの音もするが、それはまあいつも通りなので。
「なんだったんだろーね?」
「さあな。また市長のお遊びなんじゃないすか?」
「あ、2人ともいた。」
屋上の扉を開け、やってきたのはミンドリー。
「無線にも反応無いし、退勤してないのにシグナルが無くてさ、心配したよ。」
「あ~ごめんね?変なとこに飛ばされてたんだよね。」
「なるほど?」
「…つぼーらぁ?w」
「ギクぅ!?」
「逃げられると思うなよぉ~!」
青井とミンドリーの会話に乗じて逃げ出そうとするつぼ浦。
を、追いかける青井。
バチ、と閃光が走り、ミンドリーの隣に男が降り立つ。
「無事に戻ったようだな。」
「おわ、市長。」
「今回の歪みはまあ、異空間の生成、と言ったところか。あ、つぼ浦が捕まった。」
「今後はこのようなことが起きないよう務める。特にあんな…事故物件まがいの部屋に飛ばされてしまうなんて、原因をこちらとしても調査中だ。」
「事故物件?」
「ああ。これは2人が飛ばされた部屋にあった刀だ。」
市長が空を掴めば手の中には折れた刀。
「あの部屋はホラー要素としてデモ版を作ったまま消すのを忘れていたヤツなんだ。設定上、家主はこの刀で切られて死んでいる。」
「あらぁ。」
口元に手を当て乙女のような仕草をするミンドリー。
今日の市長は些かメタい発言が多い。
「ま、家主の悪霊のプログラムが作動しなくて良かったよ。じゃあな。」
「あ、行っちゃった。」
再び閃光が走り、塵一つも残さずに市長は消えてしまった。
「「うわあぁぁああぁぁ!!!」」
響く轟音にびくりと肩を震わせた。
……本署入口から聞こえた悲鳴。プログラムは無事に実行されてしまったらしい。
遅くなりましたー!!
っあ゛ー!!難産!オチが浮かばなかった!
究極のやおい!あんまり面白くなんなかったー!!
なるべく説明は本編中でしたかったけど、しかたなく脱出後に市長にお願いしたよ…。
リクエストの方もあげます!ミテネ