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「その長老、会えないかい?」
類はネネにそう聞いた
「えっ…と、たぶん、会えると思う」
「本当かい!?」
類は目を輝かせていった
「うん、明日、またあの海に行こう。きっと来てくれるから」
さらさらとした砂と真夏にしては涼しい風、波の音が心地よく響いている
ネネが人魚とバレないため、白いTシャツにロングスカートを履かせ、車椅子に座らせた。ネネの希望で、麦わら帽子をかぶっている。
ネネが言うには、人魚が長時間太陽の元にさらされても干からびることはないらしい
「この辺りでいいかい?」
ネネの顔を覗き込み、尋ねた
「うん、大丈夫。洋服濡れちゃうから、ここに置いておくね」
ネネは身につけていたものを一式車椅子に乗せ、海に入った
ネネはふぅ、と息を吐き、小さく吸った
「♪〜〜〜〜」
恋でもしたかのような高揚感と、心に響く美しい歌声は、僕が初めて会った時に思ったことと全く同じだ
ネネは海へ潜り、なにか口を動かしていた
暫くネネが動かずに長老とやらを待っていると、海から魚影のようなものが見えた
ネネはその御影と何かを話し、しばらくすると海面へと上がってきた
「類、この人がわたしが言ってた長老だよ」
隣にいたのは、金髪の同い年ほどの男性だった
「…え?」
「おお!お前がニンゲンか!見るのは久しいな!!」
「ね、ネネ?僕は長老と聞いていたのだけど…」
「長老だよ?」
何を言っているかわからないというようなリアクションを取られてしまい、どうしていいか分からなくなってしまった
「ネネ、ここはオレが説明する」
そう言った長老?は僕の目を見ていった
「オレはツカサだ!よろしくな!類、と言ったか?」
「えぇ、はい」
「ニンゲンは確か、歳を重ねるごとに身体が弱体化するんだよな。だが、オレたちはそうではない。お前たちの言う大体15〜20歳くらいの体の機能を維持し続ける生き物だ!寿命があるから死はあるが、老化はない」
衝撃の事実に何も言えなかった
老いというのは、基本的にどんな生き物にもある概念だ
老いない生物は、微生物や植物の一部であって、このような動物に分類される生き物の身体機能ではありえないはずだ
それをないと言われても、理解ができない
「ハハハ、信じられないのも当然だ。大抵の生き物は老いるからな!」
豪快に笑う彼を見て、もう一度、やはり長老だとは思えないと感じた
「やはり、ニンゲンは面白いな!見た目はほとんど同じだが、生物としては全く違う!!…あいつを、思い出すな」
「…?なにか言いましたか?」
「ん?あぁ、いや。なんでもない!それより、そんな堅苦しい話し方はやめてくれ。オレのことはツカサでいい。敬語も使うな、類!」
「フフ、ありがとう、ツカサくん」
「長老、類は人魚について聞きたいらしいの。いい?」
「あぁ!オレが答えられる範囲ならな!」
ツカサの話をまとめるとこうだ
人魚は、ある日突然、異形児として生まれたらしい。それを気味悪がった両親は海へ人魚を捨てた。それがツカサだと言う
ただ、他の人魚たちのことは何も知らないらしい
海には気づいたら仲間がいたらしく、それからは人魚の間で交配し個体数が増えたらしい
人間、もしくは魚と恋に落ちる個体も少なくはないと言う話もとても興味深かった
まだ、知りたいことはたくさんある
ただ、それを叶えるためには
人魚の解体が必要だ