特に言う事なし!!
「トランスヴェストフィリア(服装倒錯)」
を書く!性愛ははいってない!
よくわかんないお話!
『レース越しの僕ら』
「なあ、ほとけ。今日も、例のアレ、見せてくれへん?」
放課後の静かな教室で、いふの声が響いた。
「……またそれか。ほんとにいふくんは、物好きだよ」
僕はため息をつき
ながらも、鞄の奥から小さな紙袋を取り出した。中には、丁寧に畳まれたブラウスと、淡い紫色のフレアスカート。昨日の夜、鏡の前で何度も合わせた服だった。
「うわぁ、めっちゃ綺麗やん……これ、お前が選んだんか?」
「うん。下北沢の古着屋でね。柄が繊細で、ちょっとクラシックな感じが気に入った」
いふは目を細めて、布地を指先で撫でる。まるで宝石でも触るみたいに。
「……俺さ、最初にお前が女装してんの見たとき、正直ド肝抜かれたで」
「そりゃそうだよね。君、あの日たまたま家に来たんだっけ」
「ああ。ドア開けたら、白いワンピースで紅茶淹れてる男が立っててな。夢かと思たわ」
僕は思わず吹き出した。
「でも、笑わなかったね。君だけが」
「笑えるかいな。むしろ、似合ってて腹立ったっちゅう話や」
いふは笑いながらも、少し目を逸らした。彼の表情には、どこか複雑なものがあった。
僕が女装を始めたのは中学の終わりごろだった。きっかけは単純な興味だったけれど、服に袖を通したときの、肌に触れるレースの感覚と、鏡の中で笑う“自分じゃない誰か”に出会ったとき、心が震えた。
その夜から、僕は「僕」でありながら、「誰か」でもいられる時間を密かに生きるようになった。
「俺な、今日ちょっと聞きたいことあって来てん」
「なに?」
「お前、その……その格好してるときって、どんな気持ちなん?」
僕はしばらく黙って考えた。簡単なようで、ずっと答えを見つけきれなかった問い。
「うーん……自由、かな。何者でもなくていい気がする。男でも女でもない。ただ、美しいって思える自分でいられる。それが嬉しいんだ」
「……なるほどな」
いふはしばらく無言で、指先でスカートの裾をいじっていた。彼の指には、小さな傷跡がいくつもあって、僕とはまったく違う手だった。
「なあ、ほとけ」
「うん?」
「俺も、一回だけ、そういう服……着てみたことある」
「……え?」
「兄貴の嫁さんの服、こっそりタンスから出してや。誰にも見られてへんけど、ドキドキしたわ。……意味わからんやろ?」
「そんなことないよ」
僕はすぐに答えた。驚いたけれど、不思議と嬉しかった。
「君がそれを話してくれたことが、何より大事だと思う」
いふは照れたように頭を掻いた。
「ほんまはな、俺、自分でもよく分かってへんねん。女になりたいわけちゃう。でも、たまにスカート履いたら、心が落ち着くっていうか……なんかホッとするんや」
「それって、すごく大事な感覚だよ」
「でも、世間的には変やろ? “男らしない”とか、“気持ち悪い”とか、言われそうやし」
「そう言う人もいるかもしれない。でも、だからって、自分の感覚を否定する必要はないと思う。君が感じたこと、それは真実だよ」
いふは窓の外を見た。日が傾いて、教室が橙色に染まっていた。
「お前、強いな」
「強くなんてないよ。怖いよ、ずっと。でも……この服が、僕を守ってくれる」
僕は紙袋から服をそっと出し、机の上に並べた。
「もしよかったら、今日、一緒に着てみる?」
「……俺が?」
「うん。誰もいないし、鍵も閉める。君が嫌じゃなかったら」
いふは驚いた顔をしていた。でも次第にその顔が、どこか懐かしそうな笑みに変わっていく。
「……ほな、ちょっとだけな。誰にも言うなよ?」
「約束するよ。君は君のままで、いいんだ」
僕はそう言って、カーテンを閉めた。教室に灯った小さな光の中で、僕たちはただ静かに、レース越しのもうひとつの自分に出会っていた。
コメント
11件
??? カタカナ難しいですな... 初めて聞いた言葉だぁ...トランスウェストフィリア............
いふくんッ_!世間の目なんか気にせず自分の"らしさ"とか"個性"じゃんじゃん出してこうよッ_!少なくともみおはどんないふくんも大好きだよッ_! はい今回も神作をありがとうございますッ_!なんかすっごい感動しましたッ_!