テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「…マジ……浮気…?誰だよ?」
「なにっ?何言ってるの?どうしたらそんな発想になるの?」
「千愛が生まれた時点で父親と母親だろ?」
「それはそうだけど……妻と夫には違いないもの」
「それが名前を呼ぶこととイコール?気持ち悪い発想だな」
「気持ち悪い…って……」
「変に色気づいたのかと思うくらいには気持ち悪い」
そっと離れた夫に
「……疑っているの?」
と聞くと
「いや、違うならいい。お前が浮気なんて、出来るはずもないからな。浮気の出来る主婦って、やっぱりそれなりに色っぽいものだろうし。じゃないと誘えないもんな…お前がここで今さら無理やり色気づかなくても月一くらいはちゃんと抱いてやるよ」
と、自分の布団へ戻ってしまった。
私は視線も、手も、どこへ向ければいいのか分からなくなる。
「…シ…なくて…いいの…?」
「ん…萎えた…色気もないのに中途半端なことしやがって」
吐き捨てるように言った夫が、くるっと背中を向けたことに失望を感じる。
色気、色気って何?
名前を呼んだだけでしょ?
……私に名前を呼ばれると萎える…って……
これまでに感じたことのないほどの落ち込み具合を自覚して、私は布団を頭まで被った。
レス気味なのを解消出来るかもしれない、と夫の名前を呼んだことが淡い期待に終わったどころか、浮気を疑われたなんて…世の中の結婚 14 年の夫婦はこれが普通なの…?
眠れないまま迎えた翌朝。
夫がどんな顔で起きてくるのかと少し緊張したけれど
「おはよ…チーズのいい匂いだな、千愛」
といつもと全く変わらない口調で起きてきた。
「おはよう…」
昨夜のことはなかったことにされているのか…
そのほうが私にとって都合がいいのか…
そんなことを考えているのも私だけのようで、千愛と並んで座った夫はコーヒーにミルクを入れながら
「千愛、今日も上手にピンが留められたんだな。サラダにマヨネーズかドレッシング、どっちにする?」
いつも通り、千愛と朝食だけを考えているようだった。