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柘榴とAI

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#没入感フィクション
柘榴とAI

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夏休み後半。
告知通り始まった、賞金首イベント。
賞金首10人はそれぞれシフトが組まれており、少なくとも一日あたり3人~5人が活動。
一般プレイヤーの人達は、それぞれで試合を続け、賞金首への挑戦権を勝ち取ってから申し込んで来る。
とはいえ……やはり、全体数が多い訳で。
私達賞金首には、休んでいる暇などほとんどなかった。
『夢月! 一戦一戦の制限時間がかなり短いからな! 最短で攻めるぞ!』
「んっ! 了解!」
兄の指示に従いながら、昼間の時間に設定されているフィールドの中を全力疾走。
今回の試合、なんと賞金首相手の戦闘時間は15分。
その分戦闘エリアはかなり狭く設定されているのだが、内容はかなり分かりやすい。
とにかく道幅が広かったり、見通しが良いフィールドは一般市民のNPCが多く。
逆に狭苦しい様なステージでは、見通しは悪いがNPCが少ない。
凄く両極端な場所が幾つも用意され、各賞金首にとって有利なステージが割り当てられている。
この中で、挑戦者に選ばせるというシステム。
私に用意された場所に関しては、練習の時に全て頭に叩き込んだと言っても良いんだが……やはり、短くとも連戦となると集中力を欠いて来る訳で。
『夢月、今だ! 飛び込め!』
「ふっ!」
人ごみに紛れて早足で移動していたが、一気に駆け出し反対車線に飛び出した。
お兄ちゃんの指示があるからこそ、行き交っている車の間を全力で走り抜ける事にあまり恐怖は無い。
とにかく全力で走れば、本当に完璧なタイミングで車の間をすり抜けられる……のだが。
疲れが出て来たのか、結構ギリギリになってしまい、車から派手なクラクションを鳴らされてブレーキを踏ませてしまった。
これにより、攻め込もうとしていたプレイヤーの一人が此方に視線を向けた。
「居た! シック――」
「しっ!」
バッグから銃を引っ張り出そうとした最後尾の相手に対して飛び込み、相手の口に掌を叩き込む勢いで押さえながら。
テンに貰ったカランビットナイフを首筋に滑らせる。
ズパッ! と綺麗に裂傷を作り、出血するエフェクトが発生した瞬間。
周囲のNPCから悲鳴が上がり、プレイヤー達の周りに大混乱が発生。
すぐさまキルした相手から離れ、人々の群れの中へと溶け込みつつ。
「一人やられた! 周囲を――」
短期決戦型の試合だからこそ、NPCの通報やポリスイベントを恐れる事無く。
挑戦者達が武器を抜き始めるが、逃げ回る人達のせいで私が見つけられない御様子。
だからこそ大胆に近付き、もう一人の首にナイフを突き立ててから手を放し。
此方もハンドガンを抜いた。
残り、三人。
1対5の戦闘だからこそ、賞金首に関しては時間制限全てを使い切る事は出来ない。
二人以上残してしまえば、試合としては相手の勝ちになってしまうから。
賞金首本人をキルしない限り、“美味しい報酬”は貰えないそうだが。
それでも、私達に課せられているのは……“全て殲滅せよ”という命令な訳で。
「ふっ!」
「マジかよ! 近っ――」
声を上げた人の懐に飛び込んでから、顎に銃口を突きつけてそのまま発砲。
相手の腰に付いていたスモークグレネードのピンを抜きつつ、もう一人に死体を押し付け転倒させる。
フリーになってしまった一人は、慌てた様子で此方にライフルを向けて来るが。
「遅いっ!」
至近距離なら、そんな物よりハンドガンとナイフの方が速い。
相手の銃本体をガシッと掴みながら引き寄せ、肘を立てて敵の顔面にぶつける。
後方へと吹っ飛ぶ敵の勢いを殺さない為に、掴んでいたライフルからパッと手を離してみると。
その人も派手に転倒してから、此方から視線を外していた。
であれば。
「なんっ!? 嘘だろ!?」
先程ピンだけ抜いたスモークグレネードから煙が立ち上り、伏せている相手二人の視界は相当悪い筈。
その為、仲間の死体を押し付けられてただ転倒しているだけの相手に歩み寄ってから。
額に銃を押し付けて一発、その後負傷した最後の一人へと近付き。
「ハ、ハハ……強っよ……」
「私の勝ちだ」
呆れた様な笑い声を上げているプレイヤーにも、二発の銃弾を叩き込んだ。
これで、5人キル。
よし、何とかなった。
『お疲れ、夢月。連戦だからな、10分休憩しよう。一回ログアウトして、水分補給。トイレにも行っておけよ?』
「了解、少し離れるね」
WINの文字と共に表示されるリザルトを全てスキップさせながら、ササッとログアウトするのであった。
分かってる、賞金首のイベントはとにかく忙しいって。
分かっては……いたんだけど。
今回のイベント、本当に一日掛かりだよ! これは流石に疲れるよ!
凡ミスして負けちゃいそうで、本当に怖いんですけど!
黒沢君とも色々あって、もうどうしたら良いのー! って心境だったんだけど。
それを気にしている暇もなく、とんでもなく忙しいイベントが始まってしまったと言って良いのだろう。
た、大変だぁ……。
◆
「フフンッ、待ってたよ~ん」
「ククッ! あえて姿を見せるとは……舐められたものだな! 賞金首の七番目、seven! 我らナンバーズキラー、今宵の獲物は貴様だとその身で味わえ!」
俺達が最初に勝負を挑んだ相手、“seven”。
美しい見た目と、スタイリッシュなアクション。
そして女性プレイヤーの賞金首という事もあり、プレイヤー達から強い人気を集める一人。
そんな相手が、狭い通路の正面で俺達を待っていた。
相対するのは、二丁拳銃を構える出っ歯。
その後ろにグレーが控え、俺は隠れながら全体を監視している状態。
しかしながら……いつもとは、少し距離が違う。
「そんじゃ、行くよ!」
「来い! 勝負だ!」
相手が動き始めると同時に、追走する出っ歯。
やはり、速い。
そして大袈裟過ぎる程に動いている癖に、隙が無いのが彼女。
本当に凄い、コレがプロってヤツなのかと思わせてくれる。
けど……負けるつもりは、微塵もない。
実績を積むと言う意味では、最初に挑戦する相手としてはハードルが高すぎるのは分かっているが。
あえてソレをやって、“目立つ”。
更に言うのなら……上手く目立てた場合、相手に対策されると一番厄介に思えるのがseven。
だからこそ、真っ先に潰そうと決めたのだ。
「おぉ、やるぅ! ちゃんと付いてくるじゃん」
「フッ、この程度……どうやら舐めすぎたようだなぁぁぁ! セブゥゥン!」
激しく動き回りつつ乱射する彼女に対し、必死で付いて行っている出っ歯だったが……やはり、相手の方が上。
直線的な動きを得意とする彼とは違い、sevenは滑らかな動きで相手の動きを誘導している。
フェイントも混ぜ込みながら、自らの戦いやすい位置にスプリンターを誘っているのが分かった。
そしてソレは……手を出さず後ろから“見ている”俺にも、良く分かる訳で。
「グレー、次に出っ歯がダッシュした瞬間に左側の壁」
「了解」
いつもなら無線越しに聞いている声が、今では正面から聞えて来ている。
こんな距離、本来スナイパーの居る位置じゃないでしょって感じではあるんだけど……。
「オラ! 今だ!」
「ちょい!? 嘘、マジかい!」
スプリンターが駆け出した瞬間、やはりsevenは誘導する為に地面を滑る様に動き。
グレーに指示した辺りへと移動。
このタイミングで重装備の一斉掃射が始まり、彼女は慌てて身を隠してから……壁を蹴って、“跳んだ”。
――それを、待ってました。
「ふっ!」
「んなっ!?」
相手が空中に上がった瞬間物陰から飛び出し、此方が構えたのは……セミオートショットガン。
これなら、適当に撃っても当たる可能性が高いのと。
なにより、いくら相手の動きが早くとも。
地面に触れていない時は、回避行動が“出来ない”。
「っ!」
両手を正面に回し、完全な防御体勢を取ったseven。
防弾スーツで散弾を防ぐが、完全にバランスを崩したのが分かった。
このタイミングでショットガンを投げ捨て、背負っていたアンチマテリアルライフルを構えた。
視界を捨てた彼女なら、間違いなく反応が遅れる筈。
あれだけ“動ける”sevenだったとしても、例え環境を全て記憶していたとしても。
エラーの後は、絶対に“隙”が出来る。
そしてそれは、着地のタイミングで一番現れると予想出来るので。
「秘儀、ジャックポット……だっけ? 出っ歯流だと」
一発だけ放った銃弾が、彼女の脚を捉えた。
しかしその一発は、防弾ガラスすら貫く対物用。
そんなモノを、防弾スーツ程度で受け止められる訳もなく。
彼女の片足は見事に千切れて、後方に飛んで行った。
「う、嘘っしょ!? この距離でそんなの使う!?」
「クハハハッ! ウチのスナイパーは、“ステルス”を捨てたぞ! どうだ、七番目……怖いか? ナンバーズキラーが」
倒れ込んだ彼女の武器を蹴り払った出っ歯が、相手に向かって銃口を突きつけ。
「女性を撃つのは、俺の流儀に反する。しかし、勝たなければいけないのでな。すまぬ、許せ……せめて俺も、共に逝こう」
「ハ、ハハー……かっけぇじゃん」
「だろう? ホレるでないぞ、火傷ではすまんからな」
とか何とか、良く分からない言葉を呟きながら手榴弾のピンを抜き。
賞金首sevenを押さえ込み……もとい、抱きかかえるようにして。
二人の間にあった手榴弾が爆破。
見事なまでの道連れ自爆。
これにより、俺達の視界にWINの文字が表示された。
まずは、一人目。
兄貴から、今回はスナイパーに拘るなとは言われたけど……流石にソレは、俺には無理だった。
だからこそ、その特技を生かしながら他の物を織り交ぜる工夫に切り替えた。
その結果が、この中途半端過ぎる距離。
中距離よりも遠いが、遠距離とも言い難い微妙な遠さ。
しかもメイン武器二つ持ちって言う、慣れている人からすれば笑われそうな行動だが。
この距離は、最初は誰でも経験するものだと気づいたんだ。
他のゲームなら、システムサポートによって遠距離射撃も容易。
だがガンサバでは全てにおいて実力が求められるからこそ、距離が中途半端になる。
当たらなければ“つまらない”からこそ、ほとんどの人が中距離武器に切り替えるのだが……こういう使い方なら、強力な遠距離武器が生きて来る。
対物ライフルを、完全に追撃の為の追加装備へと転換させた使い方。
なんだそりゃって言われそうだけど、でも……こんなおかしな使い方をして、この微妙な距離を得意とする賞金首は。
今のところ、“一人もいない”のだ。
だから、これで“目立つ”。
兄貴が“見つからない”スナイパーだからこそ強いのなら。
俺はあえて姿を晒し、“見える所で強い”スナイパーを目指す。
「次、行くよ。またポイント稼ぎから始めないと」
「了解。意外な程あっさり行ったけど……時間が経てば、絶対対処されるな」
「そうだね、何より俺が接近されたら終わり……に見えるからこそ、色々と準備した訳だけど」
「ハハッ、本気のクロはおっかねー」
などとグレーと話しながらも、ササッと賞金首ステージから退場するのであった。
さぁ、次だ。
このイベント中に……賞金首を、全員狩る。
彼等の様に一人で特別にはなれないから、俺達はチームで特別を勝ち取ってやる。
まずは運営に見てもらわないと、何も始まらないのだから。
コメント
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キャーーー!167話めっちゃ熱かった!!😭💕 まず夢月ちゃんの5人キルの連戦シーン、ナイフとハンドガンの立ち回りが超スタイリッシュで震えた…!お兄ちゃんの指示が的確だからこそ一歩間違えたらやばい緊張感が伝わってきて、リアルに息止めて読んじゃったよ…🥺 そして後半のseven戦!まさか対物ライフル+姿晒すスナイパー作戦で来るとは思わなくて「えっ!?」って声出た(笑)あの距離感の裏読みとかめちゃくちゃ興奮したし、手榴弾道連れで決める出っ歯さんもカッコよすぎん??🔥 クロくん、「見える場所で強いスナイパー」になるって決意したのがめっちゃ響いた。次の狩りも絶対見届けるからね!!✨