テラーノベル
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『シロちゃぁぁぁん……私を慰めてぇ……今日何回か負けちゃったぁぁぁ』
「いやいやいや、あれだけ連戦して数回だけだったら充分に凄すぎると思いますけども」
『シックス無敗だった癖にー!』
「なんかすみません!」
その夜、結構な脱力感を覚えつつ家の事を済ませて部屋に戻って来てみると。
ナナさんから、えらく疲れた声で通話が掛かって来た。
やっぱり、疲れるよね。
一日中って程にやっている訳だし、最後の方とか私も動きが雑になっていたのが分かる。
それでも勝てたのは、プレイヤー側だって戦闘が続けば同じように疲弊していたという事。
お互いに消耗した状態だからこそ何とかなったというのと……やはり、お兄ちゃんのサポートの影響が凄く大きかった。
なるべく私に負担が掛からない様に指示してくれたし、何と言っても一戦一戦が凄く短時間で終わったのだ。
コレによって休憩する時間が僅かでも増えて、私は休む暇が出来た感じだったのだが。
『うそうそ、そっちは気にしてないってば。ていうかやっぱシックスは凄いねぇ、今放送されてた映像見てるけど……テンの所に行ってから、動きに磨きが掛かった感じ。人混みでもステルスキル行くんかい! って、思わずツッコんじゃった』
「あ、あはは……短期決戦なので、結構無茶してるなぁとは自分でも思いますけど。でも教えてもらった通りにやったら、凄く戦いやすいって感じてます。ソレ込みで、お兄ちゃんも指示を出してくれますし」
『うへぇ、進化を続けるねぇ。あ、そうそう、進化と言えば……私の戦闘の録画、見られる? クロさん達のパーティ、かなり攻め方を変えて来てるよ。私達と一緒にやってる時とは、全然攻め方が違う』
お、おぉ?
どうやら今日は、ナナさんの所に殴り込みに行ったらしい。
気になってしまい、通話中に申し訳ないが……公開されている録画映像を開いてみると。
「……え?」
『マジか、って感じだったよ。特にクロさんの位置。前衛ばっかり気にしてたら、瞬殺されちった』
気楽な感じでナナさんは言っているけど……え、うそ。
本当に、あのsevenが接敵後すぐにキルされてる。
彼女の動きに付いて行く出っ歯さんも凄いけど、グレーさんも一切邪魔をしないで必要な時以外撃たない。
そしてクロさんが、中距離より少しだけ遠い位置で潜んでいたかと思えば。
まるでクレー射撃みたいにsevenを撃ち落とし、その後すぐに対物ライフルで欠損を与えるという。
なんだ、これ。
こんな戦い方、彼等三人では見た事が無い。
『マジでビックリしたよ、三人共凄く強くなってる。出っ歯さんはどこまでも私を見て追いかけて来るし、グレーさんは全体を見る癖が付いた。クロさんは……思い切ったなぁって感じが強いよね』
「す、凄いですねコレ……こんな事されたら、私も封殺されちゃいそうなんですけど」
『今から少し警戒しておいた方が良いかもね。皆の今日のリザルト、検索してみな? 一覧からパーティ検索できるでしょ?』
ナナさんから言われた通り、公式ページの中を検索してみると……あった。
更に言うのなら、今日彼等三人が収めた成績にゾッと背筋が冷えた。
「嘘……え、本当に凄い」
『だね。今日参加した4人の賞金首の内、3人を攻略。しかもマックス5人のパーティ規制なのに、トリオでこの成績を叩き出してる』
本日参加した賞金首は、second、3days、seven。
そして私、6keyの4人。
此方には来なかったけど、他の三人を撃破したというスコアを残しているのだ。
だって挑戦権のポイントや、順番待ちを考えると……それこそ、一切敗北無しで初見クリアじゃないと、こんな成績収められない筈だ。
慌てて彼等の戦闘の録画を全てダウンロードしてみると。
「あの……こんなの、私達賞金首と……どこが違うんですか?」
『運営側が企画してた11番目……冗談抜きでこの三人の内の誰かになるかもね。このペースで行けば、間違いなく注目を集めるプレイヤーになるよ』
どうやらsecondは時間いっぱい使うつもりでステルス戦を挑んだ様だが、後衛であるクロさんを狩ろうとした瞬間。
視線を外していた筈の彼は、背後からの接近にいち早く気づき。
振り返りざまに対物ライフルで一発という、驚異的なキルスコア。
終わった後だからこそ分かる事だが、途中まで相手に“上手く行っている”と思わせる様な盤面を、全員で整えていたかの様。
心理戦に強い筈の賞金首を、逆に誘導して誘き出した結果に見えるのだ。
続く3daysに関しては、とにかく出っ歯さんが喰いついて行き、二人でスプリンター勝負かと思いきや。
度々クロさんからの援護が入り、明らかにルートが誘導されている。
その結果、通路に飛び込んだ彼女を待ち構えていたのが……グレーさん。
スリーが姿を見せた瞬間に銃弾の雨を浴びせるという、エリアを使った完全なる誘い込み。
呆気ない。
そう思ってしまう程、本当に簡単に始末しているかのような雰囲気があった。
これではどっちがキラーなのか分からない。
むしろ私達賞金首が、彼等から逃げ回っている様な印象すら覚える程だ。
『見て分かる通り、各賞金首に合わせてちゃんと作戦を立ててる。当たり前って言われるかもしれないけど、“これなら勝てる”って所までちゃんと想像出来てる動きだよ。私の時も、間違いなくそうだった。完全に掌の上で踊らされた感じだったもん』
凄い、凄い凄い凄い。
これは凄すぎるって。
もしも今日私の元へ来ていたら、私もこんな風にあっさり負けちゃったんじゃないかって思えるくらいだ。
それくらいに、強い。
そしてそう感じたのは私だけでは無かった様で、ナナさんから送られて来たURLを開いてみれば。
どうやら、ガンサバのプレイヤー達が集まる掲示板だった様で。
『ナンバーズキラー(笑)のチーム、やるやん』
『もう(笑)付けるの失礼だろ。マジもんのナンバーズキラーだって、アレは流石に』
『俺アイツ等嫌いだわぁ……やっぱチーム戦の時の恨みが消えねぇ』
『オフショットイベントの、エイトの時もそうだな。あのチームのスナイパーのせいで、何人が足止めくらったか』
『気持ちは分かるけど、落ち着け。向こうの方が一枚上手だったって事だよ、あの頃から』
『デスwwwバレットwww』
『それ言ったら“灰色の空”も結構だけどな。若いねぇって感じがする』
『笑ってる内に向こうは結果を出して、お前等どうなのよ。エアプしてるだけじゃダセェの俺等だぞ』
『secondには勝った、けど他は無理。強すぎ』
『むしろウチはsecondに負けたわ。アイツの騙し討ちってか、デコイ作戦にハマるとマジで抜け出せねぇ。てか、今日対戦出来たのその一回だけ。ポイント集まらねぇよぉぉ!』
『俺は全員に勝ったわ、余裕』
『チーム名教えろ、検索してやっから』
『ゴメン、嘘です。6keyに挑んで瞬殺されました』
『乙、シックスは無理や。だって今日アイツ無敗だぞ、本当に人間かよ』
『その6番目以外は、全員に勝ったのがナンバーズキラーだぜ。オイオイオイ、マジで強ぇじゃんよ。ログを見る限り、シックスだけには挑まなかった感じか』
『流石に一日に四人全部は無理だな。一日使って、運良けりゃ三人が限界だろ』
『だな。ポイント稼ぎもかなり瞬殺を繰り返して、それでもギリ四人目に届くかどうか。負けたらあっさり振り出しに戻る~ってな』
『勝っても一からポイント稼ぎだけどな。つっても、三人撃破は普通にすげぇわ。他のチームでこれだけの成績残してる奴いんのか?』
なんだか見ている間もどんどんコメントが進んでいく程、盛り上がっている。
掲示板あるあるなのかもしれないけど、話題があっちにいったりこっちに行ったり。
取り留めのない事も話したりはしているが……この話題の中に、度々黒沢君達のチームの話が混じっている。
これって、物凄い事なんじゃ……。
知り合いでも友達でもない人達から、これだけ周知されてるって。
本当に、さっきナナさんが言ったみたいに。
あの三人の内から“11番目”が生れる可能性だって――
「……ぁ」
『ん? シロちゃんどした?』
もしも私の妄想とか、そういうのじゃないのなら。
黒沢君が言っていた意味が、今理解出来た気がする。
『次に“あっち側”で会った時……“遠慮”は、絶対しないで? 出来れば、“本気”でやって欲しい。ガンサバは、ゲームだから。今度は、謝らないで? 俺は、本気の白川さんの隣に並べるくらい……“凄い奴”になって見せるから』
あの言葉は、“コレ”の為の宣言だったのではないだろうか?
彼が11番目の話を知っているとは思えないけど。
それでも、この“賞金首”という位置を目指すと決めた。
これの大前提、“注目を集めるプレイヤー”になる為に、運営からも目を向けさせる為に。
今回のイベントで、賞金首全員を“狩る”つもりで挑んでいるのではないか?
だとすれば……今日彼が私に挑んでこなかったのは、単純に“見逃された”可能性が高い。
前に彼と対峙した時、私は引き金を引けなかったから。
だからこそ準備時間というか、覚悟を決める時間を私にくれた。
ガンサバは、ゲームだ。
そしてそこで名を上げたいからこそ、“特別”になりたいからこそ。
遠慮はするなって、本気で戦えって。
その上で、自分が勝つと宣言されたのだろうか?
だとしたら……本当に。
「やっぱり、凄いです……黒沢君は」
『シロちゃん?』
「いえ、何でも無いです」
私は本当にたまたま、お兄ちゃんの誘いがあったから。
偶然このポジションを手に入れただけに過ぎないが。
あの人は、自分の実力だけで周囲を納得させるつもりで居るんだ。
それから“隣に並ぶ”……つまり、同じ賞金首として“プロ”になるって宣言。
本当に凄い。
私にはそんな気概はないし、度胸も無い。
けど黒沢君は、こんなにもあっさり……と言ったら違うのだろうけど。
実際に成績として、実績として現実のモノとしている。
彼等の影響で、間違いなく一般のプレイヤー達は彼等の噂を始めている。
“ナンバーズキラー”。
この名前が、冗談でも何でもないって今日一日で証明してみせたのだ。
もうこの時点で……本当に、“凄い人”だ。
此方と比べるまでもない、本気で尊敬できるくらいに、“強い人”だと思うんだ。
「多分皆は、私の所にも来ますから。その時は……“全力”で、戦います」
『お、気合入っちゃった?』
「えぇ、本当に。絶対に……負けません。私だって……“シックス”だって、ちゃんと本気なんだって、証明しないと」
怖いとか、撃てないとか言っている場合じゃない。
それは彼の決意を無下にする行為、彼の覚悟を無駄にする行いだ。
だったら、“本気”になれ。
その状態の“シックス”すら、黒沢君は倒すつもりで居るんだから。
隣に並んでくれるって、言ってくれたんだ。
だったら私だって、ちゃんと胸を張って隣に立てるくらいに、強くならなくちゃ。
そうじゃないと、いつまでも格好悪いままになってしまう。
依存とかそういうのじゃなく、ちゃんと“一緒に居る”為に。
こっちだって、しっかりと向き合う時が来たって事なのだろう。
しるあっと
1,500
柘榴とAI

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#没入感フィクション
柘榴とAI

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コメント
1件
うわぁ……黒沢君、めっちゃ格好いいじゃん……!😭💖 「本気でやってほしい」って言ったのも、今回のリザルト見せつけられたのも、全部シロちゃんの隣に並ぶための覚悟だったんだね。 掲示板で「ナンバーズキラー」が冗談じゃなくなってて、本当に鳥肌立った。 でもそれに応えて「絶対負けない」って決意したシロちゃんの言葉も、すごく好き。 次、二人が本気で向き合う時が待ち遠しいよ。くろぬかさん、今日も最高でした🤍🌙