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ケイシとリーシの死から三年の月日が経った、ケイシ城は鎮まりかえり悲しみを纏った城となっていた、
かつての輝かしい片鱗は微塵も感じられない
リーシを救済するために戦場から城へ戻ったことへの厳しいお咎めはなかった
カンジュに尽くしカンジュを強国にしたケイシへの国王からの手向けの意を込めてだった
ひっそりとした城に唯一希望の光が差す瞬間は8歳になったセイカと3歳になったユイの子供らしい無邪気な声が聞こえてくる時だった、
セイカは同じような歳の子達と駆けっこをしてよく遊んでいる、
その後をまだ赤子っぽさの残るユイが一生懸命についていく
「兄ちゃま、兄ちゃま、まってー、まってー」
セイカは友達との駆けっこに夢中だがユイが転けてギャンギャン泣くと、駆け足を止めユイの元へいく
「怪我したのか?どれ、このくらい大丈夫だ!ほら兄様がおんぶしてやる」
「うん」
「兄ちゃまとぼくがつかまえるぞー」
そんな駆けっこ遊びを見る度に側近達は目頭が熱くなる
ユイは父の顔も母の顔も覚えていない、なに一つ記憶にもない赤子だったから当然だ
ユイにとっては優しい兄セイカが全てだ
そしてセイカもまた本当に優しく良い兄だ
寝る時は一つの布団で寝た、ユイが怖くないように
オネショをいつもするが
「兄ちゃま、ごめんなさい..」
泣きじゃくるユイにセイカはいつも優しく言う
「兄様もお前の歳の頃は毎晩したさ、なにも恥ずかしい事じゃない、ほら気持ち悪いだろ、着物と布団を替えるぞ」
セイカもまだ8歳の子供なのに弟の面倒を本当によくみた
ユイの口癖は
「兄ちゃま、だいすき」
なにをする時もセイカの後を追い、セイカも友達と思いっきり遊びたくてもやっぱりユイをおんぶする
本当に仲の良い兄弟に成長した
側近達の間でもう一つ胸を熱くさせることは、8歳になったセイカは元々父親似ではあったがケイシに生き写しの顔立ちへと成長したこと、
そして3歳になったユイの顔はリーシそのものだった、
ユイは男だが3歳にしてリーシに生き写しの美貌をもっているため、側近達はよからぬ男が寄ってこないよう目を光らせておく事が決まりだった
セイカの指導係にはソービというケイシの側近がついた
ユイの指導係にもまたケイシ側近であったユーラがついた
学問、剣術、戦術、セイカは毎日これらを学んだ、3歳のユイはこれらの真似事から始めた
今に今にセイカ様の時代がくる
この言葉を合言葉にケイシの側近達は辛い日々を耐え忍んだ、
セイカが12歳になれば正式に城主となる
そして今度はセイカ城、セイカ軍としてまた映えある栄光の日々を取り戻すのだ