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らっだぁの目は見開かれたままぺいんとを凝視している。
時が止まったかのように固まっていた彼の口元が、はく、はく、と彼らしくもなく開き閉じを繰り返すのを、
ぺいんとは半ば絶望的な気持ちで眺めた。
──本当に、言ってしまった。
机の上で手を所在なげに組んで、耐えきれずらっだぁから目を逸らした。
「それで……えっと、──この前お前の結婚のニュースを見て、ようやくお前を諦められると思った。
忘れたつもりでいたけど、完全には気持ちが消えてなくて困ってたからさ……。」
「でもどうせなら、きっぱり諦めをつけたいだろ?だからお前を呼んだんだ。」
「今付き合ってる人のためにも、らっだぁのためにも、俺は早く忘れるべきだって、そう思って──」
無理に視線をらっだぁに向ける。
相変わらず驚いた顔のらっだぁは、彼らしくもなく顎をかすかに落としていた。
ぺいんとの話が一段落したのを察すると、手で自分の口を抑える。
よく見るとその手は震えていた。
先ほどまでの苛立ちはどこへやら、明らかに動揺している。
「ほんと、いきなりごめん、こんな話。されても迷惑だし、気持ち悪いよな」
らっだぁは何も答えない。ぴくりと肩が揺れたのがわかるだけだ。
「らっだぁはただ、俺をフッてくれるだけでいいんだ。可哀想とか、そういうのは要らない。
俺はフラれるためにここにきたんだ。だから、、」
きっぱり振ってくれ。
そう続けようとした時、唐突にカウンターの上に置いた両手を強い力で鷲掴みにされた。
ギリギリと力を込められ、恐る恐ると視線をやる。
そこにはらっだぁがいた。ただし、額に青筋を浮かべ、上からこちらを睥睨するらっだぁが、
ひゅっと恐れで息を呑んだぺいんとに、らっだぁが唸るような声で言った。
「勝手に終わらせてんじゃねぇ……ぺいんと、今までなんでそんな大事なことを黙ってたの」
「え……?」
「ぺいんとがさっさと言ってれば、こんな面倒な事態にならずに済んだんだよ。
俺が今日どんな気持ちでここに来たと思ってんの??」
胸ぐらを掴まれそうな勢いに、ぺいんとは目を白黒させることしかできない。
「ら、らっだぁ……?よ、よくわからないけど落ち着けって。論点がずれてる」
「何もずれてねぇよバカ。ほんとありえない、俺の結婚前にこんな話してくるとか──覚悟決めるのがおそいんだよ」
らっだぁにただただ罵倒され続けると言う状況に、ただ戸惑うことしかできない。
(らっだぁにこんなに怒られたのも初めてだったので)
だがしかし、あんまりな言い草ではないのか。ぺいんとはだんだん腹が立ってきた。
「さっきから聞いてればらっだぁこそ何なんだよ。俺がらっだぁに告白すんのがそんな悪いことなのかよ。」
「らっだぁの結婚前にって言うのは確かにあれだったかも知らないけど、今しかいうチャンスないじゃん。あんまりな言い草じゃない?」
ぺいんとの反論に、らっだぁが眉間の皺をさらに深く刻み、掴んだ手にさらに力を込めてくる。
ぺいんとは小さく悲鳴をあげそうになるのをやっとで耐えた。
この男、本当に手加減していない。
「俺が言ってんのは行動の良し悪しじゃない。時期の話をしてんの。相変わらず何もわかってないね。」
「俺たちが絡んで何年になると思う?10年以上だよ。今まで俺はその中で一度も、ぺいんとが俺のことを好きだなんて聞いたことはないし、そのそぶりもなかった。」
「ぺいんとはホイホイと自分がたぶらかした奴らと付き合い、ゴミのようにポイポイ捨ててた。」
「あの時期お前は何してたんだ?あの頃の俺の気持ちがぺいんとにわかるか?わからないよね、このクソ鈍感野郎」
……どうしよう。らっだぁが言っている意味が、全くわからない。
自分が罵られていることはとりあえずわかったが、
どうやらそれはぺいんとの告白を不快に思ってのことではないようだ。
らっだぁはぺいんとの手首を片手で握りしめたまま、片手で顔を覆い、長いため息を吐いた。
「ほんとぺいんとに振り回されんのはこりごりだ。今日で会うのは最後にしようと思ってたのに…」
「ああ、それ俺も思ってたよ。同じだな」
「は??」
全く同じことをらっだぁに対してぺいんとも思っていた。
会うのはこれで最後にしよう、らっだぁへの恋心は捨てようと。
奇遇にもらっだぁも同じだったことがわかり思わず共感すると、鬼のような形相で睨まれた。
「本当に頭が足りないね。この状況で俺の機嫌を損ねるようなことが口にできるとは、よほど俺に犯されたいと見える。」
「ぺいんとは加害者で俺は被害者なんだよ、ちゃんとわかってる?」
「え?」
「まあぺいんとのことを唯一褒めてるとするなら俺の結婚前に慌てて告ってきたこと。」
「これが結婚した後だったら俺はぺいんとを殺してたかもしれない」
「そんなに……?てか俺は慌てて告ったんじゃなくて、いよいよちゃんとフラれようと思って──」
ぺいんとは弁解したが、らっだぁはもはや聞いていないようで、ぶつぶつと何かしらを呟いている。
スマホを開いたと思えば何かを確認し、眉間に皺を寄せ、何かを指で打ち始めた。
ぺいんとは何が何だかわからず、もうらっだぁを理解するのを諦めて帰ることにした。
わぁ、すごい変なところで切りましたね…
その時すごく眠かったんですよね
いやぁ、自分自身のことがわからないですね…
あ!見てくださりありがとうございました!
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