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深影 雪 🤍𐙚.
ඞ莉楓
新生活が始まっていろいろバタバタしてました。すみません…!
では、どうぞ…!
もうここまでの怒涛の展開で、らっだぁと再会して生まれた熱や揺らぎは変な方向に振り切れてしまった。
勇気を出して告ったというのに、すっぱりフラれよう作戦もなんだかよくわからないがうまくいっていない。
他人任せはやめて自分でなんとかしろと言うことなのか。
ため息をつく。必死に勇気を出して行動してもうまくいかないなんて。
スマホで時間を確認すると、もう夜の21時だ。
「らっだぁ、俺なんかよくわからないけど、そういうことだから……もう会うことはないと思うけど元気でやれよ。
お幸せに、な…っ!?」
それだけ言って机に札を置きそろそろと立ち上がったぺいんとを、般若のような顔をしたらっだぁが思い切り腕を引っ張って押さえつけた。
ぺいんとは目を剥いた。無理やり引っ張れば抜けないこともないかもしれないが、よほどのことがない限り外に出ない俺と、
毎日のよう外に出ているらっだぁだ。なかなかの苦痛を伴うのは確かだ。
「何なんだよ……」
「ぺいんとこそ何帰ろうとしてんだよ、頭沸いてんの。……ああ、沸いてるんだった。見ての通り俺は今ぺいんとのせいで忙しい。ぺいんともここでやらなきゃいけないことをやって」
「は?」
ぺいんとのせいで、とか、なぜ帰ってはいけないのか、とか、頭沸いてる、とか。色々と突っ込むところはあるが。
「……俺のやらなきゃいけないことって?」
スマホから顔をあげたらっだぁが、心底呆れたような眼差しをちらりとぺいんとに向けた。そんなこともわからないのか、
というらっだぁの心情がひしひしと伝わってくる。
らっだぁはひとつため息をつく。
「そんなこともわからないの、ぺいんとの彼女に今すぐ別れを告げるんだよ。俺は今やってる」
「……………は??????????」
たっぷり30秒ほどは頭がショートしていたと思う。聞き間違いかと思って聞き直す。
「なんて?」
「ぺいんとができないなら俺がやる。スマホ貸して。パスワードは?」
自分のスマホをカウンターに置いたらっだぁが、ぺいんとの手にしていたスマホを取り上げる。
パスワード画面を開いたまま、パスワードを尋ねてくるそのふてぶてしさ。
らっだぁだなぁ、俺こんなやつなんで好きなんだろうなぁ、とか思いながら、「いやいやいや」と顔の前で手を振る。
「どうしたんだよ。らっだぁもうすぐ結婚するんでしょ?彼女に別れを告げるって……何で俺まで?」
「ぺいんとには脳みそがないの?……ぺいんと、まさか俺に二股の相手になれっていうんじゃないよね。そんなのは死んでもごめんだよ。」
「そんなことをするくらいなら、俺はこれからぺいんとをブチ犯して、撮った写真か何かをぺいんとの彼女に見せるなりなんなりして無理にでも別れさせる。」
「それでぺいんとは俺の番にしたあと一生監禁。それでもいいならやってみてよ」
「……?」
話が見えない。全く見えない。聞こえてはいけないワードが飛び交った気がした。しかし理解してはいけないような気がする。
なぜこんな状況になったのか。らっだぁの言う通り本当にぺいんとの知能が低いからなのか、それともらっだぁがおかしいからなのかわからない。
とりあえず頭の中で冴の言ったことを整理してみる。
「………え、らっだぁ……俺と付き合、うつもりなの?」
まさか、と思いながら口にした言葉に、らっだぁがぴたりと動きを止めた。蒼色の目をぎらりとこちらによこし、しばしの沈黙ののちに。
「だからそう言ってんでしょ」
そう言って目を逸らした。
「え、ええ……え?じょ、冗談だよな?だってらっだぁは、結婚する女の子がいて、」
「親の紹介で仕方なくって言ったでしょ。別に嫌いでもないし好きでもない」
「いや、でも、結婚してもいいって思ったって、さっき……なんで俺の告白なんかでいきなりそんな展開になるんだ??」
頭を捻るぺいんとに、らっだぁがぺいんとのスマホをカウンターに置いた。
すっと顔をあげ、体の向きをぺいんとに向けて、ぺいんとを掴む腕の力を少し弱めた。
それから、今まさに気づいたと言うような顔をして呟く。
「……まだ一番大事なことを言ってなかったね」
目を瞬くぺいんとを見つめながら、らっだぁはすり、とぺいんとの腕を手で軽く撫でた。
少しらっだぁの纏う空気が変わる。奇妙な居心地の悪さに戸惑いながら、くすぐったさに身をよじった。
「……しかしここまでやってわからないとは、本当にぺいんとってバカなんだね、、、ぺいんと」
困惑したまま見上げたらっだぁは少し口元を緩めているように見えた。
目元が先ほどまでとは比べようもないほど優しい。──というか。
こんなに優しい顔のらっだぁは初めてで、吸い寄せられるように視線が持っていかれた。
「よく聞いて、ぺいんと。ぺいんとはバカだし腰抜けだし頭が足りないし鈍感だし、放っておけばすぐ人をたぶらかしてくる人たらしだ。」
「本当に迷惑なオメガだ。俺はうんざりするほどぺいんとに振り回されてきた。でも俺は、──俺も、そんなぺいんとのことがずっと好きだった」
「……え?」
衝撃のカミングアウトに、ぺいんとは頭が真っ白になった。顎がガクンとおちる。
強い口調で言い切ったらっだぁの言葉に嘘はないように思えた。
でも、え?は?らっだぁが、俺を好き?ありえない。
らっだぁは言葉を選ぶそぶりも見せず、先ほどまでとは比べようもないほど穏やかな口調で続ける。
「結婚も、本当はぺいんととしたかった。長年振り回された挙句ぺいんとに避けられるようになって、もう諦めてたんだ。せめてもの親孝行に結婚だけでもしようと、好きでもない人と婚約した。」
「でも土壇場でぺいんとは俺が好きだと言った。ぺいんとも俺と同じ気持ちなら、もう遠慮する必要はない。ぺいんと、俺と結婚して。俺がぺいんとを世界一幸せなオメガにする」
「…………」
腕に触れていたらっだぁの手が、ぺいんとの手に降りてきた。抗えないほどの熱が蒼色の目から、指先から伝わってくる。
その証拠に、まるで貫かれているように体が熱い。
こいつ、本気だ。
ぺいんとは愕然と理解した。
らっだぁはぺいんとの返事を疑いもしないようで、口角を少し緩めた滅多にない表情をその怜悧な美貌に浮かべている。
長い指先がぺいんとの左の薬指を摘んだ。何もつけられていないそこを、線を描くようになぞられる。
そこに向けられる眼差しには、確かに激しい情熱があった。
「──」
まずい。
まずいまずいまずい。こんなのは俺のプランに入っていない。
動揺と困惑と恋の成就の喜び。罪悪感。焦燥。いろんなものが入り混じる。
処理しきれないほど膨大な量の情報と問題が溢れる。
つまりらっだぁは俺のことが好きで、俺に彼女と別れて自分と結婚しろと言っていて─。
「っ、らっだぁ、俺、彼女がいるんだ」
気づけば声に出していた。
らっだぁはスッと真顔になると、すぐになんでもないふうに、けれどずばりと言った。
「別れろ。別れて、連絡先も全て消して。二度と会うな。俺もそうするから」
「そんな、──急に無理だ」
「……ここまできておいて、まさか俺と付き合わないなんて言うつもりじゃないよね?」
らっだぁの発した言葉には有無を言わせない響きがあった。見つめてくる目は雄弁に、肯定すれば殺すと語っている。
いまだかつてこれほどの圧をかけられたことがあっただろうか。否、ない。
──落ち着け、俺。殺傷沙汰は避けたい。
ぺいんとはひとつ唾を飲み、顔の前に両手をかかげた。
「落ち着け、らっだぁ。さっきも言ったけど、俺がここにきたのは、長年支えてくれた彼女に向き合いたかったからなんだ。だから、らっだぁが俺のことを好きだとしても、そう急に乗り換えられ……」
言いかけている途中でガッ、と胸ぐらを掴まれた。耳元に口元を寄せられ、ぺいんとは怒鳴られると思った。
しかしいつまで経っても衝撃はやって来ず、恐る恐る目を開ける。
目の前には燃え盛る蒼色の目があった。
恐ろしいほど静かで、でも確かに怒りを秘めた声が整った唇から唸るように響く。
「ふざけるな、ぺいんとが俺に告白して、俺がぺいんとに応えた時点でぺいんとと彼女の破局は決まってる。」
「わかったらとっとと別れて。ぐだぐだ言ってないで。ぺいんともそれを望んでるんだろ?」
望み。ぺいんとの望み。──俺は、どうしたいんだろう。改めて考えてみると難しい話だった。
今日ここにきた目的はらっだぁを諦めるためだが、らっだぁもぺいんとと同じ気持ちだとなると話は違う。
らっだぁが俺を好き。奇跡みたいな話だ。ずっと大好きだったアルファに交際をすっ飛ばしてプロポーズをされて、嬉しくないわけがない。
──だがしかし、俺は彼女がいて、らっだぁには結婚を控えた女性がいる。
頭の隅に、栗色の髪に黄色がかった目をした彼女の姿が思い浮かんだ。
とても可愛くてぺいんとのことを慕ってくれて、何年もぺいんとのことを支えてくれた。
らっだぁのことを好きでも、許して抱きしめてくれた。
らっだぁは俺のために婚約者の女性と別れようとしているとさっき言った。俺も自分の恋人と別れる必要があると。
──らっだぁを選べば、あの子を傷つける。
「……」
頭の中で響いた言葉は思ったより深くぺいんとにのしかかった。あの天使のような笑みが、自分の言葉で傷ついて歪む。
もう彼女は、ぺいんとにとって大事な人になっていた。それが恋でなくとも、傷つけたくない。
「ごめんぺいんと。相手が通話したいとうるさいから、少し外で話して話をつけてくる」
横で己のスマホを操作し始めたらっだぁが、ひとつ舌打ちをして立ち上がった。
ぺいんとの方を柔らかな眼差しで見下ろしながら、リビングの出口に向かおうとする。
「ら、らっだぁ……」
おそらく、自分の婚約者と別れ話をするに違いないということはわかった。
震える声で呼び止めるが、らっだぁはもう耳にスマホをあてていた。
取り残されたぺいんとは、何をしていいのかもうわからなかった。
がくがくと震え始めた足で立ち上がり、なんとはなしに部屋を歩き回る。
らっだぁが帰ってきたらどうなるのだろう。その場で彼女と別れさせられるのだろうか。
そもそも結婚間近ってすごい噂にまでなってるのに、どうするつもりなんだ。
俺のせいだ。
全部俺が軽率に行動したから、らっだぁとぺいんと、二人が違う道で育むはずだった幸せが全てぶち壊された。
らっだぁの婚約者になんて、どういう顔をしたらいいのかわからない。こんなの略奪愛と一緒なのではないか。
「──かえら、なきゃ」
荷物を持った。確かここには裏口があるはずだ。よくらっだぁの家を来た俺は勝手が知れていて、
らっだぁに見つからずに抜けることもおそらく容易い。
とりあえず逃げよう。話はそれからだ。
すみません…!
リアルでいろいろとバタバタしていたので更新が遅くなってしまいました、、
今は落ち着いているのでまた投稿頻度は戻ると思います!
あとこれセンシティブ制限されると思うんですよねぇ…
全然センシティブ入ってないのに!!
前にも全然センシティブ入ってないのに『センシティブ』書かれたりしてたんですよね…
言葉遣いだけで!!!
『センシティブ』って書かれてても全然センシティブじゃないんで、安心してみてください!
※ このお話の最終話はセンシティブ入れるつもりなのでそこは注意してください!
あと他のお話で「ぺん受け短編集」というのにはセンシティブが入っています!
コメント
2件
すごいどろどろしてる感じがぶっ刺さってくる…! 続きが楽しみです!!