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記録する程でもないくらい短期間で大金を大量に稼ぐにはあっという間に風俗に落ちる。
世の中の風俗はほとんどが禁止されているはずの“スカウト”に仕事を繋いでもらう。
様々なお店と繋がり女の子を紹介することで紹介料を貰い続けるのが彼らの仕事だ。
そんな私も闇金の元請けが繋がっているスカウトを紹介された。
スカウトと女の子は都内のカフェや食事処などで面談をする。
私は4年間同じ吉沢亮似の20代男性スカウトについてもらっていた。
彼は優秀と人気のスカウトだっただけに、しっかり返済まで一緒に修羅場をくぐり抜けてくれた。
返済が終わった日の夜は一緒に泣きながら私の好物の天下一品こってりを食べた、あれは忘れられない1杯だ。
そんな話はさておき、彼が紹介してくれたお店1店舗目は都外の店舗型ヘルスだった。
店長と長年の付き合いがあり安心出来るということ、プレイ内容が過激じゃなく初心者向けのソフトなもの、客層が良く単価もそこそこ良い綺麗な新しいお店を紹介された。
初めてのお客様は今だにハッキリと覚えている。
29歳の仕事帰り、スーツの独身男性だった。
当たり前の話だけど私は風俗の客に対して心象が良くなかった。
なぜ金銭を払ってまで女を利用したいのか、そこに何を求めているのか理解出来なかったからだ。
彼は受付で店長から直接「この仕事が初日で初めてのお客さん」だと説明を受けていた。
物腰の柔らかい始終笑顔のお兄さんだった。
想像もしていなかったが彼とはこの日から4年の付き合いが続くことになる。
初めての接客はまさかの120分だった。
世の中でよく研修があるなどと聞くが、私はお客様が教えてくれるからそのままで良いと言われ何も教わったことがない。
どうすればいいか分からない私に彼は「緊張するよね」と話を振ってくれた。
話をしていくうちに、彼は “普段の自分を全く知らない誰かと中身のないことを話せる時間”にお金を使ってしまうのだと教えてくれた。
彼は120分間ただ話をしただけだった。
私の初めての接客はこれで終わってしまった。
帰り際に1万円手渡された。
「辛いこともあると思うけど、今日は帰り道に大好きなものを食べて帰るんだよ」
そう言われた。
連絡先の交換をした彼からその後届いたLINEは、私が好物と言った牛タン定食を食べて帰ったという報告だった。
体を知らない人に売るという緊張がピークに張り詰めていた私は、少し涙が出そうになった。
ちなみに彼はこの後も1ヶ月に1回全国のどこに居ても会いに来てくれた。
4年間ただ毎月120分予約をして話をして1万円手渡して帰り道にその日話した美味しい食べ物を食べて報告して帰るのだ。
彼が私の初めてのお客様だ。
決して安くは無いお金を使っておかしな話だと思うが、この場所に求めているものは様々なのだ。
人生で交わることのない誰かと1番近い距離で接する。
それが風俗という場所。
もちろんこの先に嫌なことは沢山待ち受けていた。
私の記憶に残っている初日のお話はこれで終わり。
この後4人くらい接客したと思うけど記憶はあまりない。
帰り道の牛タンは美味しかった。