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狭山さんと今年最後のリモート打ち合わせをしている。今日はおっくんも同席だ。
唐和開港綺譚に出てくる土着宗教は神道モチーフだが、神道の決まりはこれで合ってるのか、という話をしている。
狭山さんは「金谷神社っていう、古い神社の家で聞いてきたので大丈夫です」と自信を持って言っていた。そりゃ未来の婿入り先だもんな。
おっくんがプロットを見直しながら狭山さんに聞いた。
「ニンニクやネギがダメ、獣肉もダメっていうのは、神道の絶対の戒律ではないんですね」
「そうですね、厳密に守らないといけない時もあるんですけど、割と融通はきくみたいです」
俺は金谷さんや緑さんのことを思い浮かべた。仕事の時は食べちゃいけないし、人によっては霊感も減衰するわけだけど、それ以外ならいくらでも食べていいし、霊感なくても生活に直ちに問題ないわけだから、確かにそんな説明になるよな。
おっくんが俺に話を振った。
「ネギ・二ン二ク・獣肉ら辺で、漢方薬膳コラムいくつか書けます?」
俺はすぐ答えた。
「書けますよ、五葷ひとつずつで1コラム書けるくらいネタあるんで」
「ネギで1コラム、ニンニクで1コラム、豚牛合わせて1コラムくらいでお願いしたいです」
「じゃあそれで考えておきます、ネギは白ネギと玉ねぎまとめるかもしれませんが」
「大丈夫です」
狭山さんが「すみません」と手をあげた。
「えっと、僕の原稿は提出プロットから大幅に外れることはあんまりないんですが、コラムは前みたいに決定稿読んでもらってから着手していただけるとありがたいです、前のが本文に密着しててよかったんで」
「じゃあ、着手は来年ですね」
俺は狭山さんに答えた。狭山さんは別に遅筆ではないけど、本一冊書き上げるとなると、流石に年内は無理だろう。
狭山さんは苦笑して頭をかいた。
「いやーすみません、なるべく早く第一稿あげます、年末年始時間とれるんで」
おっくんが狭山さんに言った。
「いや、別にうちの会社、年末年始の労働強制はしませんよ?」
狭山さんは遠い目になった。
「年末年始だからのんびり仕事できる、というのはあるんですよ……」
言いたいことはわかる。ブラック企業勤めの時、年末年始は仕事が捗った。邪魔な上司がいなかったし、他の人の横槍も入らなかったし。でも、自分を休める時間取らないと、身体壊すからな……。
俺は狭山さんに話しかけた。
「休みに仕事捗るのはすごくわかりますが、あんまりおすすめできる働き方ではないですね……ブラック企業の働き方なんで」
「それはそうなんですけどねえ」
「えーと、一応私は明日で仕事納め予定で、年末年始は休ませていただきます」
俺は頭を下げた。狭山さんは「そう言えば」と言った。
「和泉さんち、今年は千歳さんのおせちなんでしたっけ?」
「そうなんですよ、作ってくれるということなので、甘えてしまいまして」
俺は少し照れくさい思いで笑った。おっくんが「へえ」と言った。
「手作りおせち? 千歳さんのなら絶対おいしいでしょ」
狭山さんが興味深げな顔になった。
「あー、奥さん千歳さんの料理食べたことあるんでしたっけ」
「はい、おいしかったですよ」
それから、おっくんはちょっと首をかしげた。
「そう言えば、千歳さんはニンニクだの獣肉だのは食べても平気なんです?」
「え? あ、そう言えば全然気にしてませんね……むしろニンニクネギは多めまであります」
千歳は、『来年からの組紐作りに備える』と今からお米をたくさん食べて力を蓄えてる。ご飯に合うだろうと思って食べるラー油各種を差し入れてあげたら、いたく気にいったみたいだったし。
そんなこんなで打ち合わせを終えたら、台所で打ち合わせの内容を聞いていた千歳(女子大生のすがた)に『五葷とか、ワシが食べるの自体は特に構わないぞ』と言われた。
『まあ、五葷と獣肉避けるのは神様に仕える者の心構えみたいなもんで、神様側がかまわなければそんなに問題なくて、で、ワシは神様側だから』
「へえー、なるほど」
『ワシとしては、うまくて腹が膨れたら何でもかまわない。米は多めに食いたいけど』
そう言ってから、千歳はちょっと考える顔になり、付け足した。
『そう言えば、神道で一番いいお供え物は白米だったな。やっぱ米食うと力出るな』
「ふーん、そう言えばお神酒ってあるけど、あれも日本酒がいいの? お米から作るし」
『まあお神酒にするのはだいたい日本酒だけど、うまい酒なら何でも飲むぞワシ』
「甘い果実酒も好きだもんねえ」
桃と杏仁のお酒、千歳喜んで飲んでたしな。
『酔わないからたくさん飲めるぞ!』
千歳はなぜか胸を張った。俺は提案した。
「じゃあさ、年末年始はちょっとお酒飲まない? 俺、ちょっと日本酒飲んでみたくなっちゃった」
これまでチューハイ系くらいしか飲んでなかったけど、たまに味を楽しむなら、日本酒もちょっと試してみたい。
『おっ、いいな、じゃ、大みそかは鍋やるから、熱燗で飲ろう』
千歳は手を打って賛成した。
「何の鍋?」
『えーと、鶏のハリハリ鍋にして、シメにネギとそば入れて年越しそばだ』
「おー、おいしそう!」
#幽霊
凛道桜嵐 新
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#日常
がくじゅつてき・あかげ
22,155
わーい
41
485
じゃ、大みそかを楽しみに、頑張って仕事して、今年の仕事納めるか。
コメント
1件
狭山さんとの真面目な打ち合わせから、千歳さんとの年末のやりとりまで、ゆるくてあったかい雰囲気がよかったです。五葷や獣肉が「神様側だからかまわない」になるロジックが民俗学的に面白くて、世界観の厚みを感じました。お米と酒の話から年越しそばの約束につながるところ、じんわりきますね。よいお年を迎えられそうで、こちらまでほっこりしました。