コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「……え、俺と目黒だけ?」
スケジュールを確認していた岩本くんが、少し驚いた顔でマネージャーに聞き返した。
「そうなんですよ。今回は現地での撮影なので、二人だけのスケジュールになりました。他のメンバーは別の仕事があって、合流はしません」
「そっか」
岩本くんはあっさりと頷いたけど、俺は内心少し焦っていた。
(まじか……二人だけで遠征……)
落ち着け。仕事だ。
いつも通り、普通にしていればいいだけのこと。
なのに、心臓の鼓動が微妙に早くなっているのを感じる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
現地に着いたのは、もう夜だった。
「明日は朝から撮影だから、今日はゆっくり休んでくださいね」
そう言われ、二人は同じホテルの部屋の前で立ち止まった。
「じゃあ、おやすみ」
「……あれ?」
違和感に気づく。
「部屋、別じゃないの?」
「ん?」
岩本くんがルームキーを確認し、ふっと笑った。
「一緒っぽいな」
「えっ……」
「まあ、仕事で泊まりだし、そんな気にすることでもないだろ」
そう言って、岩本くんは部屋のドアを開ける。
確かに、気にすることじゃない。
ただの仕事の遠征。
……それは分かってるけど——
(……これ、寝れるかな)
自分の胸が静かに高鳴るのを感じながら、岩本くんの後に続いて部屋へと入った。
~~~~~~~~~
部屋に入ると、岩本くんはすぐにスーツケースを開け、荷物を整理し始めた。
「シャワー、先入る?」
「……あ、じゃあ俺、後で」
スーツケースを開けるふりをしながら、ちらりと岩本くんを見た。
普段と違う。
当たり前だけど、いつもはレッスン着や衣装姿しか見ない。
けど、今は黒いTシャツにスウェットのラフな格好で、髪も軽く崩れている。
(……なんか、リラックスしてる感じ、いいな)
そう思った瞬間、心臓が跳ねた。
(……いやいや、落ち着けって)
岩本くんは特に何も気にしていない様子で、荷物を整理し終えると、そのままシャワーを浴びにいった。
シャワーの音が微かに聞こえてくる。
(やば……意識しすぎだろ、俺)
狭い部屋に二人きり。
しかも、今は岩本くんと二人きりの時間があまりにもリアルすぎる。
何か、落ち着かせるものが欲しい。
(ちょっと……外、行ってこよう)
財布を掴み、軽くジャケットを羽織ると、そっと部屋を出た。