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この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません
吐夢→「」
玖村→『』
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玖村side
初デート?の、場所は水族館になった。男二人で水族館とかあんま見たこと無いけど、変でもないだろうということで俺が指定した。彼も魚が好きなのか海が好きなのか、二つ返事でOKが返ってきた
「”すみません、少し遅れます”」
『…いや遅れんなよ、相手俺だけど一応初デートだぞ?』
『”わかりました、入り口で待っておきましょうか?”』
「”中に入って、海底コーナーに居てください”」
『海底…?いやどこだよ、もっと下ってこと?』
彼が聞いていないのをいいことにここぞとばかりに悪態をつきまくる。まあここで立ち往生するのもなんだから、大人しく彼の言う海底コーナーへ行くと深海って感じがした。そりゃそうなんだけどさ、深い藍色。何もかもを飲み込むような、それでいて光を反射する綺麗な碧。魚よりもその水の色に惹かれるものがあった。彼を想起させるような、暗い色だったからかもしれない
「…遅れてしまって、すみません」
『…ん?あ、吐夢さん。いやいいですよ、ここ綺麗で全然見飽きないし』
「…そうですか」
会話が途切れるときはいつもこうだ。吐夢がそうですか、と一言ボソリと呟いて俺が言葉を返すのを諦める。お互いに恋愛をすることや人間関係を構築するのが苦手だとわかっていたから、別にこれでもいいと思えた
『…あ、クリオネ』
「クリオネ…」
指先でさえ触れたら死んでしまいそうな程小さな生き物。可愛いなぁ、と眺めていると彼も興味があるのか隣に来た
「…クリオネは、」
『…天使、って呼ばれるくらい可愛いですよね。…俺もこれくらい可愛げがあれば、人生もっとラクだったのかな…』
「…可愛げ、無いですかね」
『?クリオネはあるでしょ』
「いえ…玖村さんは、自分が可愛げが無いと思っているのかな、と」
正直驚いた。彼はそんな事を言うタイプには到底思えなかったから。彼は少しでも自分の事を可愛いと思ってくれているのだろうか。少しでも、自分を必要としてくれているのだろうか。変な話だけど、目の前のクリオネ以上に俺に興味をもってくれているのか?
『…吐夢さんには、俺が可愛げあるように見えてます?笑』
「……」
いや冗談じゃん?えっ、通じてない?冗談に対する無言が一番キツいって。なんか喋ってくれよ、俺辛いって
『…なんか言ってくださいよ』
「…玖村さんは、クリオネの捕食シーンを見たことがありますか?」
おい違ぇだろ、返答はどうした。と思ったけどまあこんなめんどくさい質問答えたくないし答える義務なんかないよな。そう考えて彼の質問について少し考えてみる。クリオネが食事しているだなんて、考えたこともなかった。てかなんで急に補食シーンの話、?
『…はい?…いや、無いですけど…そもそも、クリオネって食事するんですか?』
「はい、…あ、見てください、開くんですよ頭が」
『え?』
彼の指の先を追うとガラス越しに見えたエイリアンのような生物。これが先ほど天使と称された生き物と同じものには見えなかった。称された?揶揄された、という表現の方が近いかもしれないな
『…はは、なんか、滑稽ですね』
「…滑稽?」
『天使って煽てられて、でも本性現したらこれだ。それを知らずに俺たちは可愛い可愛い、って。なんかアホらしくないですか?』
「…まあ、そうかもしれませんね」
『…まるで俺みたいだ』
「…確かにそうですね」
『…そこは否定してよ』
「悪い意味ではないんですよ」
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何時間一緒に居ても掴み所の無い人だった。言うこと成すことわかんないところがあって、でもこのデートはとても楽しかった。心地よかった。…まだ、一緒に居たいと望んでしまった
「ではそろそろ……」
『…待って、』
「…?」
『あ…の、…ぇ……く、…です』
「なんですか?」
『まだ、帰りたくない…です』
帰り際、どうしても離れたくなくて、離したくなくて。彼の顔も見られないまま、そう伝えた。帰りたくなかったんだからそれで良かったはずだった。でも俺が想像してた未来は待っていなくて、今日のデート中みたいな関係にはもう戻れなくなってしまった。互いに、戻ろうとも思っていなかったのかもしれない
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真っ暗い視界の中、鈍くて硬い金属音が手元から鳴っている。それと同時に柔らかな何かが首筋に触れた。キス、されたのかな
「…こういうの、期待してたんじゃないんですか?」
『そんな事…っ、ぁ♡』
目隠しを外された直後目に入ったのは、溢れんばかりの笑顔だった
コメント
2件
おぉ、最高ですね… あべちゃんのこの役も、さっくんのこと役も好きなんで、あわせたらあべさくとはちょっと違う! あべさくみたいな騒がしい(?)のと違って、…めっちゃいいですね‼️