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『知らない家』
仕事帰り、男はいつものように家へ帰った。
玄関を開けると、母親がいた。
「おかえり」
「ただいま」
母親は夕飯を作っていた。
「今日、遅かったね」
「うん。仕事が忙しくて」
二人で夕飯を食べ、男は自分の部屋へ戻った。
その夜、寝る前に母親からメッセージが届いた。
『今日、ちゃんと帰ってきた?』
男は笑って、
『帰ってきたよ』
と返信した。
すると、
『よかった』
とだけ返ってきた。
翌朝。
男が起きると、母親はいなかった。
テーブルには朝食が一人分だけ置かれていた。
「母さん、出かけたのかな」
気にせず仕事へ向かった。
夜、帰宅すると、玄関に見慣れない靴があった。
「母さん、誰か来た?」
返事がない。
リビングにも誰もいない。
男は家中を探したが、母親はいなかった。
そのとき、スマホが鳴った。
母親からだった。
『今日も遅くなるの?』
男は、
『もう家にいるよ』
と送った。
すると母親から、
『……何言ってるの?』
『今日はお父さんと一緒に実家にいるよ』
男は画面を見つめた。
父親は、数年前に亡くなっている。
そして母親も――
**昨日の朝から入院しているはずだった。**
男は急いで家を出ようとした。
玄関のドアを開ける。
そこには、自分の母親が立っていた。
「どうしたの?」
男は震えながら聞いた。
「……母さん?」
母親は笑った。
「おかえり」
男は一歩後ろへ下がった。
「昨日、俺に夕飯作ったよね?」
「昨日?」
母親は首をかしげた。
「昨日は病院にいたけど」
その瞬間、男のスマホに一枚の写真が届いた。
撮影日時は、
**昨日の午後7時。**
写真には、夕飯を食べている男が写っていた。
向かいの席には母親。
そして写真を撮っているのは――
**父親だった。**
男は写真を見て、ようやく気づいた。
昨日の夕飯で、母親は一度も箸を持っていなかった。
父親の席にも、料理は置いていなかった。
二人とも、ただ男を見ていた。
そして写真の裏には、父親の字で一言。
**「この子はまだ、自分が死んだことに気づいていない」**
コメント
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泡魔璃んなちャ_🫧🩵さんの『知らない家』読み終えました……っ🥀 最初は何気ない日常会話の静けさが、徐々に「違和感」に変わっていく構成がすごく巧みで、読んでるこっちの背筋がどんどん冷えていきました。特に「写真を撮っているのは父親だった」の一文でゾッとした……。気づかれないまま進んでいた異常、本当に怖かったです。続きをすごく知りたいです🌙