校舎と体育館をつなぐ渡り廊下には西日が斜めに差し込んでいた。オレンジに染まった床にWの影が長く伸びる。
「……なんでついてくんだよ、おまえ」
前を歩くWが、苛立ちを隠さずに言った。振り返らずとも、背後にいるのはわかっている。足音の軽さがDのものだったから。
「別にいいじゃん??同じ方向だし」
Dは相変わらずの調子で返す。気怠げに見えて、ちゃんと距離は詰めてくる。Wとの間隔は、もう数歩分しかない。
「よくない!!おまえと話してると調子狂う」
「ふーん?じゃあ黙って一緒に歩こっか」
Wは思わず立ち止まり、Dのほうを睨んだ。
「……そういうとこだよ」
「なにが??」
すっと距離が縮まる。Dの顔がほんの少しだけ近づいた。いつもの飄々とした目が、どこか悪戯っぽく光っている。
「ムキになるとこ、わかりやすくて好き♡」
「なっ……!」
Wが顔を赤くしながら言葉に詰まると、Dは満足げに笑って歩き出す。今度はWのすぐ隣を並んで。
「ほら、歩こ。置いてっちゃうよ??W先生??」
「うるさい……!!」
Wは眉をひそめながらも横に並んで歩き出す。西日はもうすぐ沈みそうだった。影は二つぴったりと並んで伸びていた。
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