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【第2話】絶望の電話と、甘い遮断
「……仁人、俺を置いていかないでくれ……っ」
雨の音に混じり、勇斗の弱々しい泣き声が部屋に響いていた。
あんなに尊大だった男が、今は泥のついた高級スーツのまま床に丸まり、僕の服の裾を震える手で強く握りしめている。
全財産も、会社も、誇りも失って、外の世界から追われるように逃げ込んできた元・暴君。
「大丈夫だよ、勇斗。誰も勇斗を責めたりしないよ。ここには僕しかいないんだから」
僕はそっと勇斗の濡れた髪を撫で、優しく抱きしめた。
胸の奥から湧き上がるのは、溢れんばかりの愛おしさと——ゾクゾクするような歓喜だ。
(ああ、勇斗はもう、僕がいないとダメなんだ)
僕を怯えさせ、見下していた男が、今は僕の体温に縋り付いてしか息ができない。主導権は、完全に入れ替わったのだ。
翌日の昼過ぎ。
部屋の片隅に放置されていた勇斗のスマートフォンが、けたたましく震え出した。
画面に表示されている名前は『舜太』。
勇斗と一緒に会社を立ち上げ、今回彼を裏切って金を持ち逃げした元・共同経営者からの着信だった。
眠れずに怯えていた勇斗は、その着信音を聞いた瞬間、恐怖で大きく肩を跳ねさせた。
「ひっ……! 舜太……っ、なんで……!?」
「出なくていいよ、勇斗。怖がらなくていいの」
僕が静かに制そうとしたが、勇斗は震える手で思わず通話ボタンを押し、スピーカーモードにしてしまった。
『……よお、勇斗。まだ息生きてたんやな』
スピーカー越しに聞こえてきたのは、勇斗を嘲笑うような、冷酷で不躾な声だった。
「舜太……! お前、よくも俺を……! 金を返せ! 会社の口座を元に戻せよ!」
『ハッ、アホかお前? 警察も動いてるし、お前の個人口座も家も、全部差し押さえの手続きが終わったとこや。もうお前は完全に一無所有の犯罪者予備軍だ。……あ、お前に貸しのあるヤクザっぽい連中にもお前の潜伏先教えておいたから。逃げ切れるといいな』
「な……っ!? 嘘だろ……待て、舜太! 頼むから待ってくれ!!」
『じゃあな、元・社長さん』
ブツッ、と非情な切断音が響く。
「嫌だ……嫌だ嫌だ嫌だ!!」
勇斗は頭を抱え、ガタガタと全身を激しく震わせ始めた。
外の世界に戻る希望も、プライドも、すべてが完全に打ち砕かれた瞬間だった。
追われる恐怖と絶望で涙をボロボロこぼす勇斗を見つめながら、僕はそっと手を伸ばした。
勇斗の手からスマートフォンを取り上げると、僕は迷わず電源を落とし、そのままゴミ箱の奥深くへ投げ捨てた。
「ひ……仁人……? なにを……」
「もう、外の音なんて聞かなくていいんだよ」
僕は怯える勇斗の顔を両手で優しく包み込み、その額にそっと口づけを落とした。
「外の世界はね、勇斗を傷つける酷い人ばかりだから。……僕が、この部屋で勇斗をずっと守ってあげる」
「仁人……っ……俺、もうどこにも行けない……っ」
「行かなくていいんだよ。ここが、僕と勇斗の新しいおうちだからね」
涙でぐちゃぐちゃになった元・暴君を胸に抱きしめながら、僕は静かに笑った。
外の世界との繋がりは、これで完全に切れた。
君を閉じ込める僕の「箱庭」は、今、完璧に完成したのだ。
next…
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#ご本人様には関係ありません
透楽※お知らせ必読願います
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コメント
2件
えー!今回もめっちゃよきです^_^♡これからどんどん堕ちてく勇人くんが楽しみですね