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こんにちは主です。今回は美を追求しすぎて病んでしまい食事が取れなくなってしまったヴィルさんとみんなのお話です。簡単に言うとみんなからの応援の一言!的な小説です。初心者なので期待はしないでください。あとみなさんが気になっているみんなは、寮長ズとルークさんとクルーウェル先生です。お恥ずかしいことにマレちゃんと、クルーウェル先生の口調には自信ありませんので解釈違いがあったらコメントください。🤲リクエストなどもお待ちしております🙇♀️
鏡の前に立つたび、息が詰まる。
完璧でなければならない。舞台に立つために、誰よりも輝くために。少しでも余計なものが自分の中にあると感じれば、その瞬間すべてが汚れる気がした。
吐き気を催すのは、心か、それとも身体か。
トイレにて、
「おっえ”ぇ…ッぅ」
気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い嫌な感覚が私を襲う。
「はァはッぁぁ」
呼吸を荒くしながら自室に戻り、眠りについた。
翌日の昼下がり、ルークが静かに扉を叩いた。
「ヴィル、入ってもいいかな?」
「……ええ」
私は笑顔を整えて振り向く。けれど彼の視線は鋭く、隠してきた疲労を一瞬で見抜いた。
「美は時に、自分を削りすぎる。今の君は、
刃の上を歩いているように見えるよ」
「やめてちょうだい、そんな芝居がかった言い方」
「芝居じゃない。……心配なんだ、ヴィル」
やわらかな声音が、胸の奥に刺さった。
やがて、クルーウェル先生に呼び出される。
研究室で向かい合うと、彼の琥珀色の瞳が厳しくもどこか哀しげに揺れていた。
「貴様。無理な節制や拒食は美を保つどころか、命を削る行為だ。俺は教師として見過ごせん」
「私は大丈夫よ」
「大丈夫な顔には見えんぞ、貴様」
その言葉に、胸の奥の秘密が抉られる。私は誰にも見せないはずの弱さを、見透かされてしまった。
数日後。食堂で私がほとんど食事に手をつけないことは、もう周囲に知られていたらしい。
「おい、また口つけてねぇのかよ」
隣の席のレオナが、じろりと睨む。
「食わなきゃ動けねぇぞ。舞台も戦いも、身体が基本だろうが」
「……あんたに言われたくはないわ」
「俺は元からだらけてんだ。お前は違ぇだろ」
不機嫌そうな声に、逆に胸が締め付けられる。
「ヴィル! 一緒に食べようよ、な?」
カリムが朗らかに皿を差し出す。
「食べれば元気になるし、元気だと笑顔も増える! ヴィルの笑顔は、魅力的だぜ!」
まぶしい言葉の前で、私は返答を失った。
別の日、寮の廊下でイデアが小声で話しかけてきた。
「……あの、その……拙者、あんま人と関わるの苦手だけど……ヴィル氏がログアウトしちゃったら、拙者たちのギルド……いや、世界そのものが色あせるから……」
しどろもどろの言葉に、胸がかすかに揺れる。
リドルは真っ直ぐに告げる。
「僕は厳格さを求めてきた。でも規律は人を守るためのものもです。……自分を罰するためのものじゃない」
アズールもまた、眼鏡の奥の瞳を伏せながら言った。
「僕は契約で自分を守ってきましたが……命を削ってまで差し出すものは、どんな取引にも見合いません」
そして、夜の庭でマレウスが声をかけてきた。
「シェーンハイト。お前は十分に輝いている。人はお前の姿に憧れ、力を得ている。それでも――お前が自分自身を愛せぬのなら、何の意味があるのだろうか」
夜風が頬を撫でる。
仲間たちの言葉が重なり、胸の奥の黒い塊にひびが入る。
「……私は、どうすればいいのかしら」
絞り出した声に、マレウスは静かに微笑んだ。
「答えは一歩ずつでいい。お前を心配し、支えようとする者はここにいるのだから」
その瞬間、私は――完璧でなくてもいいのかもしれないと、初めて思えた。マレウスの言葉に胸を打たれた夜から、私はほんの少しだけ肩の力を抜けるようになった。けれど――長年刷り込んできた「完璧でなければならない」という思いは、そう簡単には消えてくれない。
そんな私の背を、最初にそっと支えたのはルークだった。
「ヴィル、今日は一緒に食べよう」
「……あんたまで、そんなことを」
「狩人はね、獲物の小さな変化も見逃さない。今の君には“口に運んだ”という行為そのものが、最高の勇気なんだ」
差し出された小皿に、彩り豊かな果物が並んでいた。ひと口だけ、震える手でそれを口にする。
酸味が舌に広がった瞬間、胸の奥がじんわりと温かくなった。
次に現れたのはクルーウェル先生。彼は相変わらず厳しい声音だったが、その奥にある優しさは隠しきれていない。
「仔犬。貴様に課題を出そう」
「課題?」
「一日に必ずひと口、何かを食べることだ。これは俺との約束だ。守れなければ、罰を与える」
「……ふふ、スパルタね」
「当然だ。俺は貴様を見捨てん」
その言葉に、私は思わず唇を噛んだ。
ある日の食堂。私がゆっくりとスープに手を伸ばした瞬間、レオナが口角を上げる。
「ほう……やっとマトモに食う気になったか」「……あんたに褒められる日が来るとは思わなかったわ」
「褒めちゃいねぇ。だが、その方が“らしい”な」
短い一言が、妙に心強かった。
カリムは相変わらず太陽のように笑っていた。
「ヴィル! このデザート、一緒に食おうぜ! 甘いもんは元気出るからさ!」
「……カリム、あんたってほんと……」
「ん? オレ?」
「……眩しいわ」
「ははっ、ありがとな!」
屈託のない笑顔に、私の口元もつい緩んでしまう。
イデアは、遠巻きに心配している様子だった。
「……あの、その……拙者、あんま人と関わるの苦手だけど……ヴィル氏が回復イベ進めてるの、拙者、ちゃんとログで見てるから……あんまり無理せず、セーブしながら進めてくれれば……」
「ゲームの話に見せかけて、気遣ってくれてるのね」
「ひぃッ……ばれた……」
小さな勇気が、確かに伝わってきた。
リドルは真っ直ぐに告げる。
「ヴィル先輩。僕は“義務”や“規則”を重んじてきたけれど……食べることは義務じゃなく、権利です。先輩はその権利を大切にすべきだと思います」
「……リドル、あんたが言うと説得力があるわね」
律儀な彼らしい励ましに、胸が少し軽くなった。
アズールは静かに言葉を選んだ。
「僕は契約で人を縛ってきましたが……ヴィルさんと交わすなら、“生きることを諦めない”という契約がいいですね」
「契約……ね。ふふ、あんたらしいわ」
その冗談めいた真剣さに、思わず肩の力が抜けた。
そして夜、マレウスがまた姿を現す。
「シェーンハイト。お前が一歩を踏み出したと聞いた。喜ばしいことだ」
「……大げさね。ほんのひと口食べただけよ」
「その一口こそが、大きな一歩なのだ。シェーンハイト、お前は1人ではない。」
月明かりに照らされたその横顔を見て、私はようやく気づいた。
私は一人ではなかったのだ、と。
下手くそ&短い小説失礼しました。機会があればまた会いましょう!お疲れ様でした!