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・knkz
kn→「」kz→『』
白く、ぼやけた天井。
静かな病室の空気の中、微かに誰かのすすり泣く声が混じっていた。
叶は、ゆっくりと意識を手繰り寄せるように目を開けた。
ぼやけた視界の向こう、見慣れた銀髪が揺れている。
「……くず、は……?」
声は掠れていて、呼吸もまだ整っていない。
でもその微かな声に、葛葉はすぐに反応した。顔を上げる。
『……叶……!』
泣き腫らした目、赤くなった目尻。
葛葉は言葉も出ないような顔で、叶を見下ろしていた。
叶はそんな葛葉の顔を見て、小さく息を飲む。
「……泣いて、たの?」
問いかける声に、葛葉は返事をしない。
ただ、一瞬目を逸らすように俯き、震える声で呟いた。
『お前……もう目、覚まさないんじゃないかって……思ったから……』
その言葉に、叶の胸がきゅう、と痛んだ。
たまらなくなって、唇を噛み、呟く。
「……ごめん」
でも、その瞬間だった。
葛葉の両腕が、ぐっと叶の体を引き寄せた。
『やめろ』
葛葉の声が震える。低く、でも切実で、何よりも強い。
『“ごめん”なんて、言うなよ。……お前が無事なら、それでいいんだよ……!』
叶は驚いて目を見開いたまま、葛葉に抱きしめられていた。
葛葉の肩が小刻みに震えているのがわかる。
泣いているのだと、また分かってしまう。
『俺……もう、お前が居なくなるんじゃないかって、ほんとに怖くて……っ』
ぎゅっと腕の力が強まる。
叶は何も言えず、ただその胸の中で目を閉じた。
『そんな風に……ごめんとか謝るくらいなら、もう二度と、俺を置いてくな……叶』
名前を呼ばれた瞬間、叶の目からもぽろりと涙がこぼれ落ちる。
「……置いていかないよ。……ごめん、ほんとに、もう……絶対に、どこにも行かない」
震える声でそう言うと、葛葉の背にそっと腕を回した。
しばらくの間、言葉はなく、ただ心音だけが重なっていた。
葛葉は叶の温もりを確かめるように抱きしめたまま、そっと額を彼の肩に預ける。
『……生きててくれて、ありがとな』
それだけでいい。それだけで十分なんだ。
何も要らない、ただ叶がいてくれれば。
その夜、葛葉は叶のベッドのそばを一歩も離れず、手を握り続けた。
コメント
3件
無事でよかった‼️‼️‼️‼️😭最高にエモい好き!!!😭
kneさんが無事でよかったです