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#成り上がり
aohana
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#ざまぁ
寺町朱穂
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和泉
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コメント
1件
うわ、第53話……めっちゃ重い空気が伝わってきたよ🥀 主人公が「信用してない」って即答したところ、すごく刺さった。透花ちゃんが「無理してない?」って聞いたのに「してる」って返すシーン、優しさと距離感が混ざってて切なかったな……。 でも最後の「構えろ」で一気に戦闘モードになる感じ、好き。次どうなるか気になる〜!
戦闘が終わった後、俺たちは広間の端にある半ば崩れた岩壁の陰へ移動した。
安全地帯と呼ぶには心許ない。
だが、少なくとも四方から一度に襲われる形ではないし、正面の通路も絞られている。
今の状況では、それだけで十分だ。
理央は壁にもたれて呼吸を整えている。
透花はまだ顔色が悪いが、崩れきってはいない。
花宮は端末を抱えたまま、珍しく何も言わずに黙っていた。
広間の空気は重い。
さっき倒した二体の魔物の血の匂いが、魔力の濃さに混じって薄く残っている。
沈黙を最初に破ったのは、花宮だった。
「久城くんは、何隠してるの?」
問いとしては、酷く曖昧に聞こえた。
だが、今の状況でそれ以上きれいに言えるわけもない。
「何でそんなに戦えるの?普通じゃないよね?」
真正面から来たな、と思う。
花宮は多分こういう時、変に遠回しにしない。
だから扱いやすいとも言えるし、面倒とも言える。
理央も顔を上げた。
「……俺も聞きたい」
低い声で、静かに問いかけた。
怒鳴るほど感情的ではない。だが、黙って流すつもりもない顔だ。
「今までずっと隠してたのか?」
「……そう見えるならそうなんだろうな」
「なんで言わなかったんだ?」
当然の疑問――だが、答える気はなかった。
答えられる種類のことじゃない。
説明したところで、はいそうですかと受け入れられる話でもない。
異世界だの魂だの召喚契約だの、この状況で口にしたところで混乱を増やすだけだ。
透花が、少しだけ身を乗り出す。
「……く、久城くん」
ゆっくりと、俺に視線を向ける。
しかし問い詰めるより先に、心配の方が出ている声だ。
「だ……大丈夫なの?」
「何が?」
「無理は、してない?」
その問いには、ほんの少しだけ言葉が止まった。
俺が強いかどうかではなく、無理をしているかどうかを聞くのか。
そういう聞かれ方には、まだ慣れない。
「無理は、してるな……でも今は、それを気にしてる場合じゃない」
「……」
「――説明は後だ」
説明をしている場合ではないからこそ、そのような言葉が出ると、三人が黙る。
拒絶しすぎたくはない。
かといって、今ここで全部を明かす気もない。
俺は三人を順に見た。
「今は生き残ることだけ考えてくれ」
「それじゃ納得できねえよ」
理央がすぐ返す。
「今はそれが問題ではないんだ」
「でもお前――」
「理央」
少し強めに呼ぶと、あいつはそこで口を閉じた。
感情が先に立ちかけている。だが、完全に見失うほどではない。
「さっきの力の事については、ちゃんと話す……だが、今は話せる状態じゃない」
理央に対し、俺はそのように答える。
しかし花宮が端末を抱えたまま、じっとこちらを見る。
「それって、あたしたちを信用してないってこと?」
「ああ……していないな」
「即答なんだ」
「嘘をつく意味がないから……それに――」
俺は、自分の心の中に居る”乃亜”を思い出す。
「お前たちがした行動は、”乃亜”を傷つけた……簡単に信用する事が出来ないだけだ」
花宮は一瞬だけ口を引き結んだ。
軽口で流せない程度には刺さったらしい。
透花が小さく目を伏せる。
理央は不満そうに顔をしかめたが、それ以上怒鳴りはしなかった。
だが、三人とも分かったはずだ。
自分たちが、”久城乃亜”にした仕打ち、行動を。
分かっているからこそ、何も言えない。
「……でもさ」
花宮がぽつりと言う。
「信用してないのに助けるんだ」
「……まぁ、見捨てる方が面倒だからな」
「それだけ?」
「今はそれで十分だろ」
そう答えると、花宮は何とも言えない顔をした。
納得はしていない。だが、完全に反発もしていない。
理央が壁に背を預けたまま言う。
「俺は、お前のことまだ全然分かんねえ」
「だろうな」
「でも……少なくとも、今まで思ってたまんまじゃなかった」
透花も小さく頷く。
「うん」
「……前と、違う」
違う、か。
それは正しい。
だって、俺は”久城乃亜”ではないのだから。
だが、その意味をこいつらはまだ知らない。
俺が何か返す前に、胸の奥で冷たいものが走った。
気配――しかも、さっきの二体より濃い。
通路の奥、重く、粘るような魔力がこちらへ近づいてくる。
『――主』
頭の中で、ルクスの声が低く響く。
『来ます』
『数は』
『一つ。ですが、重い』
リゼットも即座に重ねる。
『高密度反応接近。交戦圏到達まで間もなく』
会話を切るしかない。
俺は立ち上がった。
「話は終わりだ」
「え?」
「また来るぞ」
三人の表情が一気に変わる。
理央が反射で身を起こし、花宮は端末を握り直し、透花も震える指で息を整えた。
通路の奥から、ゆっくりと何かが近づいてくる音がした。
重い――しかも、明らかにこちらを探っている足音だった。
俺は暗がりを見据えながら、短く言う。
「――構えろ」