テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「……おい、人虎。貴様のその無駄に長い尻尾が邪魔だ。どかせ」
「無理だよ!っていうか、芥川の外套こそバサバサしすぎなんだよ。さっきから羅生門が僕の顔に刺さってるんだけど!」
二人は今、敵組織の罠によって「絶対に壊れない(らしい)超小型の強化防護シェルター」の中に閉じ込められていた。広さは、畳一畳分もなさそうだ。
「二人ぼっち……。まさか物理的に二人ぼっちにされるなんて……」
「黙れ。感傷に浸るな、反吐が出る。それより人虎、貴様の怪力でこの壁を穿て」
「やってるよ! さっきから何度も殴ってるけど、これ、衝撃を全部吸収するタイプみたいで……。あ、ちょっと、今足踏んだでしょ!」
「……わざとではない。狭すぎるのだ」
芥川が不快そうに顔を背ける。近すぎる。吐息がかかる距離に、お互いの顔がある。 普段は殺し合っている二人だが、ここまで密着すると、殺意よりも先に「気まずさ」が爆発しそうだった。
「……ねえ、芥川」
「なんだ」
「これ、助けが来るまで何時間かかるかな。僕ら、このまま二人ぼっちで一晩過ごすことになったら、流石に話題が尽きるんだけど」
「貴様と話すことなど元より何もない。……が、そうだな。貴様があまりに無能で、ここで餓死されると太宰さんに顔向けできぬ」
芥川は舌打ちをすると、外套の端からひょいと、なぜか「茶漬けの素」の小袋を取り出した。
「なんでそれ持ってるの!?」
「非常食だ」
「お湯も米もないよ! 結局二人ぼっちで、茶漬けの素を眺めながら過ごせってこと!?」
敦の叫びが、狭い空間に虚しく響く。 結局、そのあと数時間、二人は「どっちがスペースを広く取っているか」で子供のような口喧嘩を繰り広げた。
世界に二人きり。 それはロマンチックな孤独などではなく、ただただ暑苦しくて、騒がしくて、最高に居心地の悪い「二人ぼっち」の時間だった。