一方その頃、お岩の様子と言うと
「おう、お岩。其処に置いてある酒、とってくんねぇか。」
「…分かりました。」
今日もまた‘’あの日と同じように‘’、私は伊右衛門様…いえ、この醜く可愛そうで私にとって穢らわしく茶色の芥虫以下な男の言われるがまま、私の中にあるあの時から未だ嘗て薄まらない憎悪の感情を押し殺すようにして行動する。
こうすれば、きっとあの人達が私の事を救済してくれる。そして、この男に何の未練を抱かずに何年もの鬱憤を晴らして清々しい状態で快楽を人生最大の味わえるはず。
「…おう。有難うな。」
「はい。」
今日もまた、お礼を言う際も私のことなど見向きもせず答える。なのに何故、未だ嘗てこの男に気持ちは引かれていくのだろうか。
自分でも嫌になるくらい、私の素直な心臓はまた息を吹き替えしたように鼓動が鳴り止まない。何でよりによってこの男の仕草や瞳、表情を見ただけでさっきまであった憎悪の感情を掻き消すように、私の心が揺らいでしまうんだろう。
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