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第二章 悪霊
触れた妖精にダメージを与える結界が、数百㎡までに拡大できるようになった。
休日にゆらは、電車に二時間乗って着く原子力発電所に向かった。
駅から原子力発電所までの距離も結構遠く、バスに二、三十分程乗る。
(ここからは立ち入り禁止か。)
誰も来なさそうなところでキュアジェネシスに変身し、原子力発電所を囲む巨大な結界を張った。
目的を果たして変身を解除したゆらは、五分も留まらずに来た道を戻る。
(結界を張れるなら、自分に纏うシールドも作れそうだな。単純なバリアよりは、攻撃にも転用できるといいかも。来た攻撃を跳ね返すバリアとか?)
バスに揺られながら、自身に纏う予定のシールドの設計を思案した。
駅に着き、電車を待っている間に身体の360°を囲むシールドを作ってみる。
(強力な攻撃を受ければ簡単に破れそうだ。それなら、跳ね返せるのは遠距離技のみにする代わりにシールドの強度を高くするか。あとは、シールドがあたしに着いてきてくれるかだけど……)
シールドを展開した状態にして電車に乗ると、シールドは置いてけぼりにならなかった。
(帰ったら、シールドにサマエルライフルで射撃して銃弾が跳ね返るか試そう。これの名前は、ミロワールシールドでいいか。それにしても……ここ最近金を使い過ぎた。『真の紳士は、持てる物をすべて失ったとしても感情を表してはならない。お金はまったく紳士の関心の外にあることであり、気にかける価値もない。』って言葉があるけど、それは鬼畜だ……)
翌日
いつも通りの時間に起きて居間に来ると、両親が暗そうに話していた。
「私も、あの人に金を借りてるときがあったわ。」
「ああ、あのおばさん高利貸しで有名だったよね。でも隣の人は良い人だったから残念だ。」
「何の話?」
「おはよう、ゆら。喜多川マンションで殺人事件があったんだ。」
登下校のときに前を通る築年数の古いマンションだ。
「マンションの人が二人亡くなったのよ。最近、失踪事件や変な噂も絶えないし、ゆらも気をつけなさい。」
(妖精が関係している可能性も考えられるな。今日行ってみるか。)
家を出て三分も歩けば、喜多川マンションが見える。
四階建てで色褪せた桃色のマンションは、警察官が忙しなく出入りしている。
(経年劣化が目立ってるな……)
二階は、立ち入り禁止バリケードテープと赤いコーンで入れない状態だ。
「あ、ゆらちゃん。奇遇だね〜。」
ゆらは聞き覚えのある声に振り向くと、藍色の髪をひとつ結びにした黄金色の瞳の少女……大庭歌葉がいた。
歌葉は、小四のときにゆらと仲良くしていた。
しかし、進級して別のクラスになると関わりが少なくなり、二人とも元禄中学校に入ったが全く話していない。
「殺人事件があったと聞いて、少し野次馬しに。」
「私、最初に遭遇したよ。そのときの様子話していいかな?」
「あ、なんかごめん。」
(声色が普通に明るいから、第一発見者というのは嘘かもしれないな。)
「私は一階に住んでいて、二階から悲鳴が聞こえてきてさ〜。私の真上の部屋に、金を色んな人に貸してるおばさんが一人暮らししているんだよね。
そこの扉は鍵かかってなくて勝手に開けたら、おばさんの隣に住んでる男性が仰向きに玄関で倒れてたんだ〜。筒状っぽい何かが刺さった跡みたいなのが、眉間にあったよ。おばさんは廊下で、心臓付近に刃物で刺されたような切り口があったね。」
「筒状っぽい何かが刺さった跡……?」
(刃物を持っているなら、眉間はそれで刺せばいいはずだ。なのに何故別のもので刺したんだ?)
「多分元々おばさん一人を殺すつもりだったのかな〜。でも隣の男性が、おばさんの悲鳴か何かに反応して来たから、予想外に殺したって感じかもね〜。
話聞いてくれてありがと。私はもうすぐ事情聴取がまたあるから、じゃあね。」
ゆらは妖精からの攻撃を防ぐ簡易的なシールドを歌葉に纏わせる。
ゆらが四六時中纏ってるミロワールシールドに比べれば、耐久力がなく妖精が視認できるシールドだ。
喜多川マンションから去ろうとしたとき、微かに足音が聞こえた。
足音がする方向には誰も見えない。
足音の方へついて行こうとするも、音だけだとどこにいるのかが分かりにくくて追えなかった。
事件の情報を得るために、適当な警察官の自宅にゆらはピッキングで不法侵入した。
(警察署に行くのは無理でも、警察官の家には行けるんだな。)
その家に警察官が住んでることは前から知っていて、この時間帯は家に誰もいないはずだ。
警察官のものらしきパソコンのパスワードを解除し、警察内部のサイトにアクセスする。
喜多川マンションに設置された監視カメラの映像があるため見てみると、犯行の前後で被害者の部屋の扉が誰もいないのに開閉されていた。
(扉が開いてから閉まるまでの時間で、歩幅や足の速さと歩き方がわかるな……この場合、透明になった1.7mの成人男性か?)
一人目の被害者が金を貸していた者達の一覧もある。
(数十人にも金貸してたのか。しかも高利で。被害者から金を借りていた人が、高利貸しに恨みを持って殺害って動機がありそうだ。その人達の中では……東洲魅瀧が加害者の可能性が高いかもしれない。)
東洲魅瀧は貞享大学一年生で、事件当時に大学の授業を取っていないことがわかる。
(大学に入学してから、一軒家で一人暮らしを始めたとなると……家賃に困って金を借りたんだろうな。)
ついでに、パソコンのメモ機能で妖精の存在を書こうとしたが、やはり指が動かなくてできなかった。
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