「……またやっちゃった。」
俺が溜息混じりにつぶやいた。
スタジオの出口で傘立てを見た瞬間、自分の折り畳み傘がないことに気づいたのだ。
今朝確かに持ってきたはずなのに──。
「どうかした?阿部ちゃん。」
ちょうど横を通った目黒蓮……めめが声をかける。
「あ……ごめんめめ。傘忘れちゃったみたいで…!」
俺は申し訳なさそうに頭を掻いた。
空は薄暗く、細かい雨が絶え間なく降り続けていた。タクシー乗り場には長蛇の列ができている。
めめは少し考えた後、
「……一緒に入る?」
めめは大きな黒い傘を開き、笑いながら尋ねる。
いつものことだが、こういうときの判断が早い。
「えっ、いいの?でも俺が傘持ってないせいで……」
「全然、大丈夫!むしろ……」
めめは傘を少し傾け、俺を見て微笑んだ。
「こんな日……だからこそ、阿部ちゃんと一緒に相合傘も悪くないかなって──。」
俺は思わず、少し頬が熱くなるのを感じてしまった──。
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面白かったです🖤💚