「寝ちゃったね」
リビングのソファーでニャオハと一緒に眠る雪乃を、2人の兄たちが見守っていた。
「運ぶか?」
「いや、もうちょっと寝顔見てたいな」
「…シスコンが」
秋斗は屈んで、すやすや眠る雪乃の頬を撫でる。
ニャオハと寄り添うように眠る安心し切った寝顔は、愛おしく尊い。
ニャオハもそんな雪乃にくっついて、幸せそうに眠っている。
「可愛いね」
家族の寝顔を見ていると、明日も頑張ろうと思える。
「ねぇ、何で春は反対なの?ニャオハのこと」
秋斗は背後に立っていた春翔に聞く。
「…同じ思いしてほしくないから」
低いトーンで答えた春翔を、秋斗は振り返って見た。
「拾った事を後悔なんかしてないし、日に日に大事になっていく。守らなきゃって責任感も大きくなっていく。…けど、だからこそ、怖いんだ」
春翔は何も知らず眠る雪乃を見つめた。
「…もし雪乃がいなくなったら、もし俺の身に何かあったら…そんなことばっか考える」
春翔はその場に立ち止まったまま、目を伏せる。
「…大事すぎて、怖いんだ」
一度家族を失う経験をしている分、そんな思いが強いのかもしれない。
秋斗は立ち上がり、春翔の頭に手を置いた。
「…それはお互い様なんじゃないかな」
「………」
「雪ちゃんも、きっと同じ気持ちだと思うよ」
「ワフッ」
足元でイワンコがくしゃみをした。
秋斗は笑ってイワンコを抱き上げる。
「さ、もう寝よう。2人を運んでくれる?」
そう言われ、春翔は雪乃に近寄る。
寝息を立てる妹と、妹の腕の中で眠るニャオハを、ゆっくりと抱え上げ部屋へと運ぶ。
ベッドに優しく下ろし、布団を掛ける。
「…はると」
名前を呼ばれ驚くが、寝言だと気付く。
しかし次の瞬間、雪乃は涙を流していた。
「…どんな夢見てんだよ」
頼むから、寝てる時くらい幸せな夢を見てくれ。
雪乃の涙を拭いながら、春翔は祈る。
「俺はここにいるから、泣かないでくれ。
どこにも行かないから。
だから、どこにも行かないでくれ」
雪乃の赤い髪を撫でた後、春翔は立ち上がりドアへと向かう。
「おやすみ」と小さく呟いた後、パチっと部屋の電気を消した。
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