テラーノベル
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『うわっ、罠に引っかかったのお前、痛いよな』
『待って待って待って暴れないで今助けてやるから…痛っってえ!』
『アケビとグミの実、分かるー?腹減ってるでしょ』
『アルビノでオッドアイの美人さんだなぁ…もうこんな山の下まで降りてくるなよ、それ食ったら早く帰りな』
(あの人の顔を、声を、優しさを今でもずっと覚えている)
「dnあなたまた降りようとしてるの?人間に変化できるようになったからって無茶しちゃ駄目よ」
「ごめん母さん、でも俺あの人にまた会いたい…」
母さんは俺を心配そうに見つめたあと、ため息をついて日が暮れないうちに帰ってらっしゃいと送り出してくれた。それを合図に俺は山を転がるように駆け降りる。子供のころ人間の仕掛けた罠に引っかかって怖い思いをしたけど、あの時俺を助けてくれた人や、山の麓に住んでていつも俺に果物をくれるおじいちゃんみたいに優しい人間もいるんだってことを知った。
あの日の恩人に会いたくて何度も山を下りて探しているけど一度も会えたことはない。
『会いたいなぁ、会ってあの時はありがとうございましたってちゃんと言いたい』
見上げた空は雲一つ無くて、今日も暑くなりそうだった。
コメント
2件
新連載だー、ファンタジー系でしょうかー!! あの日の恩人さんに無事に会えるといいなぁー、楽しみにしてます!!