テラーノベル
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涼ちゃんとのあの日の口論は、
思い出すたび胸の奥がずきずきと痛んだ。
“若井は俺のものだ”
“絶対に譲れない”
正直な気持ちをぶつけあったはずなのに、
どこか“大切な何か”を失う予感だけが
胸を占めていた。
あの日から、僕はずっと眠りが浅く、
うとうとしても、
夢にまで涼ちゃんや若井が現れて、
胸が締め付けられる。
学校に来ても、教室の空気が重苦しく感じる。
視線も、噂も、若井と涼ちゃんとの関係も――
全部が僕を追い詰めているような、
気がしてならない。
滉斗『元貴、顔色悪いけど大丈夫、?』
涼ちゃんが前みたいに、
話しかけてくれることも、最近少なくなった。
若井は時々、
心配そうに僕を見つめているけど、
その眼差しすらも自分には重たかった。
僕が全部、壊したのかもしれない…
好きになれたのに、
どうして素直に幸せになれないんだろう、
そんなある日。
午前中の数学の授業。
チョークの音がカツカツと響くなか、
教科書の行間が滲んで、
まともに文字が読めない。
急に、頭の奥がぎりぎりと痛み出した。
まずい…何これ、苦しい…
胸の奥が圧迫されるみたいに苦しくて、
呼吸も上手くできない。
手がじっとり汗ばむ。
手をおでこに当てても、
熱で火照っているようだ。
先生の説明は遠くなり、
みんなのノートをめくる音すら、
うるさいほど響く。
そして、痛みがどんどん強くなり、文字が歪む。
滉斗『元貴、どうした、?』
隣の若井の声が耳元ではっきり聞こえる。
そっと袖を引かれて、
僕はぐっと歯を食いしばる。
元貴『……何でもない、大丈夫、だから…』
絞り出した声は震えていて、
自分で誤魔化せないぐらい弱々しかった。
でもそのやり取りを聞いたのか、
前の席の子がふと僕を振り返る。
『え、元貴くん顔真っ青だよ…!』
『保健室行った方がよくない?』
ザワザワとクラスメイトたちの声、
思いの外、たくさんの視線が僕に集まってきて、
心臓が早鐘みたいに跳ね上がる。
そんなに、
周りに心配かけたくなかったのに……
滉斗『先生、元貴が――』
若井が立ち上がって先生に声をかけ、
先生もすぐに僕の方に駆け寄る。
先生『大丈夫か?無理するなよ』
その一瞬、周りのみんなのざわめき、
若井の必死な声、
“迷惑かけてる”という申し訳なさ、
全部がぐちゃぐちゃに胸にのしかかった瞬間―
ぷつんと心の糸が切れたみたいに、
目の前がぼやけて、
ほっぺたを温かいものが伝う。
元貴『へ…や、だ…ごめん……っ』
涙が、次から次へこぼれて止まらなかった。
顔も上げられなくて、
ただ俯いたまま声を震わせていた。
滉斗『元貴……』
若井がそっと僕の背中に手を添えてくれる。
滉斗『大丈夫、大丈夫だからね、
泣いていいよ、俺がそばにいるから、』
その言葉に、また涙があふれる。
元貴『ごめ、なさ…
ほんとに……ごめん……っ』
まわりのみんなも心配そうに僕を見つめていて、
『無理しないで』
『保健室行こう』
『大丈夫だよ』
と優しい言葉がぽつぽつ降ってくる。
先生が優しく僕の肩を支えて、
『しばらく休もう、若井、
ついて行ってやってくれ』と言ってくれた。
若井が静かに肩を貸してくれる。
廊下を歩き出すと、
さっきまでのざわめきが遠ざかっていく。
滉斗『俺がついてる、…無理して我慢すんな、』
小さくささやいてくれる声に、ほっとして、
今度は泣き笑いみたいに込み上げてくる。
ああ、自分は本当に弱くて、
大切な人たちに支えられてばかりだ、
保健室に向かう途中、
何度も涙を拭いながら、
それでも肩は少しずつ軽くなっていく気がした。
だけど――
本当に大切なものを守るために、
これからどうしたらいいんだろう。
優しさと、痛みと、涙の味が、
静かな廊下に残っていた。
コメント
6件
はぁぁぁ…相当思い詰めてたんですね😭 幸せの裏では誰かが必ず傷ついてるって言いますが、それが仲の良い友達っていうのがまた切なすぎる…😭なんなら現状誰も幸せを掴めてない気もします…😢どうか皆んなに幸せになって頂きたい…続き楽しみにしてます👍🏻✨
うん、もう分かってた、最高過ぎるってことを!!!!
はあああ!切ない…😢💓でも見てしまう!!毎日ありがとうございます…😭😭😭😭😭